判決の執行阻止は可能 「請求異議訴訟」の焦点 ----葉山岳夫弁護士に聞く

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週刊『三里塚』02頁(0962号01面03)(2017/02/27)


判決の執行阻止は可能
 「請求異議訴訟」の焦点
 ----葉山岳夫弁護士に聞く


 2・14審尋で、「請求異議訴訟での一審判決までの執行停止」決定をかちとった。3・2弁論がますます重大な闘いになってきた。反対同盟顧問弁護団の葉山岳夫事務局長に伺った。
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 ----請求異議訴訟について教えてください。
 同訴訟は、東京高裁の口頭弁論終了後に発生した事由に基づいて、最高裁で確定した判決の執行の「不許(許可しないこと)」を求める訴訟です。民事執行法35条の規定によるものです。
 ----最高裁判決との関係は。
 訴えが提起できる「異議の事由」は、口頭弁論終結(2015年3月4日)以後に生じたものに限られる。注意したいのは、この訴訟は、確定した最高裁判決の取り消しを求めるものではないということです。
 強制執行を行うのは千葉地方裁判所だが同裁判所に対して「強制執行を許可するな」と求める。裁判だから傍聴もあり、控訴審、上告審もある。
 ----弁護団は3点にわたって請求異議の理由を述べていますね。
 第一点目は、空港会社は強制執行を請求する権利を放棄していることです。1993年6月16日、空港公団(現NAA)は、2期工事区域に関する収用裁決申請と明け渡し裁決申し立てを取り下げた。さらに、1994年10月11日の成田空港問題円卓会議で隅谷調査団は「平行滑走路のための用地の取得のために、あらゆる意味で強制的手段が用いられてはならない」と述べ、当時の空港公団総裁が同意した。強制執行はやらないという意思を社会的・公的に明らかにしてきたにもかかわらず、強制執行の請求を行うのは違法であり、なおかつ強制執行は口頭弁論終結後に行う行為なので請求異議の事由に該当する。
 第二点目は、忌避申し立てがなされている裁判官による判決は無効だということです。東京高裁・小林昭彦裁判長に対しては裁判官忌避を申し立てていた。民事訴訟法には「忌避の申し立てがあったときには、その申し立ての決定が確定するまで訴訟手続きを停止しなければならない」とされている。判決は、忌避申し立ての判断が確定していないにもかかわらず言い渡されている。したがって、控訴審判決は無効であり、強制執行はできない。これに関しては口頭弁論終結後に生じた事由ではないが、いつの時点でも主張できるという観点から異議訴訟の理由にしている。
 第三点目は、市東さんへの離作補償料が不払いであり、農地賃貸借解約申し入れ許可処分は、失効しているということです。農地法20条による農地の賃貸借解約の申し入れ許可の条件として千葉県は「離作補償料の給付」と明記している。
 しかし、空港会社は、今に至るまで支払いも供託もしていない。明け渡しの強制執行をした後に支払うと言っています。賃貸借解約申し入れの際に支払うべきものを支払わないまま、強制執行することは許されません(口頭弁論終結後に生じた事由)。千葉県知事の許可は効力を失っている。強制執行はまさに「やらずぼったくり」行為なのです。
 ----3・2第1回弁論、デモが重要だということですね。
 その通りです。「最高裁判決は確定したが、その執行はできない」というかつてない勝利をかちとることは可能だということ。ここに三里塚50年の底力が示されている。このことに確信をもって請求異議訴訟に勝利しよう。その第1歩が3・2闘争です。
 ----ありがとうございました。

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