NAA報告 「需要50万回」はデマ 狙いは成田の軍事転用

週刊『三里塚』02頁(0942号02面03)(2016/04/25)


NAA報告
 「需要50万回」はデマ
 狙いは成田の軍事転用

(図 国交省、NAAによるご都合主義丸出し、右肩上がりの「首都圏の航空需要予測」)


 3月29日に開かれた「成田空港に関する4者協議会」に対して、NAAが「成田空港の更なる機能強化についての調査報告(その2)」なるものを出した。その目的はデタラメな「航空需要予測」なるものを前提に、「成田の需要が50万回に達する」。だから「第3滑走路など空港機能の強化が必要だ」と強弁するための数字の操作である。
 同報告は冒頭で次のように書く。「2030年代初頭から2040年代後半には年間50万回に達する」とし、その根拠として、2014年6月に出された「首都圏空港機能強化について」(国交省小委員会)なる報告書の「試算」と同じものを示す。そこではGDP成長率を「上位ケース」「中位ケース」「下位ケース」に分け、それぞれの「航空需要」を示している。
 「上位」はGDP成長率が2・2〜3㌫、「中位」は同1・7〜2・0㌫、「下位」は同0・7㌫〜1・0㌫の場合だ。その結果、「上位」の場合には2032年に50万回に達するとし、「下位」の場合には2048年に50万回になるとする。
 ここにはいくつものウソがある。まず何よりも「右肩上がりのGDP増加予測」である。日本経済研究センターによる今年のGDP予測は現在段階で、0・8㌫だ。さらに、4月12日にIMFが発表した2017年の日本のGDP予想はマイナス0・1㌫だ。上記予想の前提である最悪の場合=「下位ケース」の想定すらはるかに下回る「想定外」の事態に陥るのだ。「50万回予想」の前提がいかに「希望的数値」「勝手に作られた数字のウソ」であるかが、事実によって示されている。
 第二のウソは、首都圏での航空需要の「増加」を羽田はまったく増やさず、成田だけでまかなう、としているごまかしだ。NAA報告は最初から「成田=50万回」だけを強調しているが、国交省が「需要増加」の対象は首都圏全体、つまり成田、羽田あわせてということだ。そして同予測では94万回化まで増えるとしている。
 両者合わせた現在の発着枠は75万回。だから19万回増やさなければならないという計算だが、現在44万回である羽田はまったく増やさず、成田だけでこの19万回を増やそうというのが「50万回化の根拠」だ。ここでもご都合主義満開の試算を示している。
 そもそも前記の国交省報告「首都圏空港機能の強化について」は成田と羽田の両者で空港機能を拡大するという内容だ。羽田については都心上空の飛行ルート導入、「5本目の滑走路」の検討が行われ、関係住民の反対運動が広がっている。
 NAA報告が一方で悲鳴のように強調しているのは、「このままでは成田は衰退する」という現実だ。正直に次のように記載する。「アジアの主要空港では、アジア市場の獲得にいち早く取り込んでおり、成田空港は熾烈な競争に既に巻き込まれている」「また、国内においても、空港間競争が激化している」と。
 つまり、「50万回化」とは、増大する需要に対応するという意味ではなく、「50万回化」を可能する施設を先に作り、空港間競争に割って入り、むりやり需要を作って、空港利権と一体の成田の延命を図ろうという私利私欲のあらわれだ。

朝鮮情勢が緊迫

 このような数字合わせの需要予測を打ち出してまでも造ろうとしている第3滑走路建設計画のもう一つ狙いは何か。
 朝鮮有事にむけた成田の軍事空港化だ。朝鮮侵略戦争は超切迫情勢だ。米韓軍は、作戦計画「5015」に基づくこれまでで最大規模の軍事演習を強行している。
 かつての1993年5月の北朝鮮NPT脱退での朝鮮戦争危機は、米帝クリントンによる開戦決断の寸前まで行った。それを強行できなかった大きな理由は、日本の安保体制の脆弱性、すなわち米本土から飛来する50万規模の兵員を成田空港を中心に受け入れる空輸体制の不備であった。
 安倍の戦争法は、これを「解消」しようとするものだ。戦争のための第3滑走路策動阻止へ。

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