「見直し案」を斬る 空港機能強化を許さない スライド式で1日20時間騒音 第3滑走路で600戸強制移転

週刊『三里塚』02頁(0971号02面01)(2017/07/10)


「見直し案」を斬る
 空港機能強化を許さない
 スライド式で1日20時間騒音
 第3滑走路で600戸強制移転


 第3滑走路建設や深夜早朝便の3時間延長を含む「成田空港機能強化案」をめぐる攻防が白熱化している。
 昨年発表されたこの案に、住民説明会の場すべてで激しい反発と反対の声が上がった。2010年から計3回の飛行制限緩和を押しつけられてきた騒音下住民の〝堪忍袋の緒が切れた〟。
 そこで出してきたのが「見直し案」だった。周辺首長たちは「すばらしい案だ」と称賛するが、見えすいた「出来レース」に住民の怒りは逆に高まっている。

50万回変更なし

 何よりも、NAAの発想の大前提が住民の命や生活よりも空港となっている。萩原富夫さんが鋭く指摘する。「見直し案は、航空便の運航の都合に合わせて住民は眠れ、というもので問題にもならない。住民の生活を優先しろ」と。
 さらに600戸を強制移転させる「第3滑走路建設計画」、騒音地獄拡大の「50万回」飛行には何の変更もない。芝山町、多古町、横芝光町民にとっては「深夜早朝便の延長」以上に第3滑走路建設への怒りが充満している。現在のB滑走路より4㌔も南に下がった所へ3500㍍もの巨大滑走路を造り、そこで大型機を17万回も飛ばそうというのだ。「頭の上300㍍の飛行」への怒りに対しては完全無視だ。

騒音地獄は拡大

 その上で、NAAが住民への慰撫策として宣伝している3点について具体的に批判する。
 ①「延長案を3時間から2時間縮めて1時間にする」という提案は、これ以上1分たりとも耐えられないと訴える住民と相容れるものではない。しかも、「C=第3滑走路ができるまで」の期間だけなのだ。
 ②「スライド方式」なるものはA、B、Cの三つの滑走路をAランとBラン、AランとCランの二つのグループに分ける。それぞれを早番=朝5時から夜の11時までの飛行時と遅番=朝6時半から夜中の0時半までの飛行に振り分ける。この早番と遅番を定期的に輪番(スライド)にする。そうすれば「従来案では4時間だった睡眠を6時間に延長できる」と触れ回るものだ。
 しかし、AランとB・Cランに挟まれながら、防音対策が施されず、両方からの騒音に悩まされる「谷間地域(芝山南部が中心)」にはまったく関係ない。東と西から20時間騒音が押し寄せる。 さらにAランやB、Cランの飛行直下地域では一見「6時間睡眠が確保される」かに見える。しかし住んでみればわかるが、B、Cランの騒音が実際にはAラン地域にも襲いかかり、Aランの騒音がB、Cランの騒音地域にも襲いかかる。
 ③従来「寝室だけ」としていた二重サッシの防音対策を家族数に対応して若干増やすというが、「騒音は遮断されない」というのが住民の圧倒的な意見だ。「屋根からも床からも騒音は入ってくる」と。
 また、落下物対策も行うとしているが、「約束違反の常習犯」であるNAAの言うことは住民に信用されていない。
 さらに「見直し案」には次のような無視できない問題がある。「50万回化」という空港の都合はまったく変えていない。にもかかわらず形式的には「18時間飛行にする」。ここから起きる別の問題は、時間当たりの飛行密度が激増するということだ。さらに、現在、夜10時台の飛行は1滑走路あたり「10便」と制限されているが、この制限を外すというのだ。さらに11時台も現在は「やむを得ない場合にだけペナルティを支払って飛べる」(「カーフュー」と呼ぶ)制度となっているのも解除となり、事実上飛ばし放題となる。

白紙撤回の声を

 すでに各市区騒音対策協議会対象の説明会が始まっている。早晩、一般住民対象の説明会も開かれる。この説明会に大挙参加し、「空港機能強化案全面撤回」を求めて声を上げよう。5月27日に芝山で結成された「空港機能強化案から生活を守る会」は6月28日、千葉県庁を訪れ「白紙撤回」の要望書を手渡した。住民の決起は始まっている。さらに住民の声を拡大し成田空港を廃港に追い込もう。
(斉田猛)
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