農地を守る会・江戸川結成集会 小川浩さんの講演 農民として三里塚闘おう

週刊『三里塚』02頁(0936号02面03)(2016/01/25)


農地を守る会・江戸川結成集会
 小川浩さんの講演
 農民として三里塚闘おう


 昨年12月6日に開かれた「市東さんの農地を守る会・江戸川」結成集会で、全国農民会議共同代表の小川浩さんが講演を行いました(写真)。要旨を掲載します。
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 本日は、市東さんと同じ農民としてやってきました。市東さんは、「農地は農民の命」と言っています。50種類の野菜を作り、本当の有機農業をしています。私の近くにも有機無農薬で農業やっている人がいますが、有機無農薬は大変な努力が必要なんです。除草剤を使わず、草取りでも大変です。われわれ農民にしても頭が下がります。15年農業センサスによると、農家はこの5年で2割、50万人ぐらい減りました。農家やっても食べていけない中で、農地が道路にかかってお金になれば売っちゃうのが多いのです。市東さんはその対極にあって、むしろ国家権力・安倍政治を許さずに「ここで農業がんばる」との決意は、本当に見習うべきだと感じています。
 TPPの問題に入ります。安倍農政は、新自由主義的な政策を行ってきました。90年代に食管法をなくし、新しい農業基本法を作りました。14年は史上最低のコメ価格でした。再生産できないような値段です。農家は本当にやっていけるのか、こういう中でTPPの大筋合意があったのです。今回のTPPの本質は、特許の保護期間にあらわれています。C型肝炎薬が一錠2万円に高騰し、治すまで500万円かかるそうです。それは、TPPで特許が切れる前に値段を上げてもうけちゃおうとして、製薬会社が薬の値段をべらぼうに高くしたのが理由です。「命より金」と言うわけです。

TPP阻止を

 肝心の農業はどうなるのか。大筋合意だけなのですが、日本の安倍政権はすでに全部決まったかのように、そして農業への影響はたいしたことはないと言っています。他方、それと裏腹にTPP対策は、一気に急いでやっています。参議院選挙をにらんで安倍は農家の票が逃げないようにTPP対策をやっています。その狙いは、参院選に勝って、改憲です。今の農業対策、それ自体も「農業を守る」ことではないのです。農民が農業で食っていける対策なのかというとそうじゃないということです。
 今、安倍農政は「攻めの農業」とか言っています。「農業を成長産業にする」「産業として成り立たせる」ということなのですが、結局、家族農業を一掃することです。私は田んぼをやっているのですが、政府の農業政策はデタラメです。政府は農家に規模拡大を指導していますが、どのくらいにすればやれるのか、一言も言っていないのです。わたしの30町歩クラスの稲作経営での生産費(60㌔あたり)は、農水省の計算では1万5千円なのですが、コメの値段はそれを割っているのです。そして、18年には減反政策を止めます。
 アメリカでも1992年クリントンの時に、減反政策を転換しました。近代アメリカ農業は生産の規模拡大・技術の発展で生産力を上げましたが、生産過剰となり価格は下がり、小さな農家は行き詰まりました。また土壌流出などが進み、社会問題となりました。その結果、日本と同じようにアメリカも減反政策を行いました。しかし新自由主義は、その農業政策をやめ、新農業法を制定し、好きなだけ農家に生産させることにしたのです。そうなると価格は暴落し、競争力のない農家は淘汰される訳です。そういう中で、大きい農家だけが残る状況です。安倍はそれを狙っています。今アメリカは、数十年の間にかなり変わってしまいました。輸出補助金等で、コスト割れで赤字を出しても補助金で十分やっていけるイメージであったのが、アグリビジネスや農産業複合体、巨大種肥会社・農薬会社が力を持ち、それに支配された請負農家となっています。そういうふうに変わってきました。
 日本でも農家が多少の補助金もらってやっていくあり方は、TPPが完全実施されればできなくなってくるでしょう。これまで200万農家は、市東さんのように有機農業をやったり、規模を増やしたり、いろいろなやり方でやってきました。けれど、それを一掃するのが、今回のTPPの問題です。

安倍農政と対決

 今の農業問題にしても、安倍政権と対決して、安倍政権打倒の運動を何としても作っていかなければなりません。今の農民が置かれた状況は、大変です。闘いをやる余裕もなくなっているというのが実際の所です。しかし、それを言っても始まりません。
 動労千葉と反対同盟との労農連帯と同じように、まずは農民として市東さんの闘いに立ち上がり、三里塚闘争を闘い、今の安倍の戦争政治と闘う、そういう農民としてわれわれ自身が立ち上がっていかなればならないと思います。
(文責 編集部)

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