●特集 復帰42年の5・15沖縄闘争 解雇撤回と国際連帯で安保・沖縄闘争の新時代を Ⅰ アジア重視戦略のQDR――辺野古新基地阻止で対決を

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月刊『国際労働運動』48頁(0453号03面01)(2014/05/01)


■特集 復帰42年の5・15沖縄闘争
 解雇撤回と国際連帯で安保・沖縄闘争の新時代を Ⅰ
 アジア重視戦略のQDR――辺野古新基地阻止で対決を


 帝国主義とスターリン主義の戦後世界体制は最後的に崩壊するに至っている。米帝は基軸帝国主義として没落し、世界は大恐慌下の大争闘戦と戦争の時代に突入している。
新自由主義が破綻し、資本主義は完全に終わっているのだ。解雇撤回と国際連帯で安保・沖縄闘争の新時代を築こう。
 第Ⅰ章は、米帝のQDR2014の核心が辺野古新基地建設であり、これと徹底的に対決しようと訴えている。
 第Ⅱ章は、米帝の世界支配の軍事拠点=沖縄の階級闘争は一貫して「基地の島」に対する国際連帯闘争であり、それはスターリン主義と闘い、反スターリン主義・革命的共産主義運動とその党のための闘いだったと総括している。
 第Ⅲ章は、72年ペテン的「返還」=5・15体制は新自由主義攻撃であり、基地労働者など沖縄労働運動破壊攻撃だった。民営化・外注化・非正規職化の攻撃があり、始まった雇い止め撤回闘争は沖縄闘争の新たな挑戦と提起している。

(写真 憲法改悪を阻止するぞ! 安倍発言を許さないぞ!――沖縄県民大会に3500人が集まった【2013年5月19日 宜野湾海浜公園野外劇場】)


 米帝・国防総省は3月4日、中長期的な軍事戦略の基本方針となる4年ごとの「国防計画見直し」(QDR2014)を発表した。米財政の強制削減による15会計年度の国防予算は4956億㌦(約50兆円)で、前年度比で5・9%の削減となる。
 しかしこのことは米帝の「アジア重視戦略」の後退をけっして意味していない。それどころか今回のQDRは2012年の新軍事戦略を継承している。QDRの随所で「新国防戦略の要請を反映させる」「新国防戦略の実行」などを散りばめている。そしてこのQDRが「新国防戦略で示された21世紀の国防優先事項を体現している」ことを改めて強調している。
 ここで言われている「国防優先事項」こそアジア・太平洋地域のリバランス(再均衡)だとしている。新軍事戦略こそまさに2012年の沖縄へのオスプレイ配備の強行であり、辺野古新基地建設を推進することにあった。これが新軍事戦略の核心部分をなしている。QDRの中でもけっして譲ることのできない「優先事項」だ。
 米帝オバマ政権は日米安保政策とTPP(環太平洋経済連携協定)で対日争闘戦を徹底的に貫いて、アジア・太平洋地域の軍事的制圧と勢力圏化を狙い、北朝鮮への侵略戦争と中国スターリン主義の転覆をやろうとしている。今回のQDRこそ米帝の意図を軍事面から露骨に示すものだ。
 そして沖縄の辺野古新基地建設の攻撃は、この2014年版QDRの核心を貫く新軍事戦略の柱としてあることは何ら変わりはない。むしろその位置づけは決定的に高まっているということだ。
 韓国・民主労総を先頭とした韓国労働者階級は2・25国民ゼネストに立ち上がっている。アメリカでも、ヨーロッパでも労働者階級の闘いが始まっている。新自由主義と闘う全世界の労働者階級の力で勝利する時代が到来している。この力で新自由主義の最たる攻撃である辺野古新基地建設にとどめを刺そう。

①アジア太平洋地域へのリバランス堅持

 世界大恐慌の中で進む米帝の没落と財政危機はもはや隠しようもない事実だ。予算削減に伴う兵力削減に対し国防長官ヘーゲルは、「米軍は世界の安全保障、ひいては自国の安全も維持できなくなる」と叫んでいる。帝国主義としての末期的な危機だ。
 QDRの中でも、空軍は「80機の航空機削減、統合打撃戦闘機の購入遅延」などが強いられ、海軍でも16年以降の強制削減の実施によって「空母ジョージ・ワシントンの退役が早まる可能性がある」として警戒感をあらわにしている。さらに空母の11隻体制から10隻へ縮減せざるを得ないことを示唆している。
 陸軍は現役兵士、州兵、予備役もさらにそれぞれ削減される。危機対応戦力としての海兵隊も、現役兵18万2000人は17万5000人に削減される。それに伴い米東部に司令部を置く第2海兵遠征軍を廃止するとしているが、沖縄の海兵隊については維持されるとしている。
 しかしこの米財政の「不透明な状況」にもかかわらず、中国との対峙・対決を見据えて「東アジアに強固な足場を維持する」ことを明記している。
 このように米軍の軍事力が縮小することによって戦争の危機や沖縄の負担軽減が進行するなどということはあり得ない。逆に危機であれば、さらに米帝のアジア太平洋地域や中東などの紛争地での軍事力の行使は凶暴化していくということだ。中国の「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」戦略や北朝鮮の核・ミサイル開発に備えた新たな戦略として出されているのである。
 QDRでは陸軍現役兵力を57万人から44万~47万人に削減するものの、その核心は、アジア太平洋地域へのリバラス(再均衡)を堅持し、在日米海軍の強化と太平洋での米艦船の割合を50%から60%に引き上げ、それをアジア太平洋地域に配置するというものだ。
 北朝鮮のミサイル監視では日本に2基目のレーダーを設置するなどの「アジア重視」の立場で貫かれている。さらに最新鋭ステルス戦闘機F35や新たなステルス長距離爆撃機の導入の方針も盛り込まれている。
 今回のQDRの核心は、海空軍の戦力強化とそれに基づくアジア太平洋地域での徹底した軍事的制圧をめざすという凶暴な軍事戦略だ。

(写真  辺野古新基地の予定地)

②反米極右安倍政権に対する米帝の警戒感

 今回のQDRでもうひとつ重要なのは、日米同盟がリバランス(再均衡)の柱として位置づけられていることである。
 予算の強制削減の中で、もはや米帝の単独の力で「国防戦略を遂行する能力」が失われてきていることから「同盟国との関係・協調」に活路を求めざるを得ないということがある。しかし問題はそれほど単純ではない。
 そこには、あくまでも米帝のコントロールのもとでの日帝の動員であり、そこから踏み外すことなど絶対に許さないというものだ。日帝・安倍政権に対する激しい警戒感だ。安倍の靖国神社参拝の強行に対し、オバマ政権は「失望」を表明したが、しかし安倍は「確信犯」的にやっている。安倍の靖国参拝も、「戦後レジームからの脱却」も、そしてこの間の日中間の一触即発的な戦争の危機に対しても、オバマ政権は日帝・安倍政権に対する危機感を募らせている。
 安倍の言動こそ、アメリカ基軸の戦後世界体制を根底から覆そうとするものであり、米帝にとってはとうてい容認できるものではない。
 まさにQDRのリバランス(再均衡)とは、米帝によるアジア・太平洋地域の軍事的制圧にあるが、何よりも日帝の軍事的台頭を抑え込もうとすることが根底に据えられている。日米同盟は決定的に揺らいでいる。この日米同盟の矛盾の爆発が、日米双方から辺野古新基地建設に向けての攻撃に拍車をかけている。
 日米争闘戦のこの新たな段階における激突情勢の中で、「在日米海軍の強化」として辺野古新基地建設が最大の焦点となっている。
 しかし最も重要なことは日米対立と争闘戦の核心はそこに労働者階級の闘いがあることだ。そして争闘戦の激化とともに帝国主義(新自由主義)そのものを打倒する全世界的な労働者階級の闘いが発展し始めていることにある。

③労働組合をめぐる闘いが一切を決する

 辺野古新基地建設をめぐる攻防は、昨年12月の仲井真県知事の埋め立て申請承認という局面の中で大きく動き始めた。辺野古新基地建設をめぐる闘いこそ沖縄労働者人民の真価をかけた闘いとなろうとしている。まさに激突情勢が切り開かれた。
 日帝の歴代政権(1972年5・15「復帰」以来の)は、今日に至るまで沖縄労働者階級を階級的に何ひとつ制圧できないままで来た。
 労働者人民は闘いの大きな節目には、階級の大地から自らの階級的力を甦らせ立ち上がってきた。いったんは組み伏せられたかのように見えても、必ずその階級としての姿を闘いの中に登場させてきた。それが「復帰」42年目を迎える沖縄労働者人民の闘いの歴史であった。そしてこのことが日帝や米帝のノド元を締め上げているのだ。
 安倍政権が強行した昨年「4・28主権回復の日」には、アメリカの軍政支配のもとでも出来なかった労働者の階級的支配と破綻の歴史を、対米・対抗的に独自の力でやってみせる狙いが込められていた。それを辺野古新基地建設強行でやろうとしている。だが辺野古新基地建設の攻撃は、労働者階級にとっては、労働者の存在と闘い、そして労働組合をめぐる闘いだ。
 だからこれは安倍にとって破綻的でしかない。今年1月に行われた名護市長選とその結果が示したものは、「オール沖縄」の力などではなく、名護(沖縄)の労働者の階級的力だった。
 沖縄の労働者人民の総意こそ〝基地もいらない、振興策もいらない〟というものであった。そもそも軍事基地との引き替えの「振興策」は、沖縄の青年労働者にまともな「働く場所」をもたらすのではなく、外注化と青年労働者の非正規職化しかもたらさなかった。軍事基地と非正規職で生きられない現実を強いるだけのものでしかなかった。
 名護(沖縄)の労働者人民は、辺野古新基地建設を拒否するとともに、軍事基地によって生み出される非正規職という生きられない現実を拒否したのだ。
 当選した稲嶺名護市長も県内の自治体に先駆けて窓口業務の民間委託によって、労働組合の破壊を徹底的に行ってきた。「オール沖縄」を盾にして、労働組合の体制内指導部による民営化と非正規職化を容認するという屈服を取り付け、労働組合を破壊してきた張本人なのだ。新自由主義の推進という安倍とまったく同じ立場だ。
 このことを見抜き、沖縄の労働者の自己解放的な決起が始まっている。外注化・非正規職化と対決し、闘う労働組合を職場に取り戻して闘うことが「基地撤去」「辺野古新基地建設阻止」の唯一の勝利の道だ。

④国際連帯で新自由主義と闘う沖縄闘争を!

(写真 辺野古の浜で全国の労働者・学生が新基地建設阻止を誓う【13年5月20日】)

 新自由主義攻撃の最も中心的な柱となるのは、民営化・外注化と非正規職化による労働者の団結破壊と労働組合の体制内への取り込みにある。
 「復帰」以降の沖縄の労働者への攻撃は「基地と振興策」という形をとった新自由主義攻撃そのものであった。そして沖縄の米軍基地は、日米同盟(日米安保)のもとでアジア太平洋から中東まで展開する出撃・兵站基地として全世界の労働者階級を分断支配する戦略的な位置に置かれている。沖縄の膨大な労働者(青年労働者)が非正規職に突き落とされている中で、労働者の共同性と階級性を奪い返していくことは「米軍基地撤去」と同じ闘いだ。
 全世界の労働者が民営化・外注化と非正規職化にさらされている。その中で韓国の労働者は民主労総を先頭に民営化攻撃に絶対反対を貫いて闘っている。「非正規職撤廃!」は全世界の労働者の共通のスローガンとなっている。
 動労千葉が切り開いた国鉄1047名解雇撤回、民営化・外注化阻止、非正規職撤廃の闘いは全世界の労働者の闘いの中心軸となっている。新自由主義との闘いは国際連帯闘争として発展していくのだ。
 沖縄の労働者階級と全世界の労働者階級の国際連帯で沖縄の「基地の島」という現実を変えよう!
 すでに闘いは始まっている。日本IBM・ビジネスサービス労働組合(IJBS労働組合)の青年労働者(組合書記長)への雇い止め=解雇攻撃に対し猛然と反撃の闘いが開始されている。
 「基地の島」から「国際連帯の島」へ! 基地労働者の闘いとともに青年労働者の職場生産点からの解雇撤回闘争を両輪に、新自由主義と闘う労働者の国際連帯で、辺野古への新基地建設を阻止しよう!
 「復帰」42年の沖縄5・15闘争を闘おう!