■News & Review 韓国 鉄道労組は試練を乗り越え勝利に向け突き進む 団体交渉での暫定合意と組合員総投票

月刊『国際労働運動』48頁(0457号02面01)(2014/10/01)


■News & Review 韓国
 鉄道労組は試練を乗り越え勝利に向け突き進む
 団体交渉での暫定合意と組合員総投票

(写真 7月19日に行われた鉄道労組集会。8月ゼネスト方針を打ち出したプラカードには「鉄道労組弾圧中断! 鉄道安全確保!」と書かれている)

暫定合意を否決、委員長などが辞任

 鉄道公社と鉄道労組の団体交渉は8月14日、「2013年賃金協約と補充協約」を暫定合意した。
 しかし合意の内容は、2013年度の賃金凍結と朴槿恵政権の「公共機関正常化」政策の強引な推進に迎合する形での団体協約の福利厚生に関する条項の改悪だ。葬儀費用廃止、選択休暇廃止、保健休暇の無休化など、到底受け入れられる内容ではなかった。
 8月16日、地方本部別に開かれた争議対策委で賛成83名、反対29名、棄権12名で、合意案が可決され、効力を持つようになった。
 そもそも公社側は、昨年12月のKTX分割・民営化反対ストライキに対する報復的大弾圧を労組に加え続ける一方、団体協約悪案の受け入れと賃金凍結などを前提としなければ交渉に応じないと公言していた。屈辱的な交渉の場に鉄道労組を引き出すこと自体が狙いであり、新自由主義政策を推し進める朴槿恵政権の「偽公共機関正常化」攻撃そのものだった。
 これに対しキムミョンハン委員長は「協議しない」としていた態度を変え、「論議するが合意はしない」などと交渉に応じ、最後は「弾圧を減らすという口約束一つ」で裏切り的な妥結に至ったのだ。
 ソウル本部は機関紙『鉄労ソウル』(8月25日付)を「今回の協定は鉄道労働者の権利を徹底的に無視した鉄道公社の、鉄道公社による、鉄道公社のための団体協約だ」の見出しを掲げた特集号とし、全組合員の総決起を呼びかけた。その中でオムギリョン本部長は談話文を掲載し「スト以前、すでに私たちは、支部長以上の解雇を予測したにもかかわらず闘うことができた理由は、私たちの(民営化反対の)闘争がこの上なく正当だからでした。しかしここに来て、弾圧を減らす口約束を一つもらったと言いながら、正当性と自尊心を放り出し、賃金凍結に合意し団体協約を明け渡しました」と厳しく組合本部を批判し、「総会でこのまま多数が同意すれば、私たちの自尊心は壊れ、団体協約の回復は遥か遠くになるだろう。間違ったことは間違ったと表明しなければならないし、きちんとした批判が民主労組を回復する出発点なのです。したがって圧倒的な合意案否決をお願いします。組合員の皆さん。鉄道労働者の団結と闘争の歴史と伝統を想起しましょう」と訴えた。この後、オムギリョン本部長を先頭にソウル本部は現場を巡回し、組合員との意思疎通に奮闘した。
 9月1日~3日、暫定合意を承認するかどうかの組合員総投票が実施された。投票の結果は、投票率87・8%、賛成8318票、反対8482票、賛成率49%(在籍数1万9324人、投票総数1万6961人)という僅差で否決された。
 暫定合意否決によってキムミョンファン委員長と各地方本部長は辞任した。オムギリョンさんは退任のあいさつで、組合員への信頼と新たな決意を語っている(別掲)。
 鉄道公社は、昨年12月に鉄道民営化に反対して進行されたストライキのあと、149人を解雇し、452人を重懲戒処分とし、労組に対する損害賠償・仮差し押さえは数百億㌆に達している。さらに、組合員の強制転出(強制配転)を一方的に行いながら、ストライキ参加者8千余人すべてに対する懲戒を狙っているのだ。特に「1人乗務」と「貨物出発検修移管」に関連する安全環境を準備しなければならないと主張した組合員まで解雇して重懲戒するなど、過去に類例を見ない労働組合弾圧に没頭している。
 鉄道労組は、鉄道民営化攻撃と労組無力化の攻撃の真っただ中で新しい執行部を再構築して粘り強い闘いを続けることになる。長い歳月の民営化阻止闘争を始めとする闘争を貫徹して堅固な団結をつくり上げてきた鉄道労組は必ずや今の試練を乗り越えて力強い闘いを進めていくだろう。

■オムギリョン・ソウル地方本部長の退任あいさつ

 民主労組強化と鉄道労働者の新しい希望を作る道に、白衣従軍します。
 尊敬する組合員の同志の皆さん、私たちは総投票を通して、民主労組が生きていることを確認しました。鉄道労働者の自尊心と気概を確認しました。
 「間違ったことを間違った」と、私たち自ら否決したことで、後退した団結を回復し、より発展させることができる根拠を準備しました。私は、これを希望と呼びます。組合員同志たちが希望をつくりました。現場巡回から組合員同志たちの多くの批判を聞くことができました。同志たちの言葉を一つひとつけっして忘れません。不信任になっても民主労組一筋に、ずっと共に生きます。
 頭を下げて、あいさつします。申し訳ありません。そして、本当にありがとうございます。
 内外に困難な2014年を過ごしていますが、秋夕・名節は、変わりなくやって来ました。セウォル号惨事と弾圧の怒りを忘れることはできませんが、しかし秋夕だけは、家族とともに楽しい名節になることを望みます。その幸福で新しい希望を力強く開いていくことができると信じます。
 組合員同志たちの健康と家族の幸福を祈ります。
 2014年9月5日
 民主労総公共運輸労組連盟
 全国鉄道労働組合ソウル地方本部 オムギリョン

■セウォル号惨事真相究明のため特別法制定を要求する遺族の渾身の闘い

 セウォル号惨事真相究明のための特別法制定を要求するセウォル号惨事遺族を始めとする青瓦台(大統領府)籠城断食闘争は9月6日から10日までの秋夕連休の間も続けられた。
 連休が明けて、新たな局面での闘いが続けられている。
 与党セヌリ党はセウォル号問題は後回しにして、「民生関連」の法案を国会本会議を招集して先に通過させようとしている。
 セヌリ党と新政治民主連合(旧民主党)の交渉の2回の妥協案を家族対策委員会は拒否して、あくまでも捜査権と起訴権を持った調査委員会をつくるための特別法をかちとるために闘い続けている。
 家族たちは捜査権と起訴権を持たない調査委員会はまったく無力であることを国会の国政調査委員会の過程から身をもって知っている。あくまで捜査権と起訴権を持った調査委員会を作って、「聖域のない」真相究明を行い、責任者の処罰と安全な社会を構築することが、子どもたちの死を無駄にしないことだと固く信じている。
 家族たちは秋夕連休の前にも大統領に直接面会して署名を伝達しようと青瓦台に向かったが、警察に阻止された。
 ハンナラ党は朴槿惠政権の中枢と朴槿恵大統領自身が委員会に引き出されることを恐れて、頑として家族らの要求をはねつけている。野党・新政治民主連合は交渉相手にするが、惨事家族たちは交渉相手ではないとして、家族たちとの面談、話し合いも拒否している。

ローソク文化祭

(写真 9月13日、光化門で開かれたローソク集会)

 9月13日には光化門で市民・大学生・教授・教師・ローソク文化祭が開かれた。
 セウォル号遺族のユミンの父キムヨンオ氏が、セウォル号問題は後に回して民生問題をまず解決しようというセヌリ党と青瓦台の主張に反駁した。
 「昨日、キムムソン・セヌリ党代表は大統領を信じてくれと言った。私たちが信じる気持ちが持てるためにどんな姿を見せたのかと聞きたい。大統領が『遺族の気持ちをちゃんと反映する。真相究明に遺恨のないようにする』と約束したが、われわれの特別法に反対ばかりしてどうして徹底した真相究明と再発防止をするというのか分からない。なぜその方法を出せずにわれわれの正当な要求は拒否する。そうしておきながら大統領を信じてくれという話があるか」と批判した。
 キムヨンオ氏は「過ちがあったら過ちを是認して『二度とこのようなことがないようにします』と、そうであれば国民はかえって信頼して支持するだろう。なぜそうしないのか分からない。だから明らかにできない大きな過ちを犯した者がいるのかという考えが起こるのではないでしょうか。だから大統領の7時間に対する異常なうわさが広がるのではないでしょうか?」と指摘した。
 そして、「私が貧乏なために家族にすまないと思うことはたくさんあります。休日にも休まず死ぬほど働いて生涯初めて正規職になって、学資金のために大学に行こうとしなかったユミンを大学に行かせることができるようになり、ユミンの弟ユナも、もう少しちゃんとしてやることができるようになりました。旅行も予約して、少しは楽になったと思っていたのに4・16事故でみんな崩れてしまいました。当然に生きなければならない子どもたちを政府が救助できずに、今やっと成し遂げようとしていた自分の民生と幸福がみんな崩れ去りました。なぜ崩れたのですか? 安全ではなかったからです。ところが安全問題を置いておいて民生問題をやるなんて話になりますか? 徹底して変えなければなりません。この事故が韓国を生まれ変わらせる契機にならなければなりません。それだけがユミンと友達の死を無駄にしない方法です。ところが今、何が変わりましたか」と訴えた。
 1千余名が集まったこの日のローソク集会文化祭の場所の近くでは保守団体会員70~80余名が光化門セウォル号断食籠城を中傷する許し難い「チキン、ピザ、自由時間暴食パフォーマンス」を行っていた。
 この日、文化祭の参加者は「市民の皆さんに捧げる決意文」をとおして「捜査権と起訴権がない特別法では真相究明が不可能だ」として「遺家族に捜査権と起訴権を与えないというセヌリ党の主張は聖域のない真相究明をやらないということ」だと指摘した。

セウォル号家族、特別法制定要求大規模集会予告

 セウォル号家族対策委は9月14日午後2時、国会本庁前で記者会見を開き、来る27日、光化門広場で特別法制定を要求する大規模集会を開くと明らかにした。家族対策委は秋夕連休以後再び特別法制定のために力を結集するために15日以後から「国民懇談会」を行い、要請するすべての地域と部門、大学、小集会を訪ねていくことも明らかにした。
 家族対策委はまた、檀園高校の遺族だけでなく一般人生存者と被害者たちにも政府と市民の関心と支援が必要だと強調した。
 家族対策委は記者会見で「4月16日セウォル号にともに乗船して今も苦痛を受けておられる一般人の生存者、そして貨物被害者、船員被害者の方たちを考える」として「私ども遺族の側には多くの市民の方たちがともにしてくださり慰労してくれて力を出すことができるけれど、その方たちは悲しみと苦痛をとも共に分かつ人がおられるのか、一層さびしくたいへんな秋夕を送っておられるのではないかと心配になる」と述べた。
 家族対策委は特に15日にセウォル号特別法を後にして民生法案をまず処理するための本会議招集を強く要求しているセヌリ党に向かって「安全を根幹にしない民生法案は砂の上の楼閣だ」と批判した。さらに「セヌリ党が強調する民生法案は不動産投資をあおり医療費を暴騰させる心配が強い、医療民営化を行う法案ではないですか?」として「これはバラスト水を抜いたセウォル号のように、大韓民国を危険社会に追いやるもの」だと警告した。
(大森民雄)