特集 日帝・新自由主義を打倒する国鉄決戦 崩壊するJR体制を打ち砕き動労総連合を全国につくろう Ⅱ 外注化で鉄道の安全が崩壊――資本・カクマル結託体制も瓦解

投稿日:

月刊『国際労働運動』48頁(0457号03面02)(2014/10/01)


特集 日帝・新自由主義を打倒する国鉄決戦
 崩壊するJR体制を打ち砕き動労総連合を全国につくろう Ⅱ
 外注化で鉄道の安全が崩壊――資本・カクマル結託体制も瓦解

JR東の「ニューフロンティア21」

 JR北海道での事故続発やJR東日本・川崎駅事故は、「JR崩壊」というべき現実だ。
 12年度の営業距離100万㌔あたりの部内原因による輸送障害発生件数は、大手私鉄と比べJR東日本は10倍、JR北海道は28倍にもなった。その根源にあるのは外注化だ。
 JR東日本の外注化は、2000年11月に打ち出された中期経営計画「ニューフロンティア21」(NF21)で一気に加速した。NF21では鉄道事業は3番目に位置づけられ、「ステーションルネッサンス(駅空間の経営資源化)」を象徴とする営利優先の戦略が打ち出された。それは、鉄道会社のあり方を根本的に変える計画だった。
 メンテナンス費用の縮減と、05年度末までに1万人を削減し6万5千人体制とすることが数値目標化され、安全はことごとく切り捨てられた。
 NF21提示から5~6年のうちに、JR東日本の人件費は850億円も削られ、経常利益は1千億円以上も跳ね上がった。そして、安全の崩壊は深く全面的に進行した。
 NF21の発表に先立つ00年9月、JR東日本は二つの外注化策を提示した。「グループ会社と一体となった業務体制の構築(運輸車両関係)」と「設備部門におけるメンテナンス体制の再構築」(「設備21」)だ。
 「グループ会社と一体となった業務体制の構築(運輸車両関係)」は、すべての工場、運転区を対象に車両検修業務の大幅な外注化を狙うものだった。それは、車両検査周期の延伸や実施基準の改定を各鉄道事業者の裁量に委ねる01年12月実施の国交省令改定と一体だった。新自由主義下の規制緩和が国家戦略として進められたのだ。
 「設備21」は、設備部門(保線、土木、建築、機械、電力、信号通信)の全面外注化を打ち出した。00年段階で設備部門の直轄業務は全業務の約30%程度まで削られていた。その約半分をさらに外注化するというのだ。JR東日本は「JR本体は設備管理の技術者集団、パートナー会社は施工に関する技術者集団に専門特化」するとして、保線の検査業務や機械グループ業務などを外注化した。その結果3300人が削減され、そのうち2500人が外注会社に出向となった。
 こうした丸投げ外注化は、JRから技術力を奪っただけではなく、外注先労働者の労災死亡事故の多発という痛ましい現実をもたらした。分割・民営化以降、JR東日本だけでも154人の下請け・孫請け労働者の命が奪われている。その一切の責任はJRにある。
 これらの攻撃をJR総連・東労組は率先推進した。東労組は「必要な効率化は進める」との立場を鮮明にし、外注化施策を策定から実施に至るまで主導的に進めた。東労組カクマルは新自由主義攻撃と一体化することで延命を策したのだ。
 しかし、資本とカクマルの結託体制は、安全崩壊とともに決定的な破綻を迎えている。今やJR資本はカクマルとの結託体制の清算を最後的に決断し、彼らが「拠点」としてきた運転職場からカクマルを排除する施策に乗り出している。これが外注化を推進してきたカクマルの末路だ。
 外注化により、事故が起きてもJRは責任を取らない体制がつくられてきた。この現実をもたらしたのはJR総連カクマルだ。
 だが、これに対しJRの中から青年労働者が怒りをたぎらせ立ち上がる情勢が訪れている。動労千葉は、反合・運転保安闘争路線を貫き、外注化を阻んできた。労働組合が団結して立ち向かえば外注化は粉砕できる。

安全破壊のJR北海道「経営計画」


 JR北海道での重大事故の続発は、JR体制の崩壊を突き出す象徴的事態だ。
 11年5月27日の石勝線トンネル内での特急列車の脱線・炎上事故は、尼崎事故(05年4月25日)に匹敵する大惨事になりかねない事態だった。
 昨年9月19日の函館線・大沼駅構内での貨物列車脱線事故をきっかけに、JR北海道が約300カ所ものレール異常を放置していたばかりか、レールの検査データ改ざんが日常的に行われていたことが発覚した。これらは国鉄分割・民営化と外注化の結果だ。
 国鉄時代、北海道には約2万8千人の職員がいた。JR北海道は87年に1万2720人体制で発足した。鉄道は営業距離㌔で4000㌔から2500㌔に削減された。4割弱が「赤字ローカル線」として廃止された。職員は13年段階で7116人に減らされた。外注化が進み人員が削減され安全は切り捨てられた。そもそも広大で冬の寒さが厳しい北海道で、利益第一主義の民営化された鉄道会社が成り立つはずがなかった。必要な設備の補修を行う経費もまかなえず人員もない中で、データ改ざんが常態化していった。
 JR北海道による業務全面外注化のマスタープランが、02年3月公表の中期経営計画「スクラムチャレンジ21」である。同計画は「旅」と「くらし」を事業領域とすると言い、「くらし」とは、商業展開や不動産開発で、その象徴が札幌駅前にそびえ立つJRタワーだ。
 鉄道事業は、「旅」ということで観光客誘致に重点が置かれた。安全で堅実な鉄道運行は投げ捨てられ、航空会社と対抗するためのスピードアップが強行された。
 また「スクラムチャレンジ21」は、「グループ経営ビジョン」として打ち出された。グループ会社への業務の徹底的な外注化が核心で、具体的には、保線や検査・修繕などのメンテナンス業務を全面外注化するということだった。
 JR北海道の車両の検査・修繕業務は「北海道ジェイ・アール運輸サポート」に委託されている。車両の検査・修繕に携わるのは時給750円で募集された非正規職労働者だ。検査も修繕も形だけのものになっていた。これが外注化の現実だ。
 「スクラムチャレンジ21」以来の経営戦略を先頭で進めてきたのは、今年1月に自殺した坂本真一元社長だ。彼はJR総連カクマルとの結託体制を維持し続けた中心人物でもあった。JR総連カクマルこそ、外注化攻撃の最先兵だったのだ。そしてJR連合も国労幹部もそれを容認した。
 JR北海道は検査データ改ざんの責任を23歳の青年労働者と59歳の退職間際の労働者に押し付けて懲戒解雇した。外注化がどんな事故を引き起こそうと、経営者は絶対に責任を取らない。こんな理不尽なことは絶対に許せない。
 他方、安倍政権と国土交通省、JR資本は、16年春予定の北海道新幹線の開業に向けてのめりこんでいる。
 だが、新幹線開業はJR北海道の経営をさらに圧迫する。北海道新幹線を保有するのは鉄道運輸機構であり、JR北海道は鉄道運輸機構に新幹線使用料を払わなければならない。新幹線開業によるJR北海道の収益増は全額、新幹線使用料に消える。新幹線開業は、JR北海道にとって増収源にはならないどころか、収益が見込みを下回れば直ちに赤字拡大要因に転化する。それは、一層の安全破壊を引き起こす。
 16年春の新幹線の開業に伴い、江差線・木古内―五稜郭間は第三セクター化される。他のJR線との接続が断たれる江差線・木古内―江差間は5月11日に廃止された。
 4月、安倍政権の介入で経営陣の大幅な刷新が行われた。JR総連・北海道旅客鉄道労組に厳しい態度を取り、子会社に追いやられていた島田修が社長に就任した。JR総連との結託体制の清算に踏み込んだのだ。
 トラブルや不祥事は、新経営陣のもとでかえって増えている。北海道新聞で報道された事例に限るが、4月1日以降7月18日までに起きたトラブルは、昨年同時期の実に3倍強に上っている。車両の不具合は40件(昨年は14件)、線路やポイントや橋などのトラブルは8件(同0件)、それ以外の設備のトラブルは7件(同3件)、運転士などによるミスや不祥事は9件(同2件)だ。
 国鉄分割・民営化そのものの矛盾、JR体制の27年間の外注化・非正規職化による膨大な負の堆積物は、経営陣を入れ替えればどうにかなるものではまったくない。JR北海道の経営陣にJR東の幹部を投入すれば何とかなることもありえない。川崎駅事故は、安全崩壊がJR東の問題でもあることを示した。
 JR北海道の経営破綻は目を覆うばかりだ。6月の鉄道収支は前年同月比6・5%減で3カ月連続で前年実績を下回った。特急や急行による「中長距離収入」は同11・6%減。5月連休中は同12%減だった。13年度の連結売上高に占める鉄道運輸収入はわずか35・4%まで低下。14年度は確実にそれ以下になる。
 島田新体制は「安全運行の再生のために全力を集中する」と言う。他方で「ローカル線では減速運転をするから路盤強化は後回しでいい」と平然と言い始めた。これは、安全切り捨て、赤字線の全面廃止にまで行き着きかねない。
 JR北海道の事故多発は、新自由主義に基づく国鉄分割・民営化とその後の全面外注化に原因があることは明らかだ。この現実に労働者は怒っている。労働組合が団結して立ち向かえば外注化は粉砕できる。9・11郡山闘争はそれを示した。北海道に動労総連合をつくろう。

川崎事故の原因は外注化

(写真 JR京浜東北線・川崎駅で軌陸車に激突し横転した回送列車【14年2月23日】)

 川崎事故は、JR東日本における「ニューフロンティア21」以来の外注化・非正規職化・規制緩和がもたらしたものだ。
 14年2月14日、JR東日本は第6次安全5カ年計画として「グループ安全計画2018」(14~18年度が対象期間)を発表した。発表直後の2月23日、JR京浜東北線・川崎駅構内事故が起きた。
 これは同日深夜1時10分過ぎ、回送列車が構内改良工事の作業に従事しようとしていた軌陸車と激突し、回送列車が脱線・転覆するという大事故だった。
 この回送列車は終電で、桜木町駅で折り返して蒲田電車区に向かって進行中の定時運行列車だった。まだ回送列車が通過していないのに、構内作業に従事する軌陸車が線路に載せられ、事故に至ったのだ。線路閉鎖作業が終了していないところに作業用車が載線されたというおよそ考えられない事故の発生に、JR東日本全体が震え上がった。
 JR東日本は、事故直後から責任が自らに及ぶことを回避するため、すべての原因が軌陸車を運転していた運転者と、駅構内の構内改良工事に携わっていたJR関連の5社にまたがる現場労働者の過失にあるかのようなキャンペーンを開始した。
 事故の元凶は外注化・非正規職化・規制緩和にあり、川崎駅事故はまさにその結果だ。JRはその真実が暴かれることを心底から恐れている。
 JR東日本の安全崩壊・労働崩壊は、川崎駅事故だけが特殊なケースとは言えないところに深刻さがある。
 「安全計画2018」によれば、JR東日本全域では「毎日1万2千本を超える列車が運行」し、「乗務員による信号確認が1日当たり約120万回、ドアの開閉が約15万回、保守係員等による線路閉鎖が約1800件(年間に換算すると約65万件にも及ぶ)」行われている。
 こうした鉄道業務は、一元的に管理されなければ安全を保つことはできない。現場労働者が怒りを込めて弾劾しているように、鉄道業務を外注化してはならないのだ。
 「安全計画2018」の最大のペテンは、事故に対するJR東日本自身の責任を一切認めていないことにある。
 下請けの労働者が労災で負傷し命を奪われても、JRは刑事責任も問われないし、労働者への損害賠償もしない。賠償するのは受託会社だ。労働安全衛生法や建築業法は、業務を委託した側の「元方事業者」が下請け労働者の労災防止に責任を負うと定めているが、JRは1次下請けが「元方事業者」だとして一切の責任を取っていない。
 このままではさらなる大事故が不可避に起きる。事故を止めるのは労働組合の団結した力である。動労千葉、動労水戸とともに闘う動労総連合を各職場につくろう。JR体制を打倒しよう。

駅空間でカネもうけ 鉄道は駅への集客手段

 「ニューフロンティア21」や、「スクラムチャレンジ21」などの経営計画は、株主価値重視経営を唱え、〝コストがかかる鉄道よりも関連事業で稼ぐ〟という考え方を押し出して、今までの鉄道会社のあり方を根本のところで変えてしまった。
 JR東日本が08年3月に出した経営計画は、今後10年間で「運輸業以外の営業収益を全営業収益の4割程度まで引き上げる」としている。
 JR北海道では、全営業収益のうち鉄道外収入は62%も占めている。
 多くの客が行き交う駅改札内の販売効率は、通常の小売りに比べて格段に優位だ。駅ナカでの売り場1平方㍍当たりの年間販売額は513万円で、他の小売業の66万円の約8倍だ。駅ナカ事業で働く労働者の70%以上が非正規職で、低賃金で働かされている。

カクマルとの結託関係の清算へ

 こうした中で、JR東日本はJR総連・東労組との結託体制の破棄を明確にした。昨年末に東京支社で行われた運転士・車掌の強制配転に続き、乗務員基地再編成攻撃と一体で、東労組の弱体化を狙う運転士の異動が再び画策されている。これまでの「労使協力関係」を清算し、東労組の「拠点」である運転職場を資本の全一的支配のもとに組み敷こうとする動きである。JR東日本は労務政策の転換に大きく踏み込んできた。
 昨年12月24日、JR東日本は東労組本部に対し「京浜東北・根岸線の乗務員基地再編成について」を提示した。これは、大宮、東京、横浜の3支社にまたがり、職場の廃止と新設、運転士・車掌の支社間異動を伴う大規模な合理化攻撃だ。そこには15年3月に東労組カクマルの「拠点」職場である下十条運転区を先行的に廃止する計画が含まれている。
 1月、JR東日本東京支社は東労組東京地本に対し、合理化案の「概要提案」を行い、2月に入ると東京支社は、管内の全運転士と全車掌を対象に地本を飛び越して面談を行った。下十条運転区でも行った。
 3月26日、東京地本は東京支社に対して「面談の中止を求める緊急申し入れ」を提出、4月9日に団交に入った。団交で会社は、「現在行っている面談は止めない」と強行姿勢を崩していない。
 東京地本は、労資結託体制の維持を哀願した。しかし、乗務員基地再編成による安全崩壊については一切言及していない。東労組執行部の関心は、合理化・外注化を労組として承認し推進することによって与えられてきた既得権益の護持だけなのだ。
 東労組東京地本は4月15日から4日間、「全運転士集会」を開き、1800人が動員された。だが、会社は「面談の続行」を崩さなかった。
 5月15日、東京地本は、執行委員会で「京浜東北・根岸線の乗務員基地再編成」の「施策の進め方」に対して、「同盟罷業(ストライキ)の戦術行使でたたかう」ことを決定した。
 ところが6月8日の東労組定期大会では「ストライキ方針の決定」などは一切論議されなかった。茶番もいいところだ。最初からハッタリにもならない代物だったのだ。
 6月26日、JR東日本本社と東労組本部は経営協議会で「正常な施策実施と異動準備のための面談中止を求める」に関する協議を行い、5項目からなる「施策実施に関する確認メモ」を締結した。
 東労組は今回の「ストライキ騒ぎ」を謝罪し、資本に恭順の意を示した。「確認メモ」には資本を縛るものは何一つない。カクマルとの結託体制破棄に動く資本に対し、東労組は結託維持を懇願し、全面屈服をあらためて表明する以外になかった。安倍政権が集団的自衛権行使に突き進む中で、こうした資本への屈服は戦争への全面協力に行き着く。
 JR東日本は、資本による全一的な支配を確立して、さらに徹底した外注化・非正規職化を強行しようとしている。これと真っ向から対決しているのが動労千葉・動労水戸―動労総連合だ。東労組と決別し、人生の選択をかけて動労総連合に結集しよう。

行き詰まった鉄道輸出戦略

 安倍=葛西体制は6月24日、「日本再興戦略改定2014」(成長戦略)を決定した。
 新幹線輸出が行き詰まる中で、日帝は当面は都市鉄道や地下鉄で輸出の実績をつくるとしている。だがJR東日本「グループ経営構想Ⅴ」が世界の鉄道市場規模を22兆円と打ち出したことに示された日帝の願望ははじめから大破産しているのだ。
 だからこそ葛西敬之(JR東海名誉会長)が牛耳るJRは一層の外注化・非正規職化を強行し、低コストを売り物に海外市場に殴り込みをかけるしかない。JR東日本は車両製造業の海外進出を唱えて新津車両製作所を分社化し総合車両製作所に移管した。その新津事業所には「できない理由よりもやる方法」という標語が掲げられた。まさに最悪のブラック企業だ。
 「鉄道パッケージ輸出」とは、この外注化システムを輸出して、地域を面として制圧するということだ。だが、外注化によるJRの大事故続発は、鉄道輸出戦略をますます破産させている。安倍政権が「成長戦略」の柱に掲げてきたパッケージ輸出は、デッドロックにぶち当たっている。
 他方で新幹線輸出も破産している。
 韓国高速鉄道KTXはフランスの技術を基盤としている。台湾新幹線も日本とドイツのシステムの混在型だ。JR東日本と川崎重工による中国への新幹線技術供与は、スターリン主義的な安全無視の「超高速」運転を強行し、低コストを武器に世界市場を席巻する中国という競争相手を生んでしまった。
 今年3月、東日本、東海、西日本、九州のJR4社は「国際高速鉄道協会」を設立、安倍のトップセールスで新幹線輸出に乗り出す態勢を整えた。
 ブラジルは、ゼネストが激発し、ブラジル政府は高速鉄道建設を棚上げせざるを得なくなった。
 ベトナムは、10年6月にベトナム国会が、費用がかかりすぎると新幹線建設方針を否決した。
 タイは、中国とのつばぜり合いになっていた。そこに軍事クーデターが起き、高速鉄道計画自体が吹っ飛んだ。
 インドでは、フランス企業と競合している。加えて10年ぶりの政権交代で高速鉄道建設自体が不透明になった。帝国主義間・大国間の争闘戦に日帝は敗退しているのだ。

経営破綻状態続けるJR貨物

 JR貨物は6月16日、夏季手当1・25カ月分という超低額回答を出してきた。
 昨年、JR貨物は基本給の10%削減を画策した。これが動労千葉を先頭とした闘いによって阻まれる中で、JR貨物は一時金の大幅カットという形で人件費大幅削減に踏み込んだ。昨年の夏季手当は1・1カ月分、年末手当は1・3カ月分。国鉄分割・民営化以来、JR貨物は旅客会社と比べても極端な低賃金を労働者に強いてきた。その歴史の中でも、昨年の一時金削減はすさまじいものだった。それを今年も強行してきた。
 基本給は、今春闘でJR貨物はベアゼロを押し通した。貨物のベアゼロはこれで15年連続だ。こうした攻撃により、13年度の人件費総額は前年度と比べて36億円も減少した。13年度のJR貨物の経常利益は34億円だが、それはすべて賃金削減によってひねり出されたのだ。さらにJR貨物は福利厚生の全面剥奪にも手を着けてきた。
 JR貨物が今年3月に打ち出した「中期経営計画2016」は、16年度までに鉄道事業の黒字化を実現するとぶち上げている。国鉄分割・民営化以来、鉄道部門は一貫して赤字だ。国鉄分割・民営化の枠組みのもとで、鉄道部門が黒字になることなどありえない。にもかかわらず「黒字実現」を叫びたてることで、JR貨物は徹底した賃下げと強労働を労働者に強いようとしているのだ。労働者の生存を奪うものになっている。
 87年4月の発足時に1万2千人だった社員数は、今年4月には5990人と半分以下に減らされた。7月に入ってJR貨物は、来年度の新規採用を中止すると発表した。「中期経営計画2016」は16年度に人員を5285人に削減するという。
 こうした人員削減は、すさまじい強労働をもたらしている。事故が起きてダイヤが乱れれば、矛盾は自前の線路を持たないJR貨物に押し付けられる。旅客列車の運行が優先され、貨物列車の運転士は2泊も3泊も足止めされる。今でさえ貨物労働者の労働はきわめて過酷だ。それに加えての大幅賃下げの中で、青年労働者が次々に退職する事態も起きている。
 しかし、不採算だからといって鉄道貨物輸送を全面的に切り捨てることもできない。安倍が集団的自衛権行使の閣議決定を強行し、戦争に突き進んでいる中で、日本帝国主義は軍事輸送手段としての鉄道貨物輸送を手放すわけにはいかない。だからJR貨物は、労働者を犠牲にして会社を延命させようと必死なのだ。
 国鉄分割・民営化の矛盾と戦争の犠牲を集中的に背負わされる貨物労働者の中から、安倍打倒・戦争協力拒否の闘いは必ず起こる。それは、JR総連・日本貨物鉄道労組(日貨労)を解体する時が来たことを意味する。