●特集 青年労働者を先頭に15春闘爆発へ Ⅲ 「生きるため」の階級的団結で未来を開こう 「生きられる賃金を!」 階級的労働運動の最大テーマ

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月刊『国際労働運動』48頁(0462号03面03)(2015/03/01)


●特集 青年労働者を先頭に15春闘爆発へ Ⅲ
 「生きるため」の階級的団結で未来を開こう
 「生きられる賃金を!」 階級的労働運動の最大テーマ


■2015年春闘のメインスローガン
労働組合を作って闘おう!
●賃金あげろ! ●戦争反対! ●非正規職撤廃!
●解雇撤回! ●全原発廃炉! ●消費税全廃!
●労働基準法改悪阻止!

戦争・排外主義と一体の「官製春闘」攻撃

 侵略戦争への突進を狙う安倍の攻撃の核心は、労働者大衆の怒りと闘いを全面的に圧殺することであり、そのために労働組合を徹底的に解体・絶滅することである。これを打ち破るため、安倍の「官製春闘」のペテンを引きはがそう。
 そもそも労働者にとって賃金とは、人間としての生活を確保する唯一の手段である。資本家どもが言うような「成果に対する報酬」ではない。資本家は労働者を雇った以上、自分と家族を養える賃金を労働者に支払う義務がある。新自由主義が今日、約4割の労働者を非正規職に突き落とし、生きていけない、結婚できない、子どももつくれないという賃金しか労働者に支払えないというその時点で、支配階級としては失格なのである。労働者は自ら、労働組合に団結して「生きられる賃金」を要求して声を上げていく必要がある。これに対して安倍は戦争へと突入するため、連合を先兵に労働者の「生きさせろ」の声すら圧殺しようとしているのである。それが「官製春闘」攻撃だ。
 安倍は「アベノミクスは賃上げだ」と言っているが、それは100%ウソである。そもそも労働者の実質賃金は18カ月連続で下がり続けている(グラフ参照)。2014年官製春闘とはどのようなものだったのかを見ていくと、さらにそのペテンは明らかになる。
 「経済産業省平成26年(2014年)企業の賃上げ動向に関するフォローアップ調査(14年8月29日)」によると、「東証一部上場企業1762社に調査票を送り、回収・集計。8月20日までに提出のあった1034社の状況について見ると、14年度に賃金の引き上げを実施した企業のうち、ベースアップ実施企業割合は、45・7%(13年度:7・6%) となり、調査票提出企業全体(無回答を含む)に占める割合も42・5%となった。加えて、14年度にベースアップを実施した企業のうち7割以上の企業が『6年以上ぶり』にベースアップを実施したと回答するなど、近年にない賃上げが実現したことが見てとれる」等々。
 つまり提出1034社のうち45・7%=約470社程度が賃上げを行ったということだ。これは日本の企業の約99・7%が中小企業であり、日本の全企業約421万社から見れば421万分の470=0・01%程度でしかない。また、これら企業の従業員数4013万人から見ると、トップ100の従業員数の合計は約70万人程度。賃上げを行った470社をすべて調べればさらに〝賃上げ〟となった企業の労働者数は明らかになるが、5%にも満たないだろう。
 アベノミクスで賃金が上がったなどいうことは、大半の労働者にとってまったく無縁である。マスコミが言うような「官製春闘」で労働者の賃金が上がることは絶対にないのだ。


 日本経団連は1月20日、15春闘への経営側の指針である「経営労働政策委員会報告」(経労委報告)を発表した(特集関連資料として掲載)。マスコミは一斉に「賃上げ促進」などと報じ、「官製春闘」の演出に全力を挙げている。これは昨年12月16日に発表された政労使会議の合意文書「経済の好循環に向けた政労使の取組について」に基づくものだ。報告は、これを全面的に推し進めよと言っている。これには「経済界は、賃金の引上げに向けた最大限の努力を図る」との文言がある。だが、それだけではない。「賃金の在り方」として「労使は仕事・役割、貢献度を重視した賃金体系とする」ことで合意したというのだ。要するに、連合が年功型賃金制度の解体と成果主義の賃金体系の導入にお墨付きを与えたのだ。
 だから、経労委報告は、「労働生産性と付加価値の安定的な向上なくして月例賃金の引き上げは難しい。経済全体の成長が十分でなく、企業間の格差が生じているなか、実態にそぐわないベア要求を掲げることに疑問がある」と、連合の要求をはねつけているのだ。
 現実に起きているのはこれから見るように「消費増税による企業のぼろもうけ」と大量解雇だ。「官製春闘」とは、政府と資本が交渉し、賃上げで「合意」すればいいとすることで、労資が闘うこと自身を抑え込むのが狙いだ。だから「官製春闘を打ち破る」とは、労働者が労働組合に団結して、自らの要求として賃上げを要求していくことだ。これが今春闘の第一の課題であり、これ自身が安倍の狙いを打ち砕くことになるのだ。

生活破壊と非正規職化促進の消費税全廃!

 第二に、賃金闘争への決起として訴えたいことは、消費税全廃へ総決起しようということだ。
 消費税は「貧困に苦しむ者も、ぼろもうけする資本家も同じ税率」という最悪の税である。さらに消費税は、派遣労働―非正規職化を促進してきた。労働者にとっては巨大な賃下げ攻撃なのである。


※消費税5%の場合


 この点について、少し具体的に見ていきたい(上の図を参照)。
 企業は売上高に応じた消費税、つまり商品を買った人から預かっていた消費税を国に納める。その際、仕入れや他の多くの経費などに対して支払った分の消費税を控除することができる。重要なのは、派遣または外注先への委託費も課税仕入れなのでその分は控除できるということだ。
 たとえば売り上げ高1000万円に対し、仕入れ原価400万円、諸経費200万円、賃金300万円だったとする。消費税5%の場合、売上高1000万円に対して預かった消費税は50万円、自社が払った消費税は仕入れ分20万円、諸経費10万円。つまり「50万円-30万円」で納税額は「20万円」となり30万円のキャッシュが懐に残る。
 しかし、社員の代わりに派遣や外注を頼むと、かかった300万円のうち消費税分15万円をさらに控除できるので「50万-(20万+10万+15万)」となり納税額は5万円となる。結果、45万のキャッシュが懐に残る。それなら外注を頼もうということになる。消費税を通して外注化・非正規職化が政策誘導されているということだ。
 これが税率8%になると 80万-(32万+16万+24万)=8万の納税となり、72万のキャッシュが懐に残る。10%では100万-(40万+20万+30万)=10万円の納税で90万のキャッシュが懐に残るという具合だ。
 このように、増税が進めば進むほど、必然的に外注化・非正規職化を進めることになる。とりわけ消費増税を価格に転嫁するのが困難で経営の苦しい中小企業は、すがるように外注化・派遣労働を進めるであろう。
 さらに輸出還付金である(特集関連資料参照)。消費税の税収は約10兆円。そのうち還付金は3兆円、つまり30%が還付金だ。税率が8%になると40%に膨れ上がる。2010年についてみれば、なんとトヨタ2246億円、ソニー1116億円を始め上位10社が約8700億円の還付金を受け取っている(表1)。実際、輸出企業の所在地にある税務署は、輸出還付金によって消費税の収支が大赤字となっている(表2)。

( 〔表1〕消費税還付金上位10社【2010年】)

(〔表2〕消費税収支がマイナスの税務署【2011年度、国税分】【億円】)


 つまり政府は消費税で労働者の外注化・非正規職化を促進し、労働者から税金を搾り取ったあげく、還付金という形で大企業にばら撒いているのだ。
 つまり消費税増税攻撃とは、生活破壊であると同時に外注化・非正規職化の攻撃であり、「消費税全廃」はすぐれて労働組合が賃金闘争として闘う課題なのである。

大量解雇攻撃を許さない

(写真 「会社解散」・全員解雇攻撃粉砕へ吉崎製作所社前で抗議行動【1月27日】)

 第三に、労働運動の決定的な課題となるのが、大量解雇攻撃との闘いである。
 東京東部ユニオン吉崎製作所分会の「会社解散」・全員解雇攻撃との闘い、全国のダイエー280店舗の閉店と2万数千人の雇い止め解雇に対して始まった闘いは安倍の「官製春闘」のペテンと、連合が資本と一体になって労働者の団結と怒りを抑圧している実体を暴く決定的な闘いだ。国鉄闘争で貫いてきた中身で闘えば絶対に勝てる。
 主に自動車大手・ホンダの自動車部品を製造する2次下請けの吉崎製作所は、2012年10月に取引先(1次下請け)の山下ゴムに買収され、100%子会社となった。翌年1月、東京都葛飾区にあった工場から千葉県白井市への工場移転で、働く労働者を全員解雇・分断しようとした際に結成されたのが吉崎製作所分会だ。団結を守り抜いて白井工場に乗り込み、職場闘争を貫いてきた。この組合つぶしのためにかけてきたのが今回の会社解散攻撃だ。昨年11月、突然「株主総会で決定した」「2015年6月で会社を解散する」と通告してきた。分会は怒りを爆発させ、直接の雇用者である吉崎製作所のみならず、親会社の山下ゴムにも団交要求や抗議行動を展開し、会社解散の撤回へ支援・連帯を拡大しながら闘い抜いている。
 ダイエーは今年1月1日をもってイオンの完全子会社となり、ダイエー全店閉店・労働者全員解雇が発表された。2月15日に「閉店第1号」となる東京・八王子店で2月1日、合同労組八王子ダイエー分会に結集する5人の労働者がストライキに立ち上がった。「私は18年もここで働いてきた。もともとはダイエーの直雇いだったのに、いつの間にか別の会社から給料が振り込まれてきた。本人の了承もなく、いまや4次下請けです。そうしておいて『あなたとは直接雇用関係にない』と差別するのか! 断じて許せません」「掃除のおばさんだからと言って、なめんじゃないよ!」。ダイエーの門前で行われたスト決起集会でストに突入した組合員は、根底的な怒りを爆発させた。
 ダイエーをめぐっては連合・UAゼンセン傘下のダイエーユニオンが「労働組合」を騙り、資本と一体となって労働者の解雇を合意・推進していることが明らかになっている。吉崎製作所やダイエー労働者の闘いは、このような連合の正体を満天下に暴き、本来の労働運動―階級的労働運動を社会的に登場させる決定的な闘いだ。

(写真 ダイエーの閉店第1号となる八王子店で合同労組八王子ダイエー分会の5人の労働者がストライキ【2月1日】)

労働規制撤廃法案粉砕

 こうした中で、日帝・安倍政権は今通常国会の「安保国会」と一体で、派遣労働を全業種で無制限に可能とする労働者派遣法改悪や、労働時間規制を撤廃し「残業代ゼロ」を可能とする労働基準法改悪を狙っている。安保関連法案とともに、労働規制撤廃法案を葬り去ろう。

自治体丸ごと民営化と闘い北島選挙圧勝へ

 さらに15春闘は、4月統一地方選・杉並区議選での北島邦彦さん圧勝に向けた闘いと一体で、児童館廃止・自治体丸ごと民営化絶対反対の国鉄・公務員決戦を発展させる闘いだ。自治体丸ごと民営化を狙う日帝・杉並田中区政、そして日本共産党スターリン主義が牛耳る組合執行部の裏切りによって進められている児童館全廃攻撃に、現場の怒りを土台に自治体の民営化・外注化・非正規化絶対反対の拠点となる職場を作り出して反撃しよう。
 日本共産党スターリン主義は児童館の廃止や民営化について「ルールを作ってそれを守らせればいい」と言って民営化を全面的に認めている。日帝の中東参戦に「テロ撲滅」を掲げて賛成しているのとまったく同じように、安倍・自民党(そして「第2自民党」である民主党)を支えているのだ。
 「896自治体消滅」=地方切り捨てと全面民営化攻撃との闘いは、労働組合のあり方をめぐる日本共産党スターリン主義との大党派闘争である。安倍政権の戦争と首切り攻撃に対して杉並の地から全国・全世界に、動労千葉・動労水戸に続く階級的労働運動の拠点建設の実践と北島邦彦さんの圧倒的勝利をもって、安倍政権を打倒する労働者大衆の闘いを圧倒的に拡大させよう。