日欧EPAが「大枠合意」 激化する関税・貿易戦争

週刊『三里塚』02頁(0972号02面04)(2017/07/24)


日欧EPAが「大枠合意」
 激化する関税・貿易戦争


 7月6日、日本と欧州連合(EU)は日欧経済連携協定(EPA)を大枠合意した。日本農産物では82%程度にあたる関税を撤廃する。これは、環太平洋連携協定(TPP)を超える水準の市場開放であり日本農家には大きな打撃だ。ソフト系チーズはTPPでは関税を維持したが、EPAでは最大3・1万㌦の輸入枠を設定、しかも枠内の税率は段階的に下げて、16年目には撤廃する。このチーズの輸入枠自体が、現在の生産量を超える。農家戸数の減少が止まらない国内酪農を直撃する規模だ。
 豚肉は、差額関税制度を残すものの、TPPと同水準にした。低価格帯の肉にかける現行1㌔当たり482円の従量税を、10年で50円まで下げる。高価格帯にかけている従価税4・3%は撤廃する。この点について鈴木宣弘東大教授は、「TPP以上に影響は深刻」と指摘する。つまり、従量税が50円まで下がった場合、安い部位を単品で輸入する業者が出てきて、それに引っ張られて価格全体が下がる。今後、米国との交渉にも同じ関税削減を適用せざるを得なくなり、国内の豚肉生産は困難になる。
 この度の日欧EPAでなぜ「大枠合意」と言うのかといえば、全分野で合意した場合の「大筋合意」とは程遠いものだからだ。交渉は企業と進出先の国との紛争手続き(ISDS)で対立し、解決の目途は立っていない。にもかかわらず、双方妥協を演出したのは、帝国主義間の争闘戦の激しさである。TPPを撤回したトランプは、日米首脳会談で日米貿易赤字の拡大を指摘。安倍は、「秋の日米経済対話で協議」などと答え、トランプの怒りを買った。トランプが進めている通商拡大法の適用による鉄鋼製品輸入割り当ての輸入制限と関税引き上げ政策の直接の対象は中国と言われるが、アメリカの通商要求に対する日欧の屈服をも狙ったものだ。関税・貿易戦争の全面的な開始であり、世界経済の分裂・縮小を本格化させ、世界戦争に行き着く。労働者農民の国際的団結で帝国主義を打倒しよう。
(大戸剛)
このエントリーをはてなブックマークに追加