多見谷判決の正体暴く Q&Aポイント解説④ 卑劣なへ理屈 NAAができない主張 多見谷が代わって強弁
週刊『三里塚』02頁(0906号02面08)(2014/10/27)
多見谷判決の正体暴く
Q&Aポイント解説④
卑劣なへ理屈
NAAができない主張
多見谷が代わって強弁
(写真 41―8の内、空港敷地からはみ出した部分についてNAAは転用計画を立てなかった)
Q 多見谷裁判長は、NAAも主張していないことをつけ加えた判決文を書いたと聞きましたが。 A その通りで、2つの勝手な内容を加えています。一つは、成田シンポジウムおよび円卓会議における国土交通省、空港公団総裁の「今後あらゆる意味で強制的手段を用いない」旨の確約についてです。この確約は1993年5月24日の成田シンポジウムおよび1994年10月11日の「成田空港問題円卓会議の終結に当たって」と題する隅谷調査団の最終所見にかかわるものでした。
成田シンポジウム、円卓会議は、前者が1991年11月21日から1993年5月24日まで、後者は1993年9月20日から1994年10月11日まで開かれました。それは、三里塚闘争幕引きのためのセレモニーでした。そのシンポジウムの最終回では、空港公団の山本長総裁が「地域の方々との話し合い」を約束し、円卓会議の最終回では中村徹総裁(松尾総裁の後任)が、隅谷調査団の最終所見受け入れを明言しました。
その最終所見は「平行滑走路の用地の取得のために、あらゆる意味で強制的手段が用いられてはならず、あくまでも話し合いにより解決されなければならない」と明言しました。
ところが、多見谷判決はNAAですら主張できなかったことを勝手に書き加え救済しました。「話し合いが頓挫した場合についても強制的手段を講じることがないことまで言及したものではない」と。
このようなことは法廷で、NAAは一度も言っていません。上述のように最終所見では「あらゆる意味で強制的手段が用いられてはならず」と明言しており、「話し合いが頓挫した場合は例外だ」などとはどこにも書いてありません。
ところが、多見谷裁判長は、NAAを救済する論理に行き詰まり、前述のような作文をしたのです。ちなみに、多見谷判決は市東さん側が何度も主張した「あらゆる意味で強制的手段が取られてはならない」という最終所見について触れることを回避しています。実に卑劣です。
ちなみに反対同盟は闘争破壊のためのシンポジウムを弾劾しました。国交省は、前述の「公約」をも使って反対同盟孤立化策動を行いましたが、B滑走路建設の強行などで彼ら自身がこの公約を破ったのです。しかし「強制的手段は使わない」という公約を、社会注視の下で行った事実を消し去ることはできません。
転用計画なしで
Q もう一つはどのような内容でしょうか。A 2番目は、市東さんの農地の取り上げをめぐって、NAAが空港の敷地からはみ出す部分について転用計画がなかったのに、100%の転用を認めている問題です(写真)。写真のように、市東さんが耕作している天神峰南台41―8番地の農地は空港の敷地からはみ出していました。面積にして全体の16%と少なくない割合です。この部分は、転用計画がありませんでした。
NAAはこの転用計画不在に気づかず、市東さんの賃借権を解約する許可申請の段階で、千葉県農地課から指摘され、あわてて「GSE、ULD」なる車両やコンテナ置き場の計画をデッチあげました。
この問題でも多見谷裁判長は、NAAですら主張していない内容を作文して判決を書いたのです。「確かに16%の部分については転用計画がなかった。しかし区域(敷地)外の部分は16%にとどまっていることからすれば、大部分に具体的な転用計画が存在するといえる」とし、「16%に計画がなくても問題はない」とNAAを救済したのです。
ところがNAAは法廷でこんなことは言っていないのです。あまりにデタラメでNAAですら言えなかったことを多見谷判決は臆面もなく書いているのです。
当事者が事実を主張しなければ、裁判所は判断の基礎とすることはできないという原則(弁論主義)を真っ向から踏み破っているのです。
Q その他に多見谷判決の問題点は。
A 農地明け渡しを命ずる判決を出せば、強制執行まで行き着くことは素人が考えても分かる道理ですが、判決は何とこれを否定しているのです。「知事は賃貸借契約の解約申し入れを許可するにすぎず、賃借権消滅という法的効果を発生させるものではない」と言っています。しかし、解約申し入れから1年後には自動的に賃借権は消滅します。すると農地の明け渡しを求める裁判の提訴となり、結局は強制執行になるのです。多見谷判決は「直ちには賃借権消滅にならない」ということだけを強調して、卑劣なごまかしでNAAを救済したのです。
そして事態はそのようになっています。こうなることを百も承知で「知事は解約申し入れを許可したに過ぎない」「賃貸借権解消の効果は発生しない」などと、どの口で言えるのでしょうか。詭弁もここに極まれり、という極悪の判決文です。 さらに取り上げ対象土地の誤り(特に41―9)についてです。判決は、NAAが41―9の明け渡しの提訴を取り下げたから「市東は、南台41番9の土地の明渡請求を受けるおそれがなくなったものといえる。…(だから)取消しを求める訴えの利益はない」と問題をすり替えました。
空港会社の申請が対象土地を間違えている以上、許可処分に重大な誤りがあるのは当然です。そもそも市東さんは、最初から誤りを指摘し、怒りをもって弾劾していました。
訴訟の中で、境界確認書などのでっち上げを追及され、NAAはとうとう41―9の請求を放棄せざるをえなかったのです。これは申請全体を無効にしているものです。それをNAAが請求の一部を放棄したから市東さんに「訴えの利益がない」などと詭弁を弄しています。許せません。
総じて、多見谷判決は90年来耕作してきた市東さんの農地を取り上げる姿勢をむき出しにした反動判決です。多見谷判決を徹底的に批判しつくそう。そして3万人署名を貫徹し来春3・4弁論闘争へ闘おう。
(終わり)