耕作権裁判 「文書提出命令」の勝利 NAA窮地、言い逃れきかず
耕作権裁判
「文書提出命令」の勝利
NAA窮地、言い逃れきかず
前号既報の通り、千葉地裁民事第2部(岸日出夫裁判長、前任の白石史子裁判長と交代)で闘われている市東さんの耕作権裁判で、7月16日、東京高裁第7民事部・菊池洋一裁判長が、NAAに対して抗告を棄却、文書提出に応じるよう命令する決定を行った。
耕作権裁判とは、市東家が耕作してきた天神峰南台の畑のうち、NAAが「農地の賃貸借契約のない不法耕作の場所」と決めつける畑について、その明け渡しを市東さんに求めて06年10月に提訴した裁判だ。(下図参照)
この耕作権裁判では2012年夏以降、空港公団(NAAの前身)が市東さんの農地の旧地主藤﨑政吉氏と農地買収交渉(1987年10月〜88年4月)を行った際の空港公団内の報告書や会議録などの文書開示をめぐって攻防が展開されてきた。民事訴訟でも、審理にきわめて密接に関わる文書については、裁判長による文書提出命令を要求することができる。
市東さん側は2012年7月23日に初めて、当時の白石裁判長にあてて文書提出命令要求を申し立てた(年表参照)。これに対してNAAは裁判長にだけ見せるインカメラ手続きで10点の書類を白石裁判長に出してきた。白石裁判長は同年10月5日、10点のうち3点だけ市東さん側に開示する決定を行った。これに対して市東さん側は「10点全部を開示すべきだ」とした上で、「10点以外にも文書は存在するはずだ。それも含めて全部出すように」という即時抗告を東京高裁に提出した。すると、同第8民事部の高世三郎裁判長は「千葉地裁への差し戻し決定」を2013年3月26日に行った。
すなわち「他にも文書が存在する可能性が高い。千葉地裁はもう一度調べるように」というものだ。この時点で千葉地裁の裁判長は岸日出夫判事に変わった。
「差し戻し」を受けた岸裁判長は同年11月5日に、「10点以外の文書があるはず」と認定して、NAAに文書提出命令を行った。この命令に対してNAAは「文書は存在しない。出せと言われても出せない」という露骨な開き直りを行った。
この弁明に対して岸裁判長は再度の文書提出命令を同12月9日にNAAに対して行った。岸裁判長の強硬な態度に追いつめられたNAAは東京高裁に救いを求めて12月17日に即時抗告を行った。 これに対して出されたのが、去る7月16日の菊池裁判長による即時抗告棄却決定だった。
文書はあるはず
前述したようにNAAは岸裁判長の文書提出命令に対して、「そのような文書は存在しない」とシラを切って、岸裁判長から2度目の文書提出命令を受けた。
だからNAA自らが12月17日に行った即時抗告ではさすがに「ないものはない」では通用しないと覚悟したか、「倉庫を探したけどなかった」なる子供だましの「不存在理由」をつけ足した。が、そんなものが通用するはずもなかった。
菊池裁判長による7・16棄却をもたらした決定打は市東さん側が提出した別の現闘本部裁判での証拠文書だった。現闘本部の撤去にむけた用地買収交渉(相手は故石橋政次副委員長の遺族)を、NAAは藤﨑氏交渉と同時期に行っていた。ところがこちらの交渉記録は詳細に残っており、現闘本部裁判の法廷に提出されていた。
菊池裁判長は抗告棄却決定文の中でこのことを明示に指摘して「弁解は認めることができない」と改めて文書提出命令を行ったのだ。文書が示すものは、41―8、9番地をめぐるもので、NAA側が位置特定をめぐって、偽造文書を作成した経緯が判明する文書だ。だから出せない。
NAAは決定的な窮地に追いつめられた。もし従来通り「もう一度探したけどなかった」などという言い訳を押し通そうとすれば、肝心の畑の場所の位置特定攻防で、自らの主張の根拠がなくなる。仮に文書を提出すれば偽造の犯罪行為が暴露される。まさににっちもさっちもいかないのだ。この耕作権裁判は現在控訴審闘争が闘われている農地裁判と表裏一体の関係にあるため、NAAが隠し持つ文書の提出は、農地裁判控訴審闘争勝利への大きな力となる。
NAAは、最高裁へ抗告をするために高裁への「許可抗告」を7月18日に申し立てたが、棄却の可能性がきわめて高い。市東さん耕作権裁判の勝利〜農地裁判控訴審の勝利へ前進しよう。
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《文書提出をめぐる攻防》
2012年7月23日 市東さん側が、白石裁 判長に文書提出命令の申し立て
10月5日 裁判長、一部だけ文書を開 示
10月17日 市東さん側、全文書開示を 求めて東京高裁に即時抗告
13年3月26日 東京高裁・高世三郎裁判 長、千葉地裁に差し戻し
11月5日 千葉地裁・岸日出夫裁判長 がNAAに文書提出命令
12月9日 岸裁判長、再び文書提出命 令
12月17日 NAA、高裁に即時抗告
14年7月16日 東京高裁・菊池洋一裁判 長、NAAの抗告を棄却