●翻訳資料 2014QDR(4年毎の戦力見直し) (中) 2014年3月4日 アメリカ国防省 村上和幸 訳

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月刊『国際労働運動』48頁(0456号04面01)(2014/09/01)


●翻訳資料
 2014QDR(4年毎の戦力見直し) (中)
 2014年3月4日 アメリカ国防省
 村上和幸 訳


■目次
国防長官の書簡(略)
要旨(略)
本文
 はじめに
 第1章 安全保障環境の将来(以上7月号)
 第2章 防衛戦略(以上本号)
 第3章 統合軍のリバランス
 第4章 防衛機関のリバランス
 第5章 歳出強制削減措置レベルの防衛費削減の影響とリスク
 第6章 本QDRについての議長の評価
..........................................

■第2章 防衛戦略

 米国は、下記の四つの中核的国益を守るためリーダーシップを取って、世界的な安全を保障している。
▽米国、米国市民及び米国の同盟国・パートナーの安全。
▽チャンスと繁栄を増進する開放的な経済体制の中での協力、革新的で成長する米国経済。
▽米国及び全世界の普遍的な価値の尊重。
▽米国のリーダーシップによって増進される国際的秩序。これがグローバルな諸課題に対処するためにいっそう強力な協力をとおして、平和・安全及びチャンスを増進する。

 軍は、国家が有する国益を守る諸手段の中の一つにすぎない。わが国は、可能な場合には常に、外交・経済開発・協力と関与、および思想の力によって国益を追求する。だが必要な場合には、米国と同盟国はわれわれの国益と共有財産を守るために、力を行使する意思と能力があることを示してきたのである。この使命にこたえるために、国防省は広い範囲の有事対応をする用意がなければならない。
 米国とその市民の安全を守ることは、死活的な国益である。国家の安全が脅かされたとき、わが国の指導者は、力の行使をする覚悟がなければならない。そして、必要とあらば、単独で力を行使する覚悟がなければならない。わが国の外交が必要なときには常に、信頼性のある軍事力で強化されるように、わが軍をグローバルで、能力が高く、また持続性があるものとして保持していく。
 2014QDRは、本政権の以前の軍事力見直しを進化させたものである。2010QDRは、基本的に戦時の戦略であった。それは、イラクとアフガニスタンにおける短期的勝利のための取り組みと紛争を予防・抑止し、また将来の広い範囲の有事に備えるという長期的な必須事項とのバランスをとったものだった。そしてそれらを、全志願制の軍の堅固さを維持・強化しつつ行うということであった。2012年の国防戦略指針は、21世紀の国防の優先事項を論じ、遂行中の戦争から将来の課題への国防省の移行を開始した。それは同時に、財政管理法で定められた4870億㌦の支出削減を国防省がいかにしてこなしていくかを示している。
 2014QDRは、NSS(国家防衛戦略)にのっとって米国の国益を守り、増進させ、2012国防指針で述べられた防衛の優先事項を具体化したものである。その優先事項とは、平和と安定を維持するためにアジア太平洋へリバランスすること、欧州と中東の安全・安定への強力な関与を維持すること、中東・アフリカを重点として暴力的な過激派とテロリストの脅威に対抗するグローバルなアプローチを持続すること、わが国の戦力が全体として削減されるなかで、テクロノジーの枢要な分野への投資を優先し、守っていくこと、そして、革新的なパートナーシップを形成する取り組みを活発に行い、また枢要な同盟とパートナーシップを強化することである。2014QDRは、この優先順位に基づいて、それを広範な戦略的枠組みに組み込んでいる。米国がアフガニスタンでの移行期を完了しつつある現在、米国の国益を守り、増進させ、米国のリーダーシップを維持し、戦略的チャンスを生かすために、この国防戦略の更新が行われたのである。国防省の防衛戦略は、三つの柱を重視している。
国土を守る。米国への攻撃を抑止し、撃破する能力を維持することが国防省の第一の優先事項である。これは、米国の国益に対する非国家的・国家的脅威が増大しているとき、国土の安全を確保する取り組みを持続していくということである。国土防衛には、米国の文民当局を補助して、上空、沿岸、国境を守り、国内の人災や天災に効果的に対応できるようにすることも含まれる。
グローバルな安全を構築する。世界の情勢を作っていくための米国の尽力は、紛争の抑止・防止、そして、わが国の同盟国・パートナーに、われわれの共通の安全保障について確信させるために不可欠である。世界的な関与は、米国のリーダーシップと影響力の基礎である。
力を投入し、決定的に勝利する。敵を決定的に撃破する力を保持することによって、一つまたはそれ以上の戦域において侵略行為を抑止する米軍の能力は、安定維持のために決定的であり、グローバルなリーダーとしてのわが国の役割の基礎である。また米軍は、人道支援や災害救助のために力を投入する。
 この三つの柱は、互いに補強しあい、相互に依存している。わが国の核抑止力は、米国への核攻撃に対する究極的な防御であり、またその抑止力の拡大によって、核抑止力は、遠く離れた同盟国に対しても、地域的攻撃に対する安全を確信させることに役立っている。また、核抑止力は、核武装した潜在的敵国が通常兵器による攻撃に失敗した場合にその攻撃をエスカレートすることがないように、彼らに伝えることによって、わが国の戦力投入の能力を支えていくものである。グローバルに安全保障を構築することは、同盟国・パートナーを安心させ、パートナーを形成していく力の基礎になるだけでなく、紛争を抑止し、中東やアフリカなどの地域の安定性を増大させることによって国土防衛にも役立つ。
 大統領が要求している2015会計年度の支出レベルで、軍は米国の国益を守り、増進させ、更新された防衛戦略を実現することができる。ただし、いくつかの任務では、リスクのレベルが上がる。大統領の2015予算計画のもとで、国防省は、こうしたリスクを管理することができるが、財政強制削減レベルのカットが2016会計年度に復活してしまうならば、あるいは、予算レベルが不確定的ならば、リスクは大幅に増大するであろう。

米国の防衛戦略の柱

◆国土を守る
 国防省の最も基本的な義務は、米国市民の安全を守ることである。国土はもはや米軍の聖域ではなくなっており、われわれは米国の国土への攻撃の確率が高まっていると見なければならない。ますます増大している多種多様な脅威に対して、われわれは国土防衛の積極的で多層的なアプローチを続けていかねばならない。われわれは、定常的な即応性、任務の遂行を支える抗堪性あるインフラストラクチャー、及び限定的な大陸間弾道弾攻撃に対して国土を守る堅固なミサイル防衛能力を維持していく。
 ミサイル技術の進歩と新たな主体へのミサイルの拡散によって、米軍の国土防衛の困難性は増している。北朝鮮、イランなどの地域的主体による限定的ミサイル攻撃の脅威に対して、われわれは、攻撃を抑止し、あるいは前もって攻撃が起こらないようにして、先手をとらねばならない。そうするためには、ミサイルを探知し、長射程・全高度で国土を途切れなく守る、積極的なミサイル防衛にさらに重点を置かねばならない。この種の脅威を抑止・撃破する能力は、同盟国とパートナーを安心させ、ロシア及び中国との戦略的安定性を維持するものである。
 米国の核戦力の基本的役割は、米国及び同盟国・パートナーへの核攻撃を抑止することである。米国は、核兵器によって非核攻撃を抑止する役割を削減していく。しかし、核兵器を保有する諸国と核不拡散の義務を守らない諸国による脅威に対処するために、核戦力は、引き続き限定的ではあるが決定的な役割を果たしていく。このような潜在的な敵に対して、わが国の核戦力は多くの地域での米国や同盟国への攻撃を抑止し、わが国の拡大された抑止力が信頼性あるものだと保証し、もしも抑止できなかった場合には、効果的な反撃ができることを示すものである。また、米国の核戦力は、米国や同盟国に対する通常攻撃をエスカレートすることができないことを潜在的な敵に説得する役に立つ。
 新START(戦略核兵器削減)条約にのっとって、わが国の戦略核兵器を削減しつつも、米国は、安全・確実・効果的な核戦力を維持し続ける。ロシアと交渉し、さらなる削減を追求する。新たな交渉ラウンドでは、米国は新STARTのレベルより三分の一下回るところまで、配備された戦略核弾頭の上限を削減する用意がある。また、NATOの同盟国と協力して、欧州における米国とロシアの非戦略核兵器の大胆な削減を追求する。
 サイバー攻撃の脅威の頻度と複雑性が増しており、サイバー防衛とサイバー能力を高い優先順位に置き続ける。国防省は、米国の国益を脅かす敵のサイバー作戦を抑止していく。大統領に承認され、国防長官に指令された時は、敵のサイバー作戦を妨害し、跳ね返す。それを行うために、われわれ自身のネットワークの完全性を防衛し、枢要なシステムとネットワークを守り、指令された場合には海外での効果的なサイバー作戦を遂行し、死活的な国益に対する緊迫し破壊的なサイバー攻撃から防衛する。米軍は、米国人の市民的プライバシーと市民的自由を保護する法律、政策、規制を順守していく。そしてまた、国防省は、政策の原則及び戦時国際法に関する法的枠組みにのっとって作戦を行っていく。
 サイバー攻撃の脅威を抑止・撃破するためには、多くの関係者の連合が必要である。それによって、米政府、産業界及び同盟国・パートナーが有する権限、責任、能力を適法に使用することができるのである。われわれは、連邦政府のサイバー安全保障チームを支え、国土安全保障省と協力して枢要なサイバー安全保障インフラを改善し、また、国土安全保障省・連邦捜査局ととともに警察活動を支えていく。国防省は、産業界や国際的パートナーとの協力に邁進し、防衛の産業的基盤を含めて、米国の枢要なインフラを防衛するための情報共有・能力共有を行っていく。
 国土に対するハイテクノロジーの脅威に加えて、ローテクだが、潜在的に致命的になりうる問題に対しても防衛できるようにし続けねばならない。直接的な航空、海上攻撃を抑止し、必要とあらばそれを撃破する態勢でなければならない。また、国内危機が発生した場合、われわれは文民当局に支援を提供していく。激甚な気象・疫病の非常に広範な流行・工場事故などの天災や人災の後に人命救助を行う文民当局を国防省が支援することは、国民に期待されている。
 潜在的な攻撃を止める最も確実な道は、脅威が大きくなることを防止することである。非常に多様で、ますますネットワーク化してきているテロリストの米国へのテロ攻撃を撃破するためには、それと同じくらい多様でネットワーク化された対抗措置が必要である。国防省の国土防衛活動は、わが国の国境でストップしはしない。われわれは、同盟国・パートナーの軍との能力形成やテロリストの策謀の探知・妨害・撃破など、国際的パートナーや他省庁との協力を進めていく。

◆グローバルな安全を構築する
 日常的にプレゼンスを提供し、訓練・演習や他の軍対軍の活動を行っている前方展開した米軍やローテーションで展開した米軍は、グローバルな安全を構築し、国家安全保障上の利益を支えている。これらの目標のために、国防省は、われわれのグローバルな態勢のリバランスを続けている。リバランスするにあたっては、同盟国・パートナーと密接に連携し、基準を確立し、共通の脅威と対決していく。いかなる国も、一国ではグローバル化した問題に対処できないからだ。
 米国の利益は、アジア太平洋地域の平和と安全に不可分に結びついている。国防省は、米国の関与をこの決定的な地域にリバランスしていくという大統領の目標の遂行に尽力している。
 アジア太平洋へのリバランスへの国防省の関与の中心は、オーストラリア、日本、韓国、フィリピン、タイとの安保同盟の近代化と強化の取り組みである。また、われわれは、シンガポール、マレーシア、ベトナムなど、この地域の枢要なパートナーとの防衛関係を深化している。同盟関係とパートナー関係の両方を通じて、われわれは、ミサイル防衛、サイバー安全保障、宇宙の抗堪性、海上安全保障、災害救助などの分野で拡大する地域的諸問題に対処するパートナーの力を強化することに重点を置いている。中国との間では、国防省は、海賊対策、平和維持、人道支援、災害救助などの具体的実践的領域で協力するわれわれの力を改善するように、人民解放軍との持続的・実質的対話を行っている。同時にわれわれは、この関係の競争的側面を、国際的基準と原則にのっとって地域の平和と安定を改善する方向で管理していく。
 責任ある行動を促進し、計算違いや破壊的な地域的対抗や紛争にまで至るエスカレーション的行動を防止するメカニズムを確立することを重視している。これには、三者協議や三者演習の支持、拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)などの諸機構への参加をとおしたASEANのこの地域における中心的な役割の強化などが含まれる。
 アフガニスタンでの戦闘作戦が終わるが、われわれは、対テロ、訓練、助言、アフガニスタン治安部隊への支援を重点とした限られた任務に移行する準備ができている。中央アジア、南アジアの安定化のための取り組みを継続し、アジアへのリバランスを加速するために、インド洋でのわれわれの関与を深めていく。パキスタンの安定と南アジアの平和は、この取り組みにとって決定的である。米国は、インドがこの地域のますます有力な主体となって台頭することを支持し、DTTI(防衛貿易及びテクノロジーイニシアティブ)などをとおして、われわれの戦略的パートナーシップを深化していく。
〔注〕DTTI―12年に取り決めた米印軍事・武器貿易・軍需産業協力協定

 米国は、安定した中東に、深く持続的な利益を有し続けるのであり、そこに関与していく。共通の持続的な利益を基礎にして、中東のパートナーとの戦略的協力の深化を追求していく。湾岸が直面する脅威とチャンスについて同盟国・パートナーと意見交換するための新たなフォーラムあるいは拡張されたフォーラムを作っていく。特にGCC(湾岸協力会議)の多国間フォーラムを通じて、それを行っていく。国防省は、米―GCC間の国防相会議を2014年に行い、米―GCC弾道ミサイル防衛協力を深化することを計画している。
 米国は、世界の他の地域においても積極的であり続ける。米国とともに将来の安全保障上の問題に対処する軍事的能力と政治的意思を有する欧州のパートナーに、深く持続的な利益を有している。NATO同盟へのわが国の関与は堅固であり、米国は同盟国・パートナーと協力して、NATOが近代的で有能な同盟であり続けるようにする。米軍は、NATOの軍事力と相互運用性の強化、反テロ活動、共通の戦略的・作戦的なアクセスの確保、他のグローバルなパートナーシップの構築などの広範な共通目標において、欧州諸国と緊密に協力していく。われわれは、欧州自体での予防、抑止、安心確保に関連した諸活動も遂行しつつ、引き続き、欧州における米軍の態勢を、米軍の世界大的な作戦を支援するものへと適合させていく。
 米国の米大陸への関与は、地域の安定を促進し、維持するためのものである。米国とパートナーを組むことを希望し、また効果的で文民主導の取り組みに資源と時間を投資することを示している諸国に焦点を絞って、国防省は、米国の限られた資源を重点的に投入していく。
 安定と反映を促進するために、米国は、わが国のアフリカ全体へのインパクトを最大にすることを軸にして、枢要なパートナーと積極的に協力していく。多くのアフリカ諸国は、彼らが直面する広範な課題に対して、統治機構の改善、法の支配の強化、効果的な国境管理によって対処する努力をしている。米軍は、反テロ・反海賊の取り組み、パートナーシップ能力の構築――特に平和維持及び危機・有事対応――において、アフリカ諸国の軍と協力している。最近のソマリアとマリにおける関与は、アフリカ諸国や地域組織が欧州と米国のパートナーと協力しており、将来のパートナーシップのモデルになりうるものである。

◆力を投入し、決定的に勝利する
 わが国のグローバルな関与は、必要とあらば危機に対応する基礎となるものである。60年以上、米国は大規模な軍事力を大きな距離を越えて投入する、比類なき力を維持してきた。われわれの戦力投入能力には、米国内の即応性を持ち訓練された部隊、場所から場所へ部隊を迅速に移動させる能力、世界のいかなる場所でも作戦を展開する米軍部隊の能力が含まれる。これらの能力によってわが国は、国益を世界中で増進し、海岸線をはるかに越えた所の事象に影響を与え、紛争地域の安定化に寄与できるのである。
 国防省は全局面作戦〔注〕へと重点をリバランスしているが、優越した軍事力を投入する能力の維持は今後もわが国の安全保障戦略全体の信頼性の核心である。確かに米軍は、もはや大規模で長期的な安定化作戦を遂行できるだけの規模ではなくなっているけれども、われわれは、この10年間のイラク・アフガニスタンの反乱鎮圧作戦と安定化作戦で得た知識・技能を維持していく。将来必要となりうる能力を再生する力を守っていくのである。
〔注〕全局面作戦(フル・スペクトラム・オペレーション)―全軍(陸・海・空・海兵)が共同で、攻撃作戦・防御作戦・安定化作戦(または文民当局・民生支援作戦)の諸要素を、その時々でそれぞれの比重を変えつつも、同時並行で遂行するという作戦概念。

 先進的な戦闘遂行能力を使い、米軍の宇宙・サイバー空間での優位性を覆そうと試みる、ますます高度化していく将来の敵に対して、統合軍〔注〕は、戦闘する備えを保つようにしていく。このような挑戦に反撃するために、米軍は、新たなシステムやインフラに投資するだけでなく、敵の戦略を動揺させる革新的な作戦概念を開発し続けねばならない。米国は、先進航空防衛システムやミサイル防衛システムなどの第五世代戦闘機、長距離打撃力、ISR(諜報・監視・偵察)及び枢要な更新された海軍軍備の配備を始めとする地域防衛システムの近代化を継続していく。また、航空、海上、陸上、宇宙、ミサイル防衛能力の抗堪性を大規模な連携攻撃に対処できるものに改善していく。戦力投入の能力の維持のためには、サイバー空間と宇宙の技術や無人システム・スタンドオフ兵器の優位性の利用、拡張が必要となる。
〔注〕統合軍―米軍は、担当地域別の「統合軍」(陸・海・空・海兵4軍を統合した軍)として北方軍(北米)、中央軍(中東、中央アジア)、アフリカ軍、欧州軍、アジア太平洋軍、南方軍(中南米)、機能別担当の「統合軍」として特殊作戦軍、戦略軍(核兵器、宇宙、サイバー)、輸送軍(戦略輸送)を有する。

 紛争を抑止するために、そして抑止できなかった場合に敵を決定的に撃破するために、われわれは戦力投入能力を維持強化しなければならない。北朝鮮の体制は、米国に反する利益を追求し続けている。この脅威に対して米国は朝鮮半島の平和と安全の維持に関与し、韓国・日本・中国・ロシアと連携し、軍事的・外交的ルートを通じて情勢を注意深く注視している。米軍は、北朝鮮の挑発を抑止し、それから防衛するために韓国軍との協力を続けている。韓国軍は非常に能力が高く、プロフェッショナルな部隊であり、韓国の防衛をリードする力を増している。米国は、韓国軍とともに定期的に訓練をし、相互運用性の増大を目的としたさまざまな二国間・多国間演習に参加している。
 米国は、中東の紛争でも決定的に勝利する力を確保することに尽力している。この5年間、政権の中東における最優先課題は、イランの核兵器獲得を阻止することであり、それを外交、国際的経済的圧力、軍事的選択肢を使う決意を組み合わせた、多国間的、他面的な戦略で追求してきた。2013年11月、P5プラス1〔国連常任理事国+ドイツ〕のイランとの核交渉における共同行動計画は、長期的な包括的解決に向けての第一歩にすぎない。イランの影響力が不安定化の力になっているため、そして広域中東の行方の不確実性のため、米国とその中東のパートナーは、この不安定な地域での攻撃を撃破する能力を持ち続けねばならないのである。核問題での外交が継続しているが、国防省は、あらゆる選択肢を維持し、中距離・長距離ミサイルの開発やテロリストや反乱者への支援などイランの及ぼしているこの地域への影響力に対抗する必要がある。
 戦力投入能力の維持は、国家的脅威のみならず非国家的脅威に対するものとしてもますます決定的になっている。米国は、暴力的な過激派やテロリストの脅威に対して、経済的・外交的・軍事的手段を組み合わせた世界的なアプローチを継続していく。
 暴力的な抗議行動とテロリストの攻撃が海外における米国の市民と権益を危険に陥れかねないのであるから、米国は、米国の施設と人員の安全保障を改善するために尽力している。国防省は、国務省及びホスト国と協力して、米国の海外施設の安全を増大させる積極的な措置をとり、さまざまな有事に対応する即応性を確保していく。

戦力立案と戦力構造(略)

革新と適応の基礎

 防衛戦略の三つの柱の全体をとおして、国防省は、困難な戦略的選択にあたって、創造的、効果的、効率的に目標を達成する道を見出すように尽力する。
 イラクとアフガニスタンでのこれまで12年間の紛争で、米軍は経験を積み、相互運用性を増し、巨大な戦術的・技術的革新が加速された。4軍すべて及び特殊作戦軍が、戦場全体を長時間カバーすることができる新世代のプラットフォームとセンサーを開発し、広範な統合作戦を支援する無人飛行システムの使用を大きく増加させている。諜報能力と諜報処理の改善によって、ターゲット設定の効率化と高価値・捕捉困難ターゲットとの交戦が可能になってきた。
 米軍がイラク・アフガニスタンで学んだ教訓は、将来の課題に対処するうえで計り知れない価値を持ち続けるであろう。最も効果的に戦時の関与に備えるために、各統合軍司令官は、変化している戦略的環境を明確に反映した有事計画に合致させる取り組みを強化していく。たとえ平時にあっても、米軍は常にあらゆる場所に存在するわけにはいかないのであるから、海外プレゼンスと海外活動を強化するために部隊の使用を管理する創造的な新たなプレゼンスの枠組みを追求しているのである。次の例は、国防省が追求している具体的な手立てを示したものである。
▽アジア太平洋地域などの決定的地域に前方展開海軍部隊を増加させる。これによって、レスポンスタイムが短縮され、低い追加コストでプレゼンスの追加を行うことができる。
▽船舶、航空資産、危機対応部隊の新たな組み合わせ。その地域の統合軍の定常的・有事的な必要性に対して、柔軟に、それに適合した支援をすることができるようになる。
▽決定的な世界的・地域的な目標を達成する、それに適合したパッケージを提供するために、アジア太平洋地域を始めとした地域に焦点を合わせた部隊の使用。
▽即応性や同盟国・パートナーとの相互運用性を高めるために、海外の多国間合同訓練施設の使用を最適化する。
▽統合攻撃戦闘機などの先進的性能への国防省の投資を迅速に活用するために、その構想、プレゼンスオプションや支援インフラを開発する。
▽投資を長く使用するために、船舶の使用期間を革新的な方法で延長する。
▽危機の際の戦略的・作戦的な柔軟性を増大させるアクセス協定を追求する。
 国防省の革新と適応の戦略的努力のあとひとつの要素は、同盟国・パートナー、とりわけ湾岸諸国・アジア諸国と彼ら自身の防衛への貢献を増大させるようにする協力である。欧州の場合には、彼ら自身の全欧州的な安全保障貢献を増大させやすくするということである。
 たとえば、米国は、イギリスやオーストラリアとの間で、相互の防衛立案プロセスにおける協働を強化している。イギリスとは、同国の航空母艦能力の更新において協力し、世界の枢要な地域への戦力投入に柔軟な選択肢が得られるようにしている。オーストラリアとは、同国北部での米軍の駐留に向けて協力し、潜水艦システム、兵器、ヘリコプター、戦闘機、輸送機を重点に、相互運用性を強化する協力を強化している。
(つづく)