多見谷判決の正体暴く③ Q&Aポイント解説 小作農民の同意がない売買・解約許可は無効だ 農地法5条、20条
週刊『三里塚』02頁(0905号02面07)(2014/10/13)
多見谷判決の正体暴く③
Q&Aポイント解説
小作農民の同意がない売買・解約許可は無効だ
農地法5条、20条
(写真 「空港絶対反対」のヘルメットをかぶって闘争にのぞむ市東東市さん【孝雄さんの父】=1977年岩山大鉄塔下)
Q 多見谷裁判長は、具体的にはどのような主張で市東さんの農地を奪う判決を下したのでしょうか。
A 農地を農地以外の使用目的で売買する場合は、知事の許可が必要です。しかし成田空港建設の用地として買収する場合に限って、施行規則(7条1項11号)で、知事の許可なしに買収できることから、空港公団は知事の許可なしに小作地の底地を旧地主から1988年に買収しました。
ところで農地を農地以外の使用目的=転用目的で買収する場合には小作者の同意書を添付しなければなりません。小作者の同意が要件になります。しかし、空港公団は知事の許可が不要であることを悪用して、小作者である市東さんの同意を得ることなく、秘密裏に底地を買収したのです。これは脱法行為であり、法の潜脱(せんだつ)です。
したがって底地の売買は違法で無効です。ところが一審多見谷判決は、知事の許可が不要であるから、小作者の同意も不要であり、売買契約は有効であるとして、市東さんに農地の明け渡しを命じたのです。
しかし、知事の許可が不要であっても転用目的の売買である以上、小作者の同意は必要不可欠であり、売買契約成立の要件です。一審多見谷判決は取り消されなければなりません。
Q 15年間も底地の買収を市東さんに隠し続け、空港公団と空港会社が旧地主に地代を市東さんからだまし取らせていたことは農地法に違反するのではありませんか。
A 成田空港建設の用地として使用するとして、知事の許可を得ることなく農地を買収したにもかかわらず、転用計画もなく、買収した農地を15年間も農地のまま所有し続け、小作者である市東さんから地代を受けとってきたことは、農地として使用し続けてきたという事です。転用目的の底地の買収とは言えず、農地としての使用を目的とした買収となり、転用目的と偽って底地を買収したことは、農地法に違反します。したがって、一審多見谷判決は取り消されなければなりません。
Q 空港会社の賃借権の解約手続きは違法なのですか。
A 賃借権の解約には、農地の賃借人である小作権者の同意が必要です。しかし、空港会社は、小作権者である市東さんから賃借権の解約の同意を得ることなく解約通知の許可を知事に申請したのです。したがって知事は、解約通知の許可をしてはならないにも関わらず、解約通知を許可しました。知事の許可は農地法違反です。しかし、一審多見谷判決は、農地法20条2項2号に小作者の同意を要件とする明示の規定がないことを理由に、解約通知の許可申請には、小作権者の同意は必要ないので、知事の解約通知の許可を有効と判断し、市東さんに農地の明け渡しを命じました。解約通知の申請手続きに小作権者の同意が必要であるという明示の規定がないのは、知事の許可を必要とする転用目的の農地の売買では、小作者の同意書の提出が義務づけられているからです。当然、小作者の同意のない転用目的の売買はあり得ません。
小作者が同意している転用目的売買に伴って行われる賃借権の解約通知においては小作権者の同意が前提となっているので、明文化する必要がなかったと言えます。したがって明示の規定がなくても耕作者の同意が解約通知の許可にあたっては必要です。
また、転用目的の売買が施行規則7条に基づいて行われ、知事の許可が不要とされたことにより、底地の売買が市東さんの同意なしに行われたことから、解約通知申請において、市東さんの同意が必要不可欠でした。市東さんの同意のない解約通知の申請は無効であり、千葉県知事の解約許可決定も無効です。
Q 農地法が農地の売買で、小作者の同意を絶対要件としているのはなぜですか。
A 転用目的の対象になる農地が現に農民が耕作している農地だからです。転用目的で農地が売買されたら、現にその農地を耕作している小作者は農地を奪われる事になり、その農地で農業を継続することが出来ません。それは農民として生きることの否定です。転用目的の農地の売買で、小作農の同意を絶対要件としているのは、農地法の趣旨に基づき、耕作者である小作農を保護するためです。
市東さんの同意のない底地の売買を秘密裏に行い、底地と賃借権を計画的に切り離し、市東さんの同意なしに賃借権の解約を強行し、裁判所の強制執行で農地を強奪しようとする日帝・千葉県・空港会社を労農同盟の力で打倒し、市東さんの農地を守り抜きましょう。 祖父の代から90年以上も営々と耕し続けてきた農地=市東さんが丹精込めて作り上げた有機栽培・無農薬のビロードのような農地は、小作地であろうと市東さんの農地であり、何人も決して奪うことのできない市東さんの宝なのです。東京高裁小林昭彦裁判長に一審多見谷裁判長の農地明け渡し判決を取り消させ、農地裁判に必ず勝利しましょう。
なお、20条2項の解約許可に関して争われている行政訴訟は、10件もありません。解約許可処分がいかに例外的なことなのかがよく分かります。判例では、知事が農地の転用を不許可にした決定を覆したものはなく、転用をもくろんだ事業者側はすべて敗訴しています。また、農地転用の許可決定を認めたものでも、市東さんのように専業農家の農地を対象としているものはありません。まして、市東さんのように、約7割の農地を奪い農民として生きられなくする事例はありませんでした。
そもそも農地法は、所有権や基本的人権を制限するための立法ではありません。NAAはこれをも悪用して市東さんの農地取り上げをしようとしています。このような人権無視は許されません。(つづく)