市東さんの控訴審陳述(下) 命の農地つぶすな
週刊『三里塚』02頁(0895号01面03)(2014/05/12)
市東さんの控訴審陳述(下)
命の農地つぶすな
(写真 法廷に映し出された種まき作業の写真)
3月26日に行われた市東孝雄さんの控訴審陳述の3回目を掲載します。法廷で映された23枚のスライド写真の内の1枚を紹介します。
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❼ 農地取り上げは私だけの問題ではない
私の農地問題は、私だけの問題ではありません。
東峰や取香地区は空港との関係で私とまったく同じです。飛行直下の住民は、場当たり的な空港拡張で騒音に苦しめられてきました。財界が3本目の滑走路を造れなどと、無責任な声をあげています。いまも続く住民無視に怒りを抑えることができません。
また、判決は私に農業をやめろと迫るものですが、いま全国の農家は私と似たような状況におかれています。食料自給率が40%を下回り、農薬やBSE、遺伝子組み換えが食の安全をおびやかしています。穀物不足が世界的な問題になっているのに、政府は農家をつぶす方向に動いています。TPPを進めて家族農業では生きられないようにする一方、そのため増える休耕地を企業が買いあさる、そのために農地法も改悪する──農業を続けることが、もはや闘いになっているのです。
さらに、成田空港は「国策」を掲げ農地・家屋を収用することでつくられてきました。そのやり方は、「国策」として推進された原発や基地とまったく同じです。
私は福島・被災地と沖縄に何度も足を運んでいます。そこで聞いた酪農家の涙ながらの訴えや避難区域に残された家畜の悲惨さに、息を飲みました。沖縄では基地のわきに作られた畑で石を拾う姿を見ました。
私が成田で農地を守り続けることは、同じように「国策」と闘い続ける福島や沖縄の人々とつながり、共に闘うことだと思っています。
❽ 天神峰の土と生きる 空港会社は一審で耕作場所を間違えた「南台41―9」の土地について、明け渡しの請求を放棄しました。しかしそれで済むことではありません。「南台41―8」や関連の裁判を含めてすべて請求を取り下げるべきです。裁判所はすべての請求を棄却すべきです。関連の裁判で文書提出命令が出され、新しい事実が出たことからも、控訴審でしっかり調べて欲しいと思います。
人が生きる上で、農地と農業は無くてはならず、大切であることは言うまでもありません。食が充たされている時には、そのことを忘れていますが、農業がなくては人は生きられません。ほんとうの「公共性」というのは、人が生きるための基盤となるものであり、農業にこそ公共性がある、という鎌倉・石原鑑定意見に、私は農業の大切さを、あらためて確信しました。
誘導路が曲がっているのは農家を虫けらのように扱い、場当たり的に進めてきた空港建設の結果です。その非こそ、空港会社は思い知るべきです。手直しのために、命の農地をつぶしてはなりません。これこそ〝農民殺し〟です! 貝阿彌裁判長は私の畑に立って、このことをよく考えて欲しい。
父と私が精魂込めてつくり続けてきた畑の土を証拠として提出しますので、3名の裁判官にはぜひ見てもらいたいと思います。
最後に、ともに歩んできた故萩原進さんに感謝し、私を支えてくださる多くの人々にお礼を申し上げて、これから始まる控訴審の意見陳述とします。
(終わり)