危機を深めるTPP 次々暴かれる政権のウソ 7年後に関税全廃 数字操作で人民あざむく

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週刊『三里塚』02頁(0937号02面02)(2016/02/08)


危機を深めるTPP
 次々暴かれる政権のウソ
 7年後に関税全廃
 数字操作で人民あざむく

(写真 安倍政権によるデマ宣伝を暴露する報道【2月2日付東京新聞】)


 昨年10月に最終合意が発表されたTPP交渉が破綻の危機に立っている。2008年リーマンショック以来の世界恐慌がいっそう悪化する中で、帝国主義間・大国間の争闘戦としての本質を持つTPPは、土台から揺らぎ始めているのだ。
 日本でも、安倍政権によるデマ宣伝を暴く闘いが粘り強く展開され前進している。その一つが、弁護士・市民グループによる政府のTPP宣伝を打ち砕く闘いだ。
 2月2日付東京新聞の報道によれば、「TPP交渉差し止め、違憲訴訟の会」のスタッフらが、5500㌻にものぼるTPP協定案、付属文書を解読した。その結果、安倍政権による「農産物5品目(いわゆる聖域)は関税撤廃の例外を確保した」との宣伝が根拠のないことが分かった。
 重要品目で「関税撤廃」を逃れたのは、日米の2国間だけで結んだ交換公文に盛り込まれたため。ところが、協定本文にも付属文書にも関税撤廃の除外規定を認める文言は一切存在しないという。これは外務省も認めた。
 協定文ではTPP参加5カ国が要求すれば「7年後の再協議」が義務付けられている。結局安倍政権の宣伝は、「全農産品の関税撤廃まで、7年間の猶予を得ただけ」「7年後にはすべて関税ゼロにされる規定」というのが実態だ。
 一方、東京大学の鈴木宣弘教授は、TPPによって農林水産業が受ける打撃について、「数字のごまかしでウソを言っている」と安倍政権を弾劾する。
 内閣府は昨年12月15日、TPPの影響試算を発表した。それによるとGDPは13・6兆円増加し、農林水産業の損失は1300億円から2100億円程度に留まるとしている。
 ところが2013年11月25日に発表された政府統一試算ではどうなっていたか。GDPの増加は3・2兆円、農林水産業の損失は3兆円と計算されていた。何たるインチキ。GDPの増加は4倍に増え、農林水産業の損失は何と20分の1に意図的に縮小された。
 13年試算に比べ、関税撤廃の程度は若干後退したのだから、GDPの伸びは縮小するはずだ。農林水産品についても、前回試算の前提は「5品目の関税は維持」だったのに対して、TPP交渉の結果は重要5品目の細目586品目のうち、174品目=30%で関税が撤廃され、残りの70%でも関税が削減された。
 農林水産品にとって圧倒的に不利な交渉結果に終わったにもかかわらず、損失が20分の1に縮小するとは、どういう数字のカラクリか。要するに得手勝手な事後的「体質強化策」を取ったことの効果を前提に、上述の数字をねつ造したということだ。鈴木教授の試算ではGDPの増加は0・5兆円、農林水産品の損失は1兆円だ。
 こうした暴露の闘いを先頭に、TPP合意を弾劾する様々な闘い、批判が再び開始されつつある。1月30日には「TPPに反対する人々の運動」がアジア4カ国による国際シンポジウムを開いた。「STOP TPP官邸前アクション」も粘り強く続けられている。
 TPPは、新自由主義攻撃の極致であり、社会全体を、いっそう弱肉強食世界へとたたき込む。巨大グローバル資本によるやりたい放題の搾取・収奪を可能にする。その最大の被害者が労働者・農民だ。
 労働者への全面外注化・非正規職化攻撃が今以上に加速化する。家族農業を破壊し、巨大企業農業に転換し、食糧確保、食の安全を崩壊させる。一致団結して粉砕の闘いに立ち上がらなければならない。
 さらにTPPは、アメリカ帝国主義による対中ブロック化の争闘戦である。中国が主導するAIIB(アジアインフラ投資銀行)への対抗策だ。経済のみならず軍事戦略と一体であり、〝世界戦争の危機〟を引き寄せるものだ。TPP批准は阻止できる。全国農民会議を先頭にTPP反対の闘いを強めよう。

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