3・4控訴審闘争のために (上) 葉山岳夫弁護団事務局長に聞く 同意なき買収・解約は言語道断
3・4控訴審闘争のために (上)
葉山岳夫弁護団事務局長に聞く
同意なき買収・解約は言語道断
3・4控訴審闘争にむけ、あらためて顧問弁護団に農地裁判の論点を伺いました。今回は葉山岳夫事務局長です。
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――まず、市東さん農地裁判の現況を包括的に述べて下さい。
葉山 市東さん裁判の基本は、「耕す農民に権利あり」、そこが根本をなしています。小作権者としての市東さんの権利は、絶対に守らなければなりません。
NAAの農地収奪は徹頭徹尾、農地法、憲法に違反しています。これは、88年、当時の市東東市さんの農地の小作権の底地を地主から買収し、土地収用法で小作権を収用し収奪しようとする方策が挫折したことから来ています。農地法の悪用とは、同法20条1項2号「転用を相当とする場合」にあたるとして、知事の解約許可をもって収奪しようとする企てです。本来は公用収用でなされなければならないはずなのに、収用委員会が崩壊した中で裁判所を代替機関として農地を収奪する、その虚構性・欺まん性がこの間の闘いによって暴露されています。
――控訴審では、一審判決をどのように批判してきていますか。
葉山 第一点は、この裁判の本質は違憲、違法な公用収用である、この点を追及しました。
第二点は、公団の底地買収、その取得した方法そのものが農地法の趣旨に完全に違反することを明らかにしました。つまり、農地を転用すれば、農地が農地でなくなるわけですが、そうしたことを空港公団が農民の「同意なし」に、「完全な補償なし」に行ったことの違法です。
――第二の点について、説明してください。
葉山 底地と小作権とは、表裏一体です。一方のみを買収し、一方を収用委員会にかけること、そして市東さんの同意を得ないで地主である藤﨑・岩沢から買収してしまうことの違法・不当性、これが第一です。
それから農地の買収を農地法第5条1項4号で行い、「知事の許可が要らない」としていたのですが、「実態は第3条による取得」だという農地法違反が第二です。88年「当時具体的な転用計画はなかった」とNAA自体も明言しているわけです。それにもかかわらず、「転用のために農地を使う」として5条買収しました。しかし、小作権者が転用に同意していないのだから転用計画も転用工事もできない。市東さんには耕作する権利がありますから転用はできません。だから、転用できない農地を転用を理由に取得することはできません。しかも農地を農地として使用し、藤﨑・岩沢を地主として小作料を収受せしめています。実体は3条の農地の売買です。5条1項4号では知事の許可は必要ないが、3条の場合には知事の許可が不要とはどこにも書いていません。したがって、ストレートに公団の底地権の取得は違法になります。
「転用目的の買収」は虚偽
――違法な底地売買を法令違反として明確にした、ということですね。 葉山 農地を農地として取得し小作の関係を維持してきたという対応が違憲・違法なのです。農地法において、一般に知事の転用許可の場合では、極めて厳密に「転用する場合、何カ月目まで」とか決められていて、具体的な転用計画の下で事業の進行度合等を明確に監視することが、県当局でなされています。それが、空港公団の場合、知事の許可が要らないということで、それを奇貨として、市東さんの同意なしに底地を取得しました。しかし、小作契約を解約しなければ農地は転用できません。転用できない小作地を転用目的で取得したことに大きな違法性があります。そして、小作契約の解約自体が市東さんの耕作権を侵害する違法行為です。
――底地の無断買収は憲法に違反しますね。
葉山 公団は、底地について補償を手厚くして代替地を提供しています。けれども、他方で小作権については収用委員会で裁決して収奪してしまおうという、ダブルスタンダードで表裏一体をなす権利を切り離しました。小作権者の同意がないということは、完全な補償がないままに小作権地の取得をするという憲法29条違反、また手続き違反(憲法31条違反)の問題となるのです。
――3月4日の第4回控訴審への弁護団の取り組みを教えてください。 葉山 県・NAAの反論を完膚なきまでに粉砕するということ、さらに、証人調べを何としてもかちとることです。
――証人調べの課題とポイントは何ですか。 葉山 農地は単なる土地の一部ではなくて、耕し続けて農民の身体の一部になっている。「農地は農民にとって生産手段であると同時に命」という農地の重要性を明らかにすることです。それと公共性という意味を経済学的、農学的な観点から追求していきます。また、「小作人の同意なき売買」に対し農民の立場から農業委員経験者を人証申請します。
――耕作権裁判では、NAAの隠し持っている文書の提出命令を出させ、優勢に立っています。この裁判の農地裁判に対する影響は?
葉山 耕作権裁判でNAAに、南台41―8の隣の耕作地が市東さんの耕作地であるとする書証を出させました。この書証は、NAAの主張を否定するものです。それはこの裁判にとどまらず、農地裁判における間違った耕作地の申請とそれを許可した県知事処分の違法性を裏付けるものです。
――最後に、全国の支援者への訴えを。
葉山 市東さん農地裁判は、当初の一発結審ははねのけました。その上で次は、こちらの主張を裁判所に納得させるために勝利の手順を抜かりなくやることが重要です。そのために3月4日に打ち切りをさせず、さらに審理を重ねさせなければなりません。
全国から結集した労働者人民の闘いの高揚の中でこそ弁護団の主張が主張として通ります。3月4日の高裁闘争と3・29全国集会に大結集して、市東農地裁判闘争に勝利しましょう。