特集 中国の新自由主義政策の矛盾爆発 バブル崩壊、金融恐慌へ 香港を始め闘いが高揚 Ⅲ バブル崩壊と金融恐慌の危機――経済成長は鈍化、地方は借金漬け
特集 中国の新自由主義政策の矛盾爆発
バブル崩壊、金融恐慌へ 香港を始め闘いが高揚 Ⅲ
バブル崩壊と金融恐慌の危機――経済成長は鈍化、地方は借金漬け
①不動産バブル崩壊の本格的な開始
中国経済は、そのバブル崩壊を本格化させている。
中国・国家統計局が9月18日に発表した全国主要70都市の住宅物件販売価格動向によると、実に前月比で70都市中68市で価格が下落したという。7月が同じく64都市での下落、6月が同じく55都市での下落だったことを見ると、バブルの進行が進んでいることは明確である。
中国ではこの間、「1世帯が購入できる住宅購入は1物件に限る」などの住宅購入の規制が、多くの地方都市でとられてきた。経済の過熱を抑え、投機目的の住宅購入を制限するためであった。しかしこのようなバブル経済の崩壊に直面して、7月28〜30日の間に河北省石家荘市、江蘇省杭州市、浙江省寧波市、江蘇省温州市が規制を緩和したのをはじめ、8月までの段階で購入規制を実施していた46都市のうちすでに37都市がこの規制の撤廃、緩和に踏み切る状況になっている。
さらに9月30日には中国人民銀行(中央銀)と銀行分野を所管する政府部門の中国銀行監督管理委員会(銀監会)が、2戸目購入時の住宅ローンの金利について、その基準の引き下げを発表した。1世帯が2戸目の物件を購入した場合のローンについては、今まで厳しい制限があったが、それを「1戸目のローンが返済済みであれば、1戸目と同じ基準で扱う」としたのである。
これらの政策は、明らかにバブル経済の崩壊に対する中国政府の対応策であり、そこまでバブル崩壊が深刻な事態に入っていることを示している。
②行きづまる中国経済
このバブル経済の崩壊の背後にあるのは、中国経済の危機の進行である。
大恐慌を緩和させ帝国主義を延命させた中国
2008年のリーマン・ショックは世界大恐慌の引き金を引いたが、その危機を「救い」、帝国主義世界体制を延命させたのが、中国だった。中国は4兆元(当時で約56兆円)に及ぶ大規模な景気刺激政策を行った。この結果、世界中の投資が中国に流れ込み、それによって生み出された景気の加熱、中国のバブル経済が、突入した世界恐慌をいったんは緩和させ、帝国主義経済を延命させたのである。
中国は「世界の工場」となり、2010年には10・41%の成長となった。
しかし経済成長は鈍化
だが、その後下落をたどり、2013年は7・7%となり、今年(14年)に至っては7・5%も切ると言われている(7〜9月期は7・3%)。
8月の中国の製造業の景況指数は6カ月ぶりに低下し、景気の後退が明らかになっている。鉄鋼業は不振が続き、7月の段階で88重点鉄鋼メーカーのうちの約3割の26社が赤字になっている。これに伴って鉄鉱石などの価格が急落し、先物価格が最安値となった。これに対して中国人民銀行は、9月18日までに大手国有銀行5行を対象に5000億元(8兆5000億円)の資金供給を行い、金融を緩和して経済を活性化しようとしているが、この事態は今の中国経済がいかに深刻な危機にあるかを示している。
経済成長を維持しようとして必死で現在も続けられようとしているのがバブル経済である。景気の過熱を防ぐために一度設けられた不動産売買への規制も外されつつある。だがそのバブル経済も今やその効果を失い、それどころか深刻な危機を生み出している。地方政府が財政的に破綻し、同時に証券会社をはじめとする多くの企業が借金漬けとなり、金融恐慌の爆発へとつながっていこうとしているのである。
③借金漬けになる地方政府、企業
中国のバブル経済政策は、地方政府が中心になって進められている。しかし地方政府は今まで地方債を発行することが中央政府によって禁じられてきたため、その資金を集めるのに債券を発行することができなかった。そこで地方政府は、資金集めのための部局を作り、それが民間金融業者やペーパーカンパニーなどを通じて「大規模開発プロジェクト」などを名目にした高利回りの債券を発行させ、それを銀行などで販売させて資金を集めるやり方をとったのである。その集めた資金が、地方政府の経済活性化のための「開発事業」として投資され、バブル経済を生み出した。
しかし多くの「開発事業」は、一時的には景気を高めても、後は廃墟を生み出すだけとなった。人の住まない都市や遊園地、テーマパークなどがあちこちに生まれ、ゴーストタウンと化している。そしてそれは一方で、地方政府にとっては返済不能の債務を次々と生み出すこととなり地方政府は借金漬けとなったのである。
この地方の抱える借金の額は、中国審計署(会計検査院に相当)の発表で2013年6月末時点で17兆9000億元(300兆円)を上回っているとされているが、現在すでに30兆元(500兆円)を超えているとも見られている。さらに同審計署によれば、今年3月末の段階で9省で合計8億2100万元(約140億円)の債務が償還期限を過ぎても支払われず、デフォルトに陥ったという。
例えば寧波市の2014年度における負債総額は468億2500万元(約7960億円)であるが、バブル経済の崩壊の中で14年第1四半期の土地の販売成約量は前年同期比17・16%減となり、土地の販売収入も同45・26%減と大きく落ち込んでいる。
中央政府はこの事態に直面する中で、地方政府の救済に走るとともに、5月22日までに10の省市で地方債の発行を許可した。しかしこれが今は何ら根本的な解決にならないことも明らかである。
借金漬けになっているのは地方政府だけではない。こうしたバブル経済の中で、中国企業の社債発行残高が世界一になっているのである。2013年末時点で、米国の13兆1000億㌦を上回って、14兆2000億㌦にも達している。これは中国の国内総生産(GDP)10兆㌦を上回り、世界の企業債務のなんと3分の1を占める額である。しかもこの社債総額のうちの約3分の1を占める4兆㌦がシャドーバンキングによって調達された資金だという。
④中国金融恐慌の爆発は世界経済の崩壊へ
中国でのバブル経済の崩壊は、中国のこうした企業の破綻から金融恐慌へ、そして地方政府の破綻につながっている。金融恐慌への発展は、中国経済の破綻から一挙に世界経済の破綻につながっていこうとしている。それは目前に迫っている。
リーマン・ショック以来の世界経済を延命させたのが中国経済であったが、それは同時に、世界経済の中に中国経済が深々とリンクされていった過程でもあった。中国経済は急成長し、中国は大国化し、経済においても世界経済の中で一つの巨大な一角を占める存在となった。
しかしそれは、中国経済の崩壊が世界経済の総崩壊に直結する事態を生み出した。中国経済が世界経済において占める巨大さ、帝国主義経済との密接な関係から、その崩壊はまさに世界経済そのものを崩壊させる存在となっている。中国は経済大国化が進む中で、米国債の最大の購買者となったが、中国経済が崩壊して中国政府が米国債を投げ売りすれば、それは直接的にも米国経済を一挙に崩壊させる事態にもなりかねないのである。リーマン危機から世界経済を延命させた中国が、今度はその延命による矛盾のすべてを爆発させて、世界大恐慌の本格的な引き金を、今より大きく引こうとしているのである。世界経済危機は、ついにここまで来たのだ。
このすさまじい帝国主義とスターリン主義の現代世界の末期的な危機の現状をはっきりとさせなければならない。