耕作権裁判の「文書提出」攻防で NAAが提出せず 市東さん側がついに勝利
耕作権裁判の「文書提出」攻防で
NAAが提出せず
市東さん側がついに勝利
千葉地裁民事第2部・岸日出夫裁判長の下で行われている市東さんのもう一つの裁判=耕作権裁判で、重大な勝利がかちとられた。NAAに対する文書提出の期限とされた9月3日までに、NAAは千葉地裁に文書を提出せず、畑の位置特定問題で、「市東さん側の主張が正しい」と裁判所が判断する可能性が極めて高くなったのだ。
実質的な勝利は7月16日時点でのNAA側抗告の棄却でかちとられていたが、その後のNAAによる悪あがきも完璧に粉砕されたということだ。 7月16日に文書提出命令に関する抗告が東京高裁・菊池裁判長によって棄却されると、NAAは、むなしいあがきを開始した。2日後の18日に許可抗告の申し立てを東京高裁に行ったのだ。
許可抗告とは、「最高裁に特別抗告をするためには、高等裁判所の許可を得なければならない」という民事訴訟法の規定による(337条)。高裁の抗告棄却決定が不満だからと、勝手に最高裁に特別抗告はできない。その前段の手続きが定められているのだ。
しかしその許可が得られる条件は法律で定められており、極めて限られている。原決定(7月16日の抗告の棄却)に法令上の重大な誤りがあるか、重大な事実認定の誤りがある場合だけだ。原決定を読んでみてもそんなものはない。
そこで8月20日にこの「許可抗告」の申し立てが菊池裁判長によって不許可となったのだ。最高裁に泣きつく手段も難しくなった。後は、「ない、ない」と言い張って提出を拒否してきた文書について、「再び探したら、倉庫の隅から出てきました」と、見え透いたウソをついて文書提出に応じるか、「ないものはない」というウソをつき通して、文書提出を最後まで拒むかの二つに一つだった。
文書提出に応じない場合には法律に「裁判所は、市東さん側の主張を真実と認めることができる」という規定がある(民事訴訟法224条)。市東さん側の主張が認められる可能性が高い。すると、耕作権裁判の攻防で、市東さん側が圧倒的な優位に立つことになる。他方、NAA側が一転して文書を提出した場合でも、NAA側の文書のすべてが偽造文書だった、ということが明らかになる。NAAの主張は「根拠がない」となって、NAAは決定的な窮地に追い込まれるのだ。
そして、8月27日、特別抗告の申し立てをNAAは最終的に断念した。するとNAAは、1週間以内に上記のどちらかを選択しなければならなくなったが、9月3日を過ぎて、NAAは文書提出を拒否した。どちらにしても決定的な勝利がかちとられたのだ。
この勝利は耕作権裁判にとどまらない。控訴審の農地裁判に決定的な影響を及ぼすのだ。まず、強制執行について。NAAは農地裁判の控訴審が始まった時、「仮執行」を求める付帯(部分的)控訴をしなかった。その理由は、耕作権裁判が2年近く停止している(2012年10月以来)ことを考えれば、「仮執行」を求める意味がないということだ。地形から、強制執行は耕作権裁判対象地と一体となっており、農地裁判対象の農地だけを取り上げることは不可能だからだ。
さらに、耕作権裁判における「市東さん側主張が真実」との認定は、弁論内容において、農地裁判に影響を及ぼす。岸裁判長の文書提出命令の内容は、NAAが旧地主藤﨑氏と行った買収交渉の詳細にまで言及しており、「1987年の空港公団の運輸省あて報告書とNAAが証拠として出している『境界確認書』がなぜ食い違っているのか」「そのことを確認するためには、当時の報告書、会議録等の文書開示が不可欠だから文書を提出せよ」といった踏み込んだものになっている。
だから、「市東さん側主張が正しい」ということになれば、千葉県知事が行った賃貸借権の解約許可処分そのものが無効となり、裁判の土台が崩れる。
市東さんの農地をめぐる裁判は、千葉地裁でも東京高裁でも重大な段階を迎えた。NAAが主張してくるであろう「細かい位置の特定は必要ない」と言った言い逃れを粉砕するためにも、法廷外の闘いの爆発が何よりも求められている。10・8弁論闘争が決定的である。さらに3万人署名の前進が求められている。全力で取り組もう。
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弁護団は8月31日、三里塚現地で反対同盟を交えた拡大会議を行い、上記の勝利を報告しつつ秋の闘いにむけ交流した。
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≪文書提出をめぐる攻防≫
2012年
7月23日 市東さん側が、白石裁判長に文書提出命令の申し立て
10月5日 裁判長、一部だけ文書を開示
10月17日 市東さん側、全文書開示を求めて東京高裁に即時抗告
2013年
3月26日 東京高裁・高瀬三郎裁判長は市東さん側の言い分を認めて「他に文書がある可能性が高い。調査せよ」と、地裁に差し戻し
11月5日 千葉地裁・岸日出夫裁判長がNAAに文書提出を命令。NAAは「ないものは出せない」と開き直る。
12月9日 岸裁判長、NAAの対応を批判して再び文書提出を命令
12月17日 NAA、高裁に即時抗告
2014年
7月16日 東京高裁・菊池洋一裁判長、NAAの抗告を棄却
7月18日 NAAが東京高裁に法令の解釈に関する重要な事項を含むとして最高裁への特別抗告の許可を求める許可抗告を申し立て
8月20日 菊池裁判長は許可抗告の申し立てを不許可とした
8月27日 NAAは特別抗告の申し立てができず、文書提出命令が確定
9月3日 文書提出をすべき期限が来たが、NAAは文書を提出せず。市東さん側の勝利が確定