新自由主義攻撃を推進するTPPを粉砕しよう(下) 産業全分野で規制撤廃 協定案公表で正体露呈

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週刊『三里塚』02頁(0931号02面04)(2015/11/09)


新自由主義攻撃を推進するTPPを粉砕しよう(下)
 産業全分野で規制撤廃
 協定案公表で正体露呈

(写真 熊本市で開かれた農民向けのTPPの大筋合意説明会では批判が噴出した【10月15日】)


 TPP(環太平洋連携協定)参加12カ国は、11月5日に協定案を発表、また安倍政権は公表可能な二カ国間の交換文書を発表した。この協定案と交換文書を見ても、TPPの反動性は明白だ。
 前号において農産品の関税撤廃を批判したが、TPPは投資・サービス・知的財産権・政府調達・保護政策など産業全分野において規制を限りなく撤廃するものだ。この点を暴露・弾劾する。
 第一に、一握りの巨大独占資本の利益のために、各国(新興国)がとってきたさまざまな諸制度―保護政策を破壊し、新植民地主義的な収奪と支配を露骨に推進するものだ。新たな貿易・投資のルールという経済的関係を水路に、新自由主義的な新興諸国の従属が強化されるのである。外資出資規制の撤廃・緩和、政府調達の開放、内国民待遇、そのための制度改革と法整備、これらに反したときの制裁としての意味を持つISDS条項(注1)が規定された。他方で、知的財産権の保護の強化、医薬品の特許期間の延長などが定められたように、最先端産業を独占したい帝国主義国にとっては権益を守るものだ。
 これを示す端的な例は、ベトナム・マレーシアなどだ。国営企業が多く、国内政策を優先するアセアン諸国に対して、すべてのサービス、流通業・電気事業・製造業などの外資出資を原則自由化させた。とくに金融の外資出資の制限緩和にラチェット条項(注2)が適用されることは決定的だ。ISDS条項は、乱訴防止の規定が盛り込まれたというが、極めて限定的だ。ISDSを使ったグローバル大資本と帝国主義の支配は貫かれることになる。
 第二に、食の安全や医療・保険、労働・環境など労働者の生活を新自由主義によって破壊するものだ。食品の安全基準は、「衛生植物検疫処置」がWTO基準と規定されたから、政府は「日本はすでにその基準。さらに緩和を求められることはない」ので、「食の安全は心配ない」と説明する。しかし公開された日米間の交換文書では、日本が食品添加物の認可点数を増やすことを約束している。また現在、手続き中の認可されていない着色料の添加物もTPPをテコに認可されることになる。医療・保険その他は、今後の日米交渉に持ち越されているに過ぎない。
 第三に、日米争闘戦の新たな段階への突入である。TPPをめぐり共産党スターリニストを先頭に国益論が吹き荒れている。戦争法の成立とともにTPPは日帝の侵略戦争策動を激化させるが、日米争闘戦の激化も不可避だ。TPP協定発効から7年後以降の再協議では、日本は農産物で米国に譲歩を迫られた場合、米国に対して日本車への関税撤廃を求めるというようになる。今後アメリカは、農産物の関税撤廃をもって日本に揺さぶりをかけ、「貿易障壁」の撤去とアメリカ巨大資本への市場開放を要求することになる。

強まる争闘戦

 今回発表した非関税措置9分野をめぐる日米協議文書の内容は、激しい対日要求である。投資分野では、外国人投資家から意見・提言を求め、規制改革会議に諮り措置をとることを明記。保険・急送便は、郵政の民営化の徹底、「かんぽ」へ有利となる競争条件の廃棄を求めた。衛生・植物検疫では、先に述べた規制緩和が文書で定められた。しかしこれらは米帝の要求の一部にすぎない。アメリカ通商代表部(USTR)が外国貿易障壁報告書で要求しているものは、政府調達と公共事業への外国資本への開放、有機農産物や食料添加物の表示緩和、混合医療・外国資本の病院参入など山積みされている。これらがTPPをテコに労働者に襲いかかってくるのである。
 TPPは民営化と非正規職化を世界の労働者人民に強制し、新自由主義による搾取と収奪を極限的に強化する。さらにTPPは、新自由主義が破綻しながら世界経済のブロック化―世界戦争情勢を深化させる。とりわけ日米争闘戦の激化は、朝鮮侵略戦争を急速に引き寄せる。階級的労働運動と国際連帯・労農連帯で、TPP攻撃を粉砕しよう。

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注1)ISDS条項=「国家と投資家の間の紛争解決条項」。条約国が「自国の利益のために制定した」政策によって、海外の投資家が不利益を被った場合には、世界銀行傘下の「国際投資紛争解決センター」という第三者機関に訴えることができる制度。
注2)ラチェット条項=一度自由化・規制緩和された条件は当該国の事情では取り消すことができないという制度。

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