●特集 アメリカ労働運動を甦らせる闘い Ⅱ オバマの教組破壊と闘いUTLA組合権力を奪取 米帝の先兵、AFL―CIO――帝国主義労働運動の打倒へ

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月刊『国際労働運動』48頁(0458号03面02)(2014/11/01)


●特集 アメリカ労働運動を甦らせる闘い Ⅱ
 オバマの教組破壊と闘いUTLA組合権力を奪取
 米帝の先兵、AFL―CIO――帝国主義労働運動の打倒へ

(写真 ウクライナのナチ)

(写真 ウクライナのナチ、スボボダ党の党首【左】を支持するアメリカのヌーランド国務次官補【中央前】)

(写真 ニューヨーク市教組委員長ワインガーテン【左】とマスコミの独占的支配者でニューヨーク市長であるブルームバーク【2009年】)

(写真 「教員は学テの点数じゃない」「協約案に反対投票をしよう」。ニューヨーク市教組の反対派、MOREの市教組本部に対する抗議闘争)

米帝による全世界的な階級支配

 アメリカ帝国主義は第2次世界大戦後の帝国主義世界体制の基軸国となった。
 それは単に、全世界の国々を国家対国家の関係で支配するにとどまらない。全世界の階級闘争に直接介入し、アメリカ帝国主義による階級支配を貫くということだ。
 AFL(米労働総同盟)は、第2次大戦終了の前年、1944年の大会でFTUC(自由労働組合委員会)の創設を決定した。戦後の欧州・日本で反共労働組合を作るためだ。AFLは、各国駐在の米大使館や米占領軍当局に代表を派遣した。そして、欧日の労働運動指導者をアメリカでの研修に招待し、反共労働運動の教育をするとともに、米国務省の巨額の資金を使って買収し、労働組合の分裂工作を行った。
 その後も、73年のチリのクーデター、02年のベネズエラのクーデターを推進し、11年のエジプト革命の歪曲・圧殺を図るなど、悪辣な反革命工作を行っている。
 こうした対外工作は歴代のAFL(55年以後は合併してAFL―CIO)会長が自ら、勤務時間の8割は国外労組工作に使っているという。AFL―CIOの年間予算の半分は国外で使われる。対外工作はAFL―CIOの中心的課題なのだ。

AFT本部の帝国主義労働運動

 その中で、特にAFTは対外工作に力を入れてきた。アルバート・シャンカー元AFT委員長(74~97年)は、当時のAFL―CIO会長、レイン・カークランドとともに、国務省のNED(全米民主主義基金)の理事になっている。NEDとシャンカーは、80年代のニカラグア革命に対する極右反革命勢力、コントラに対する援助・CIAと米軍の秘密軍事作戦、大虐殺にも関与している。NEAは、AFL―CIO加盟労組ではないが、やはりNEDに協力している。
 現在のランディ・ワインガーテン委員長は今年3月、ウクライナを自ら訪問し、ナチス勢力が主要閣僚を占める現政権を支持させるための労働組合工作をしている。アメリカ帝国主義の争闘戦の軍事化の先兵になっているのだ。
 それは、AFT、NEA本部が自ら組合員の団結を破壊している行為と一体だ。

競争主義、「学力」主義を推進

 新自由主義の「教育改革」に対して、AFT、NEA本部は、組合員の怒りに押され、口では反対しているが、根本的なところで新自由主義を推進しているのである。「学力」競争を推進し、チャータースクール化の最大の資金提供者、ビル・ゲイツ財団などと協力しているのだ。競争の推進は、すなわち団結の破壊である。新自由主義の核心は、労組破壊である。そして、労働組合の基礎である団結そのものの徹底的破壊である。

『危機に立つ国家』

 まず、アメリカ新自由主義「教育改革」の出発点となった文書を見てみよう。
 「わが国は危機に瀕している。かつてわが国は比類なき卓越性を、通商でも産業でも科学でも技術革新においても有していた。だがそれは、全世界の競争相手にとって代わられつつある」
 「このわが国の現在の凡庸な教育成果が、仮に非友好国がわが国に押し付けたものだったとしたら、われわれはそういう押し付けを戦争行為とみなしたであろう」
 これは、81年にレーガン政権の「教育改革」推進機関である「教育の卓越性に関する国家委員会」が作成した『危機に立つ国家――教育改革の至上命令』の冒頭である。
 そして、アチーブメント・テストの国際比較でアメリカが1位ないし2位になったものが一つもないことを筆頭にして、アメリカの教育がダメである論拠をこれでもかこれでもかと13項目も列挙している。これが全社会に衝撃を与えた。「戦争行為」という激烈な言葉で、「教育改革」反対者を国賊扱いし、さまざまな勢力による教員・教組バッシングに火をつけたのだ。
 こうしたキャンペーンの中でAFT、NEA本部は「国際競争力の向上が必要」という前提を認め、その推進を右派と競い合っていった。
 07年10月、ランディー・ワインガーテンは、AFT委員長になる直前、ニューヨーク市教組の委員長としてついに、「生徒のテストの点数と教員給与をリンクした成果給に賛成」という方針を出した。「成果給で賃金を下げられる教員は出さない」「がんばった学校、教師に報いるだけだ」と。NEA傘下、AFT傘下のすべての教組は、右派的な教組も含めて、成果給に賛成した所などそれまで一つもなかった。ワインガーテンが堤防に穴を開けたのだ。
 成果給導入は、単に賃金の問題ではなく、重大な団結破壊、労組破壊になる。また、生徒の点数に連動した成果給は、点数を口実にした解雇攻撃に道を開いていく。
 実際、このニューヨーク市当局とワインガーテン執行部の合意の後で、隣接したロードアイランドの高校が、「テストの成績不振が連続した」ことを理由にして廃校となり、教職員が全員解雇された。オバマは、それを「これこそが教育改革」と言って、テスト点数不振=廃校=全員解雇のロードアイランド・モデルの全米化を推進すべきだと言ったのだ。実際、その後、ニューヨークでも全米でも同様のことが行われるようになった。
 またワインガーテンはニューヨーク市長の教育行政直轄支配を支持し、市長とのパートナーシップ路線をとった。これも、シカゴ以外には全米に前例がない重大な教育支配の攻撃なのだ。
 このようにAFT本部は、単に国家権力の攻撃に対して「闘えない」とか「屈服している」というレベルではない。積極的・自覚的に帝国主義の労働者階級への攻撃を担っている。
 この帝国主義労働運動を打倒し、取って代わって教職員組合の権力を掌握することがランク&ファイル労働運動の決定的課題だ。それはすでに始まっている。
 ニューヨークでは、執行部権力を握ってきたシャンカー、ワインガーテンらのユニティー(統一)派に対して、ランク&ファイル(職場組合員)自身が主体となる組合の形成を目指して、MORE(ランク&ファイル教育者〔*〕運動)というフラクションが形成され、執行部権力の奪取に向かって闘っている。
 *「教育者」――教員+他の学校職員のこと

組合員自身が執行部権力を奪取したシカゴ教組

 シカゴ市教組は、前述のようにレーガン反革命の嵐の中でもストライキで闘い抜いた戦闘的な組合だ。だが、全米に先駆けて市長の教育行政直接掌握と学校閉鎖、チャーター化が強行される中で、執行部は屈服というレベルを超えて、「教育改革」組織に参加し、積極的推進者になっていった。組合員の2割近くが解雇された。その手先になった執行部は許しがたいが、組合の組織統制は厳しく、ランク&ファイルの活動家にとって、それを覆すのは容易なことではなかった。解雇された組合員に対して、執行部は、「別の職を探すほうが先決」と言って矛先をそらし、それでも声を上げようとする組合員には、強権的な統制発動で抑え込んだ。
 こうした中で活動家たちは07年、新自由主義についての小さな学習会グループを作るところから反対派の形成を始めた。ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』は当時の学習会の教科書の一つだ。そこにはハリケーン災害に乗じてニューオーリンズ市で全市の学校を一挙に再編し、チャーター化を進めたことが描かれている。それを実行したのが、まさにシカゴ学区初代CEOとして、シカゴの大量閉校計画を開始したポール・バラスその人だった。ニューオーリンズの教訓を学ぶことで、自分たちの直面している問題が鮮明になったのである。

UTLAの国際連帯から学んだシカゴの活動家

 その反対派の転機になったのは、08年UTLA(ロサンゼルス統一教組)本部で行われた米・カナダ・メキシコの教組による、トライナショナル・コアリション(3カ国連合)の会議への参加だった。
 トライナショナルは、93年に、翌年から実施されるNAFTAによる労働者の権利侵害に対して、労働者国際連帯の力で闘うために結成された。当初はNEA本部、AFT本部も参加していた。だが、これがNAFTAに対する本格的な批判を開始し、メキシコからの参加が、SNTE(メキシコ教組)内の反対派CNTE(教育労働者全国交流会)だけになるなかで、NEAとAFTの本部は、トライナショナルに反対するようになっていった。だから、UTLAが主催者となって、トライナショナルを開催したこと自体が衝撃であった。
 3カ国労働者連帯でNAFTAと闘うということは、新自由主義、アメリカ帝国主義と真正面から闘うということだ。特に、メキシコからオアハカ州教組が参加したことは、「どちらの立場に立つのか」をあいまいさなく突き出すものだった。オアハカ州は、NAFTAの矛盾の集中点であり、またSNTE本部と反対派の激突の焦点だ。本部はフォックス政権・ギャング組織と結託して反対派を襲撃、暗殺し、また校長会と結託して第二組合の組織化に全力を挙げた。SNTE内の反対派フラクションは、これと闘い抜いて団結を守り、ついに06年、実力ストライキを貫徹し、そこに全住民の支持を結集して、オアハカ・コミューンを樹立した。そして、それが軍の弾圧で解体された後でもオアハカ教組の団結は崩れず、闘いを継続している。
 この08年トライナショナルに参加したシカゴ教組の活動家が、05年に組合権力を奪取したUTLA左派、オアハカ教組、カナダのブリティッシュコロンビア州の闘いを持ち帰って、CORE(ランク&ファイル教育者派、コア)を結成した。当初は約35人のフラクションにすぎなかった(うち現役組合員は22人)。しかし、ここから、強大な既成指導部を打倒する闘いが始まったのだ。