■国際労働運動の暦 6月30日 ■1949年平事件■ 警察署を労働者が占拠 常磐炭鉱の首切り撤回闘争に呼応 掲示板撤去の攻撃に抗議して突入
月刊『国際労働運動』48頁(0454号06面01)(2014/06/01)
■国際労働運動の暦 6月30日
■1949年平事件■
警察署を労働者が占拠
常磐炭鉱の首切り撤回闘争に呼応
掲示板撤去の攻撃に抗議して突入
(写真 平市署を占拠した群衆【49年6月30日】)
平事件とは、前号で紹介した東京都公安条例の成立に対する都議会闘争(49年5月30日)の1カ月後に起きた、警察署占拠闘争である。事後の弾圧で騒擾罪(騒乱罪)が適用された。
平とは現在の福島県いわき市の中心部である(1966年に平市など5市4町5村が合併していわき市に)。本州一の規模だった常磐炭鉱の町である。1949年、常磐炭鉱にも首切りの嵐が押し寄せた。矢郷炭鉱という中小炭鉱では、賃金遅欠配、組合幹部首切り、人員整理の攻撃に対し4人の共産党員がハンストに入り、続いて隣接する四つの炭鉱が連帯ストに突入した。
▼注目を集めた掲示板
共産党の石城地区委員会が国鉄平駅前に4月から立てていた掲示板には矢郷炭鉱の闘いの報告が連日張り出され、平市の労働者市民の圧倒的な注目を集めていた。5月に米軍政部司令官が平市を視察した際、掲示板の前の人だかりのために交通が渋滞していることに遭遇した。米軍から警察に対して掲示板を撤去させるよう勧告があった。4月から7月20日までの使用許可を得た合法的な掲示板だったが、矢郷炭鉱の闘いが常磐炭鉱全体に拡大すること、また国鉄や東芝の大量首切りに反対する闘いに結びつくことを恐れた支配階級は、掲示板撤去の攻撃を加えてきた。警察は、6月30日までに撤去することを要求した。共産党は「移転先が見つかったら撤去する」と約束、平和的解決を図った。6月30日、日本共産党石城地区委員会は、在日朝鮮人連盟(朝連)の支援も受け、朝鮮人を含む約700人の労働者を動員、平市署(現在のいわき中央警察署)の中で掲示板撤去に関する集団交渉に入ろうとした。だが、占領軍命令に後押しされた警察は、共産党のこのような要求を一蹴し、代表団と平市署長との交渉を傍聴しようとした労働者を玄関先で阻止線を張って排除しようとした。ここで労働者の怒りが爆発、阻止線は一瞬にして打ち破られ、数百人の労働者がどっと署内になだれ込んだ。留置場が襲われ、留置人は解放され、看守は監房に押し込まれた。警察署の玄関は赤旗が翻り、占拠した労働者は高揚感の中でインターナショナルを歌った。
だが、共産党指導部には、署内を占拠したものの、その後のことについて何か目算や展望があったわけではなかった。自然発生的な行動だったため、8時間占拠した後、解散し引き揚げた。
国家権力は、あってはならないことが起こったと、顔面蒼白、周章狼狽した。戦後革命の嵐の中で、治安弾圧の枢要の暴力装置であるはずの警察署がデモ隊にいともあっさりと突入され、占拠されたのであるから、明白な敗北であり、失点である。彼らは、態勢を立て直し、翌7月1日未明から、「建造物侵入」「公安条例違反」の名目で片っ端から逮捕を開始した。4日には容疑を騒擾罪に切り換え、全市を戒厳令状態において、逮捕を拡大した。
裁判は、一審は騒擾罪は成立せずとしたが、仙台高裁は一転、騒擾罪成立を認め、10人に実刑、141人を有罪とした。
▼史実を消し去る日共
平事件は、当時の国鉄、炭鉱を始め大量解雇攻撃に対して、労働者階級人民の怒りがいかに激しく渦巻いていたかを示した。同時に、日本共産党がこの革命的情勢においてプロレタリア革命の路線も方針もまったく持っていなかったこと、資本・権力との非和解的対決を恐れ、職場からの団結に依拠してストライキを組織していくことにまったく後ろ向きであったことを示している。今日、日共は、その党史から平事件などの実力闘争の歴史を完全に消し去っている。なかったことにしているのだ。戦後革命期から50年代初頭の「火炎瓶闘争」の時期の彼らの総括は、「2度と権力と実力で立ち向かうようなことはしない」ということである。そうして彼らは革命を推進する側ではなく圧殺する側に回ることを権力に誓ったのだ。
●1949年平事件関連日誌
4.13 日本共産党福島県石城地区委員会、平市警察に、宣伝用の掲示板を設置するために道路一時使用許可申請
6. 8 矢郷炭鉱資本が解雇拒否の70人に鉱業所内立ち入り禁止仮処分申請、9日執行
6.13 矢郷炭鉱の共産党員4人がハンスト
6.16 矢郷炭鉱に隣接する4炭鉱が連帯スト
6.25 平市警察署長が掲示板撤去を通告
6.30 平市署に群衆が押し寄せ、8時間にわたり署内を占拠
7. 1 国鉄9万5000人整理通告開始
7. 1 福島県警察隊本部が警官700人を動員し家宅侵入の容疑などで検挙開始
7. 3 アカハタ掲示板を移動
7. 4 最高検察庁、平事件の参加者全員に騒擾罪適用を決定。特別捜査本部設置
7. 6 下山国鉄総裁の死体発見(下山事件)
7.15 三鷹駅で無人電車暴走(三鷹事件)
8.17 東北本線で列車脱線転覆(松川事件)
9. 1 福島地裁で平事件初公判