団結街道

　反対同盟が出演も含め全面協力した、田中正造の生涯を描いた映画「襤褸（らんる）の旗」の上映会が芝山町で開かれる。三國連太郎が田中を熱演。足尾銅山鉱毒事件と闘った田中は、天皇に対する直訴が有名だが、彼の偉大さはそんなところにはもちろんない▼田中は15歳頃に名主となって以来、二度の逮捕以外は県議会議員、県議会議長、国会議員と基本的にエリートコースをたどってきた▼鉱毒被害民の東京への「押し出し」の際には一度ならず２度３度途中で止めようと説得にあたる。極悪の圧制政治を強いた三島通庸という県令を追い出すために集めた秘密書類を持って敵であるはずの井上馨邸や警視庁にのこのこ出かけて行き逮捕。文書も破棄される。天皇への直訴と議員辞職▼議員時代の田中は、不正義と徹底的に闘ったが、合法主義者であり代理闘争・義民型の救済思想を脱皮し得なかった▼渡良瀬の闘いを通して国家・天皇に対する幻想・古い価値観を払拭し、人民が変革の主体であると確信するに至り50歳を超えてなお自己を変革してきた生き様にこそ彼の偉大さはある▼すべてを投げうち亡くなったときには信玄袋ひとつ。彼が命をささげた闘いの炎は陸続と革命家を生みだしながら現在も燃え続け、新たな現闘、若き行動隊へと受け継がれている。世を厭（いと）い謗（そし）りを忌（い）みて何かせん、身を捨ててこそ楽しかりけれ。