特集 中国は大動乱情勢に突入バブル経済の崩壊が切迫激発する労働者階級の闘い

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月刊『国際労働運動』48頁(0449号03面01)(2014/01/01)


特集 中国は大動乱情勢に突入
バブル経済の崩壊が切迫
激発する労働者階級の闘い

(写真 ストライキを闘う南昌駅の貨物労働者)

 はじめに

 新自由主義の破産としての世界大恐慌の深化、大失業と戦争と革命の時代の始まり、帝国主義間・大国間の争闘戦の激化、米帝の対中対峙対決の下で、中国スターリン主義は政治的にも経済的にも破局を深め、崩壊過程に突入している。リストラと低賃金、労働強化、異常な格差の拡大などに対する中国の労働者階級の闘いが激発し、中国はまさに大動乱情勢、階級的大激動情勢に突入している。

第1章は、11月に開催された中国共産党第18期中央委員会第三回全体会議をもとに中国スターリン主義の現在の危機を分析し、金融恐慌や政治危機の深さを見ていきたい。

第2章では、スターリン主義体制の下で吹き荒れる新自由主義的な政策の歴史的経緯と中身を検討し、中国における外注化と非正規職化の現状を解き明かしたい。

第3章では、「中国鉄道の分割・民営化」に焦点を当て、労働者階級への階級的攻撃の中身を鮮明にしたい。

 Ⅰ 政治的経済的に破局深める――怒りの中の第18期三中全会

 1 習近平政権と対決し激発するストライキ

 08年のリーマン・ショック以降の世界大恐慌に「息継ぎ」を与えたとされる中国経済は、すさまじい人為的なバブル経済であり、スターリン主義体制下での新自由主義的な政策の展開の結果である。その積もりに積もった矛盾が今、バブルの崩壊、金融恐慌として爆発しようとしている。
 そしてこのバブル経済と新自由主義的な政策の犠牲にされ、リストラと低賃金、労働強化、異常な格差の拡大など、その矛盾の一切を押しつけられてきた中国の労働者階級、とりわけ派遣労働者をはじめとする非正規職の労働者の闘いが、中国スターリン主義を激しく揺さぶっている。
 こうした状況の中で、中国鉄道の分割・民営化が強行され、今後の中国での「改革・開放」政策、新たな民営化政策、新自由主義的政策の突破口になろうとしている。
 11月9日から12日にかけて北京で開催された中国共産党第18期中央委員会第三回全体会議(第18期三中全会)は、中国スターリン主義の経済危機、政治危機の深まりの中で、新たな新自由主義的政策、民営化政策を決定し、中国鉄道の分割・民営化を切り口に、国有企業の民営化政策を新たな規模で推進し、体制の延命を図ろうとしている。

(写真 警察隊と対峙する凌進電子有限会社の労働者【11月8日 深せん】)
(写真 武鳴県政府庁舎を包囲し抗議する広西省武鳴県頼坡村の村民【11月9日】)
(写真 浙江省杭州市蕭山区で賃上げを求める労働者が道路を封鎖、逮捕者も出る【11月12日】)
 嵐のようなストライキ

 この会議を前後しても、労働者階級の嵐のようなストライキが中国では爆発している。11月に入ってからだけでも、5日から6日かけて広東省東莞市での日系南部プラスチック東莞会社の蘇州工場で工場の売却に抗議してストライキが闘われ、また同じ両日四川省内江市威遠県で炭鉱労働者が労働条件の改善を求めてデモに立っている。
 会議前日の8日には、広東省深せん市宝安区凌進電子有限会社で、やはり工場の移転に抗議して6日からストライキを闘っていた数百人の労働者に対して警察隊が暴行をふるい2人が意識を失い、7人が逮捕される事件が起きた。
 会議開催中の11日には、青海省格爾木市でタクシー労働者がストライキを決行し、12日には、浙江省杭州市蕭山区で賃上げを求める労働者が道路を封鎖、逮捕者が出た。これらはほんの一例に過ぎず、枚挙に暇がない。
 さらに新自由主義的政策の展開、バブル経済の下で膨大な農民の農地や労働者の宅地などの強制収用が行われ、それが労働者・農民の怒りに火をつけている。
 会議開催日の9日には、副県長が商人と結託して山を爆破し鉱山を開き、その結果空気や水が汚染されていることに抗議して、広西省武鳴県頼坡村の1千人以上の村民が、県政府に抗議し、警察に弾圧され大量の逮捕者が出る事件が起きている。
 このような労働者や農民の抗議に対して、習近平政権が行っていることは、徹底した弾圧である。労働運動活動家が次々と逮捕され、迪威信家具用品深せん有限会社のストライキを指導したとされる農民工・呉貴軍氏は160日を超える拘留をされ起訴されようとしている。
 上訴のために北京を訪れた農民たちは、上訴を聞いてもらえるどころか門前払いで、場合によっては逮捕されてしまう。ネット規制も強化され、今年8月より新浪微波(中国版ツィッターの代表的存在)上での10万3千件以上のアカウントが閉鎖された。さらに「デマ」を書き込んだとして労働者や学生、マスコミ関係者が弾圧される事件が起きている。

(写真 山西省太源市での山西省共産党委員会ビル爆破事件【11月6日】)
 スターリン主義への怒り

 10月28日の天安門前での爆発事件、11月6日の山西省太原市での山西省共産党委員会ビル前での爆発事件は、中国スターリン主義とその新自由主義的政策への労働者階級人民の怒りとして爆発している。
 中国スターリン主義は、「背後にテロ組織が存在している」と称して、とりわけウイグル民族への民族抑圧を意図的にあおっているが、背後に組織があろうがなかろうが、これらの事件は労働者農民の中国スターリン主義の罪業への真正面からの弾劾であり、倒されるべきは中国スターリン主義であることを全世界に示している。
 中国はまさに大動乱情勢、階級的大激動情勢に突入している。こうした中で、青年労働者を先頭とした新たな労働運動と闘いも中国で始まっている。 第2節 2 金融危機の深まり、バブル経済崩壊過程への突入
 米リーマン・ショックをきっかけとした世界大恐慌の突入に対して、中国政府は恐慌乗り切りのために4兆元(56兆円)を投入する大型景気刺激対策をとった。この結果、中国経済は、短期間で「回復」し、その「回復」した中国経済に依拠することで米帝など帝国主義諸国もなんとか延命することができた。
 しかしこの中国経済の「回復」とは、実態はすさまじいバブル経済であり、次の破局を用意するものでしかなかった。
 米リーマン・ショックは、米住宅バブルの崩壊とサブプライム(低所得者向け)ローンの焦げつきによる金融商品の暴落が引き金を引いたが、それと同じような現実が今、中国バブル経済の中で再現されようとしている。理財商品の暴落だ。

 膨大な借金抱える地方政府

 すでに各地の地方政府は、膨大な借金を抱えている。バブル経済を続けるための投資が、地方政府を破局に追い込んでいる。しかし、投資をやめれば一挙に経済が崩壊してしまうため、地方政府は必死でさらに投資をし続け、バブル経済を維持しなければならない。
 ここで前提的に確認しておきたいことは、中国の地方政府は独自に債権を発行することを禁止されているということである。資金を集めるために、地方債を発行することができないのだ。でも、開発には資金がいる。そこで考えだされたのが、地方政府が資金を集めるために「平台」と呼ばれる「部署」をつくり、それが民間の金融業者などを組織して、彼らに債権を発行させるやり方であった。この地方政府の代わりに資金を集める金融業者などがいわゆるシャドーバンキングである。

 サブプライムローンそっくりな理財商品

 彼らは地方政府が進める「開発プロジェクト」を債券化して細分し、例えば年利10%の高利回りの理財商品として発行し、主として銀行などを通じて富裕層に売買させる。その売り上げは、シャドーバンキングを通じて最後は地方政府に集められ、開発計画に投資されるのである。こうした手順による無数の開発を重ねて、バブル経済が継続するわけである。
 中国の理財商品は、米のサブプライムローンと酷似している。
 だが「開発プロジェクト」の多くは、当初予想されていたような利益を生み出さない。中国には乱開発の結果建てられた、人の住まない巨大都市(ゴーストタウン)や誰も行かない巨大遊園地、テーマパークがあちこちにある。その象徴が東莞市の「世界最大の商店街」である。その結果、地方政府はますます借金を抱えることになるし、銀行も不良債権を抱えることになる。高利回りの理財商品は、完全に支払い不能に陥るか、その前にどこかで信用を喪失し、紙くずと化すのは目に見えている。
 中国社会科学院による10月9日の発表によれば、中国経済におけるシャドーバンキングの規模は、すでに20・5兆元(328兆円)となっており、これは中国のGDPの40%、融資総額の16%に達している。日本のノンバンクのバブル崩壊、アメリカのサブプライムローンの崩壊は、それぞれの融資総額がGDPの1・5~1・7倍に達した段階で起きているが、中国はすでに融資総額がGDPの2・5倍に達しているという。
 つまり中国ではいつバブルが崩壊してもおかしくない状況に来ているのである。理財商品が引き金となって、中国で金融恐慌が爆発し、世界に波及する事態が爆発しようとしている。

 崩壊寸前のバブル経済

 中国中央政府、そして地方政府もこの危機を逃れようと必死である。
 中国はスターリン主義体制であり、すべての土地が国有である(注1)。地方政府が膨大な借金を抱えても、次々と「乱開発」を強行して経済にてこ入れするとともに、それによって土地の資産価値を上げることで「借金の担保」を地方政府は確保し、崩壊を逃れようとしている。
 結局はバブル経済を維持し、より一層推進することで「当面の危機」を乗り切ること、しかも財政が崩壊すればするほど「土地の資産価値を上げる」ためにも、それを積極的に続けるしかない。
 だがその結果、地方政府はますます経済破綻に陥り借金を増やして危機を深めていく。いくら体制が違うとはいえ、こんなやり方がいつまでも続くわけがない。ここに今の中国経済の破局的な事態が示されている。
 リーマン・ショックの危機から世界の帝国主義経済を延命させた中国経済であるが、その結果、今度は中国発の「第2のリーマン・ショック」が引き起こされようとしており、世界経済を本格的な大恐慌にたたきこもうとしている。
 中国経済は、とりわけリーマン・ショック以降、今や世界帝国主義経済体制にますます組み込まれ、巨大な影響力を持っている。金融恐慌―バブル経済の崩壊が起きれば、世界経済は破局的事態に至るのは必至である。世界史的事件になる。

(注1)スターリン主義は、一国社会主義の立場から土地を「国有」とする。これは本来の世界革命を通じて成立する共産主義社会における「社会有」とはまったく違うものである。中国スターリン主義における土地の「国有」はスターリン主義の労働者・農民支配にとって重要な役割を果たし、現在では中国のバブル経済の維持に決定的な役割を果たしているのである。

 3 政治危機の深まりとスターリン主義支配体制の崩壊

 すさまじいインフレ

 こうした中国スターリン主義のとめどもないバブル経済政策は、中国の労働者と農民の生活を根底から破壊し、その怒りを爆発させている。
 第一に、すさまじいインフレである。こうした膨大な資金の投入、そして経済のバブル化は、当然にも激しいインフレによる物価高を引き起こす。住宅価格の上昇は止まらず、物価水準が4~5倍も違うのに、中国の北京の土地の値段は、日本の東京都と同じだと言われる。もちろん一般の労働者は家など買えない。中国国家統計局が10月14日に発表した9月の消費者物価指数は前年同月比で3・1%上昇した。このすさまじいインフレは、当然にも労働者や農民の家計を直撃し、その生活を破壊している。

 農地・住居の強奪

 第二に、こうしたバブル経済による「乱開発」は、農民や労働者からの農地や住居の強奪である。中国には個人の土地所有権がない。すべて国家の土地である。したがって、政府は法的には簡単に土地を強制収用できる。ある日突然政府と企業の関係者が来て、住宅を破壊し、土地を囲い込み、抵抗する農民や労働者に暴力をふるって土地も家屋も強制収用する。このタダ同然で得た土地で、開発業者は事業を行うのである。こういうことが中国では連日あちこちで発生し、負傷者や死者まで出ている。
 だが法律がどうであろうと、こんな暴挙が許されて良いはずがない。このような土地の強奪は、農民や労働者の怨嗟の的となって闘いを呼び起こしており、工場における労働者のストライキの爆発とともに、中国スターリン主義を痛打している。
 さらに、地方政府が土地の強制収用を許可するのだが、それは開発業者のためにやるのであり、当然にもそこには腐敗した癒着が生まれ、膨大な賄賂が業者から政府関係者に渡ることになる。この腐敗に対しても、労働者、農民の怒りが爆発しているのである。
 相次ぐ労働者のストライキや暴動、土地強奪への怒りの闘いは、「開発・開放」政策で延命しようとしている中国スターリン主義の支配と真っ向から対決し、それを激しく揺さぶり、政治危機を生み出している。

(写真 10月24日、江西省防城港市白龍村での強制収用。執行者の暴力で村民3人が負傷した)
(写真 バブル崩壊でゴーストタウンと化した広東省東莞市内の「世界最大の商店街」)
 政治危機の象徴 薄煕来事件の意味

 中国が抱える政治危機を象徴的に示したのが薄煕来元重慶市書記の事件である。
 重慶市元書記薄煕来は、毛沢東を気取った独裁的な政治スタイルをとり、「紅歌運動」などの「(スターリン主義)左派」的な大衆組織化を展開した。彼はこうした政治で労働者など底辺層の人々の「改革・開放」政策への批判や不満を組織し、その力を背景に最高権力者集団である政治局常務委員入りを狙っていた。
 実際に、毛沢東派をはじめ、現政権、「改革・開放政策」に不満を持つ層が薄煕来を支持するという状況も生まれている。だが薄煕来は、一方で積極的に重慶での「開発」政策を進めており、なんら「改革・開放」を否定するものではなかった。このような毛沢東的な政治スタイルは、あくまでも彼の政治的野心のためであった。
 だが中央政府は、こうした形で労働者人民の中央への批判や不満が大規模に組織されることは、いかに薄煕来の本音ではなく野心のためであるにしても、絶対に許せないことであった。その運動自身が薄煕来自身の思惑をも超えて自己展開し、スターリン主義の一派としての毛沢東主義をも乗り越える、中国スターリン主義を真に打倒するような思想や運動が生み出されかねない危険を本能的にかぎとった。
 こうして薄煕来の直属の部下であった王立軍の米大使館逃げ込み事件をきっかけにして薄煕来は昨年4月10日に失脚し、収賄罪、横領罪、職権乱用罪で起訴され、今年9月21日に山東省済南市の裁判所で無期懲役を宣告されたのである。
 この事件が意味するものは、今の中国に現政府に対する広範な労働者階級の怒りが存在していること、それが中国スターリン主義を恐怖させており、それがスターリン主義内部での「路線対立」などの外観をとって、中国共産党指導部間の対立と分裂を激しく促進しているということである。

(写真 天安門前での爆破事件【10月28日】)
 相次ぐチベットやウイグルの民族暴動

 さらにチベットやウイグルでの民族解放闘争の激化である。チベットでの焼身自殺による抗議、一方でウイグル自治区での襲撃事件や10月28日の天安門前での車爆破事件など、とどまるところを知らない。
 中国スターリン主義は現在、新自由主義的な政策の一環として、諸民族に対してその自治区などでバブル経済維持のための土地強奪を次々と暴力的に行い、住居を奪い、農業や牧畜などの生業を破壊している。
 さらには言語をも奪い、同化政策を貫こうとしている。また諸民族で都市に働きに出た者は差別され、低賃金で過酷な労働をさせられ、農民工としても最低の状況に置かれている。こうした新自由主義的な現実への怒りが爆発しているのだ。それが一方で中国スターリン主義の政治危機を深化させている。
 問われているのは、中国スターリン主義の下で吹き荒れている新自由主義的な政策の展開に対して、漢民族を含めた諸民族の労働者階級の階級的な団結の形成であり、その階級的な闘いで中国スターリン主義を打倒することである。この民族の壁を越えた労働者階級の階級的な団結と闘いこそ、中国スターリン主義が最も恐れているものである。

 4 中国スターリン主義の危機を露呈した第18期三中全会

 こうした経済危機、政治危機の中で、中国スターリン主義は、11月9日から12日まで、北京で中国共産党第18期中央委員会第三回全体会議(「第18期三中全会」)を開催した。〝今後の改革開放政策を決定する重要会議〟とされたが、この会議は労働者の嵐のような無数のストライキに包まれ、農民の抗議、上訴、そして爆弾事件までもたたきつけられた、まさに労働者階級人民の怒りの中で開催された会議となった。
 この会議は、「改革・開放」政策の破綻と、その乗り切りのための新たな新自由主義的な政策の導入を決定した会議となった。

 鉄道の分割・民営化 上海自由貿易特区設置

 その実際の政策上の柱となるものが、中国鉄道の分割・民営化であり、もうひとつは上海自由貿易区設置である。中国鉄道の分割・民営化については後で取り上げるが、ここではその前提として、まず会議の中身について分析しておきたい。
▼「コミュニケ」と「決定」
 12日の会議終了直後に「公報」(以下「コミュニケ」と略)、および15日に「中国共産党中央の改革の全面深化に関するいくつかの重大問題の決定」(以下、「決定」と略)が発表された。
 それによれば、「経済体制の改革は、改革を全面的に深化させる重点である。その核心は政府と市場の関係を良く処理することで、資源の配置において市場に決定的な役割を果たさせ、そして政府の役割をさらに良く発揮するようにすることだ」として市場経済政策を一層推進するとした。
 同時に「公有制を主体としながら、多様な所有制経済の共同発展を基本的な経済制度とするのが中国の特色ある社会主義制度の重要な支柱である」とし、さらに「財産権をしっかり守りながら、混合所有制経済を積極的に発展させる」(「コミュニケ」)とまで言っている。
▼「混合所有制経済」
 ここで重要なのは「混合所有性経済」という言葉である。それは国有企業への本格的な民間資本の導入、民営化を意味している。
 「決定」では「混合所有制経済」について、さらに詳しく次のように書かれている。
▼「非国有資本などを持ち株に入り混じらせ」
 「積極的に混合所有制経済を発展させる。国有資本、集団資本、非国有資本などを持ち株に入り混じらせ、相互を融合させた混合所有制経済を、基本的な経済制度の重要な実現形式とするが、これは国有資本がその機能を拡大するのに有利である。価値を増殖させ、競争力を高め、それぞれの所有制資本が長所を取って短所を補い、相互促進し、共同発展していくのに有利である。さらに多くの国有経済とその他の所有制経済が発展して混合所有制経済となっていくことを認める。国有資本投資プログラムでは、非国有資本が株を買うことを認める。混合所有制経済は、職員が株を持つことを許し、資本所有者と労働者の利益共同体をつくりだす」
 そして次のように続ける。
▼国有企業を「国有資本投資会社」に
 「国有資本管理体制を完全なものとし、資本の管理は、国有資産の監督・管理を強めることを主とし、国有資本が経営権を授けるシステムを改革し、いくつかの国有資本運営会社を組織する。条件を付けて国有企業を国有資本投資会社に改組することを支持する。国有資本の投資と運営は、国家戦略目標に貢献すべきであり、国家の安全、国民経済の生命線となる重要事業や要となる領域に係わるところにさらに多く投資されるべきであり、公共サービスの提供に重点を置き、将来を展望する戦略的な重要産業を発展させ、生態環境を保護し、科学技術の進歩を支持、国家の安全を保障するのである」
 このように、国有企業への民間投資を積極的に推進し民営化するとともに、国有企業自身が「国有資本投資会社」となって、従来なら国有企業がやっていた国家的事業、公的事業への「混合所有制経済」による参入を積極的に進めていく方針が「決定」には書かれているのである。
 すでに中国では1992年より「所有と経営の分離」が言われて、国営企業は国有企業となり、一部の中小の国営企業は実際に民営化された経緯がある。しかし重要な国有企業は存続し、依然として中国経済の中軸を担っている。これは中国スターリン主義による経済統制、及び労働者支配という点からも維持されている。また「経営の分離」で民営化が進んだと言っても、民間資本が入り込むには規制が多く、実際にはスターリン主義官僚が利権で経営をする「民営化」であった面が強い。
 だが、今回の会議は、この規制を緩めて、国有企業における民間資本の導入を一層進めた形で推進しようとするものだ。そしてさらに「国有企業」を今度は「国有資本投資会社」に改組して、全社会の民営化の推進軸にしようとしているのである。その意味で実に画期的な決定である。
 事実この会議の最中の11日に、中国の国有資産監督管理委員会(SASAC)は、民間投資家がより多くの国有企業株を取得できるようにする方針を明らかにし、「民間資本による国有企業への投資を歓迎する」とした。完全に会議の中身と呼応している。

(写真 北京に来て上訴する人々)

▼国有企業の民営化の突破口=鉄道の分割・民営化
 この国有企業の民営化政策の突破口となっているのが、中国鉄道の分割・民営化にほかならない。すでに中国鉄道の分割・民営化に関しては、「外資を含む民間資本の導入」が言われており、この会議で決定された国有企業のより進んだ形での民営化が先取り的に行われようとしているのである。この一点からも、中国鉄道の分割・民営化問題の大きさは明らかである。
 ただここで注意しなければならないことは、国有企業の「民営化」と言っても中国の場合は、あくまでも「民間資本の参入」および「経営の民営化」である。資産の民営化は原則としてない。中国鉄道の民営化も、あくまでも経営権の民営化であり、土地などの財産権は国家に帰属する。
 中国では土地はすべて国有であり、国家以外のものに土地の所有権はなく、それを揺るがすことはスターリン主義支配の解体につながるからである。さらに民間資本を導入し、経営権を移譲するにしても、重要な国有企業において、スターリン主義官僚の影響力からまったく離れてしまうということは、今の中国の支配体制の現状からは考えられない。
 この国有企業のより一層の民営化推進は、中国経済の危機と一体である。スターリン主義体制を維持しつつ、もっと徹底的な新自由主義的な政策を展開し、この危機を乗り切ろうとしているのである。しかしこの民営化の結果は、一層の経済の破局であるとともに、膨大な労働者の首切り・リストラであり、労働者階級の決起がさらに不可避的に増大するだろう。

(写真 一人っ子政策の結果、戸籍をもてない「黒孩子」。〝戸籍がほしい〟〝学校に行きたい〟と訴えている)

▼農村の土地問題、戸籍問題
 またこの会議では、農村の土地問題、戸籍制度問題などが討議され、「速やかに新しい農業経営システムを構築し、農民により多くの財産権を与え、都市と農村の平等な商品の交換と公共資源の平等な配置を推進する」と「コミュニケ」は書いている。
 さらに「決定」では「農村の集団経営農地の売買、賃貸、投資に用いることを許し、国有地の売買と同等、同権、同価格とし、強制収用地の範囲を縮小し、強制収用される農民への保障をしっかり整える。...土地の賃貸、売買、担保、抵当の流通市場を完備する」と書かれている。
 また「戸籍制度改革を推進する」として「鎮、小さな都市の入籍制限制度を全面撤廃し、次第に中都市の制限を撤廃し、合理的な大都市の入籍許可条件を確定し、特大都市の人口規模を厳格にコントロールする」としている。
 以上の記述は、中国での農業・農民問題の深刻さを示している。中国はすでに、農業国ではない。中国の公式な人口統計によれば、11年に都市人口が農村人口を上回り、都市と農村の人口が逆転した。
 だが法律上は、この都市に住む多くの人々が農民工であり、つまり戸籍上の身分は「農民」とされているのである。彼らの多くは農村に土地を持っている。中国では土地はそもそも国有であるが、その上で特に農村では集団所有(集団経営農地)という形をとっている。したがってこの農地の「使用権」すら、農民は勝手に売買はできない。その結果、未耕作地も増大し、しかもそのまま有効活用されないままに放置され、農村は荒廃していくという現実も生まれている。
 だから多くの農民が都市プロレタリアートになっている現実を踏まえて、農民戸籍と都市戸籍を分けている現在の戸籍制度の改善、農地の流動化と市場経済化が論議になるのはある意味で当然の流れなのである。一方で一人っ子政策の結果、極端な高齢化社会(若年労働者不足)になろうとしており、さらに一人っ子政策に反して生まれた「戸籍を持たない子ども」(「黒孩子」)の存在問題も大きい。そこまで中国スターリン主義の農村危機は深刻なのである。
 だが土地の売買や賃貸、担保や抵当の権利を認めるということは、あくまで「使用権」であると言っても、それは事実上の土地の「所有権」の売買になりかねない。そのことはスターリン主義支配の根幹をなす土地の国有制を揺るがしかねない問題をはらむ。
▼農地の同権・同価格化
 さらに現実的にはこちらが大きな問題となるが、農地(集団経営農地)を一般の国有地と同様の同権・同価格とすると、地方政府としては農民の土地を強制収用する際に、その土地の価値に見合った金額の保証をしなければならなくなる。事実、「決定」は「保証をしっかり整える」と書いている。
 これはただ同然で農地を取り上げ、その乱開発によるバブル経済で延命している地方政府にとっては死活問題であり認めがたいものである。それは地方政府の破産とバブル経済崩壊の引き金を引きかねない。一人っ子政策の緩和も、「決定」で方向性は示されたものの、一人っ子政策の罰金収入が今や地方政府の重要財源になっていることから、いつから緩和が実行されるかはまったく示されていない。
 だからこの政策は簡単には進まない。これらの決定が、現実にどこまでスムーズに進んでいくかは極めて疑問である。
 むしろ容易に想定される事態は、この〝農地の流通政策を促す〟決定を利用して、実際にはほとんどなんの保証もないままに逆に農地が今まで以上に強制収用されたり、買いたたかれたりして、農地が資本家や富農の手にドンドン集積していく事態である。これはまさに農地への新自由主義的政策の導入そのものである。
 しかしそれは、農民反乱の一層の増大を招くのは必至だ。この事態と政策には、労働者のみならず農民問題という点でも、中国スターリン主義が抱えている矛盾と危機の大きさがまざまざと示されているのである。

 国家安全委員会設立

 こうした労働者階級や農民の怒りによって、いつか自分たちは打倒されると予感している中国スターリン主義は、この会議において「国家安全委員会」の設立を決定した。これはテロや暴動などに対する治安対策の最高機関であり、コミュニケによれば、「国家安全委員会を設立して、国家安全体制と国家の安全戦略をしっかりと守り、国家の安全を確保する」と書いている。国内治安を担う公安省と、対外情報機関の国家安全省などを統括する上部機関になり、米国家安全保障会議(NSC)に似た組織になるのではとも言われている。これはすさまじい治安体制の強化であるが、同時に中国スターリン主義の悲鳴そのものである。
 このように、第18期三中全会は、中国スターリン主義の危機を真っ向から示す会議となった。鍵を握るのは労働者階級の闘いである。

 Ⅱ 吹き荒れる労働者への攻撃――外注化・非正規職化と闘う

 ① 飛び抜けて多い非正規労働者の実態

(写真 中国で派遣労働者が全労働者の中で占める割合の上昇を示すグラフ。2008年で40%近くに達している。さらにその後2年間【2009年、2010年)上昇の勢いにある。なおこれはあくまで派遣労働者の数で、非正規職全体ではない)

 中国の非正規派遣労働者の実態は、実は帝国主義諸国以上とさえ言ってもよいくらいのすさまじい現実がある。
▼中国と日本の「非正規労働者」概念の比較
 まず前提的に押さえておきたいことは、日本の「非正規労働者」と中国の「非正規労働者」には決定的な概念の相違があることだ。中国語にはそもそも「非正規(労働者)」という単語がない。あるのは①雇用期限の定めのない労働者(つまり定年まで働く労働者)、②雇用期限のある労働者、③派遣労働者、④臨時工である。そして日本の「非正規労働者」の概念で分類すれば、①は正規労働者で、それ以外の②、③、④が非正規労働者になるだろう。
 だが、中国では一般的に①及び②は正規労働者とみなされているのである。そして特に民間企業では②の「雇用期限のある労働者」(大抵契約期間が3年)が、派遣工とともに圧倒的な数を占めている。つまり中国では有期雇用の「正社員」(と呼ばれる人)が一般的に多数存在しており、日本とは概念に大きな違いがある。これがしばしば混乱を生む要因になる。
 中国共産党の共産主義青年団の機関紙である「中国青年報」(13年1月18日付)の記事に次のような記述がある。
▼非正規労働者の割合
 「調査によれば、03年に派遣労働者が企業の全労働者数に占める数は28・3%であったが、06年には33・8%に上昇し、07年には38・3%、08年の初頭には39・7%に達した。この2年間も上昇の趨勢にあり、業種別にみると製造業が最も多く、43・6%を占め、企業類型でみると国有企業が最も多くて47・2%を占め、個別企業では90%に至るものもある」
 これはあくまでも派遣労働者の数である。日本でいう非正規雇用職全体となると、新潟大学の溝口由己氏は、中国の統計資料を分析し、農民工の数に都市部の非正規職労働者数を加えた数から2004年段階で全労働者に占める非正規労働者の率を7割と推定している(「中国の非正規就業の問題と特徴」)。だが上述の問題が考慮されているのかどうか疑問もあり、さらに約10年前の統計でもあり、7割という数字はさらに検討の余地があるように思われる。だが、いずれにしても膨大な非正規労働者が中国に存在していることは間違いない。
 ではなぜ、このような現実が生まれているのか? 中国の新自由主義的な現実は、どういう経緯をとって生まれてきたのか、以下見てみたい。

(写真 1958年発足したばかりの河南省のある人民公社の労働の風景。〝大躍進〟政策の結果、この3年後には3000万人を超える餓死者が出る)

 ② 毛沢東型社会の崩壊 「改革・開放」への転換

 鄧小平のもとで1978年末から中国では「改革・開放」政策が開始された。それから今にいたる35年間は、中国史上でもまれに見る大きな社会の変革期であった。それは毛沢東時代の社会システムのあり方を根底から解体し、新しい別の社会システムに移行していった過程であった。
▼毛沢東時代の社会の破綻
 毛沢東時代の社会は、労働者や農民は、工場や人民公社などの職場(「単位」)に所属し、大きくはその中で一生を過ごす社会であった。工場や人民公社はそれぞれ、住宅はもとより学校や診療所、風呂場や食堂などを備え、「ないのは火葬場だけ」といわれる自己完結的で閉鎖的な社会をつくっていた。1958年に完成した戸籍制度によって、都市住民と農村住民は明確に区別され、労働者も農民も人々の移動は大きく制限され、特に農村から都市への移住はほとんど不可能であった。経済のあり方は配給制であった。
 農民を農村にしばりつけたのは、都市人口を増大させず、農村からの収奪で都市住民への配給による食料を確保し、それによって都市部の産業の発展を進めていく基盤を保障しようとしたからであった。労働者の職業は政府によって決められ、労働者は決められた職場で生涯働き(事実上の「終身雇用」)、一生を過ごしていた。老後の生活も、その所属する工場が面倒を見ることになっていた。労働者も工場にしばりつけられており、なんらかの事情で旅行などに行くときは、すべて工場細胞の許可が必要な社会だった。
 こうした毛沢東時代の社会は、労働者が移動を厳しく制限され、徹底的に統制・監視される疎外された社会であったことを意味しており、労働者が社会の主人公である共産主義のあり方とはまったく別の社会であった。また配給制を採っていたということは、いかに社会が貧しかったかも意味している。毛沢東はスターリン主義者として、①世界革命から切断された一国社会主義建設を推進し、②しかも労働者が社会の主人公ではなく、逆に労働者が徹底的に疎外された社会をつくりだした。その結果として毛沢東的な一国社会主義建設は、大躍進期(1958~60年)での3千万人以上の餓死者の発生、そして文化大革命(1966~77年)の大混乱を通じて最後的に破産していったのである。
▼「改革・開放」の社会
 こうした毛沢東的な一国社会主義建設の破産の中で、鄧小平の「改革・開放」政策が開始される(78年)。鄧小平は、一方で大胆な外資導入政策を展開し、一方で中華民国以来の「愛国資本家」たちを再起させて民族資本の育成を図った。そのために毛沢東時代の閉鎖的な社会のあり方を徹底的に解体して、「流動的な労働者」を大量に生み出そうとしたのである。

 ③ サッチャーから学んだ住宅改革による「流動的な労働者」の誕生

 中国における「改革・開放」政策は、それまで工場に付属していた住宅改革を伴った。それまで労働者の住宅は工場の付属であり、それによって労働者は工場に縛りつけられていたが、80年代から始まり90年代以降急速に進んだ住宅改革によって工場から住宅は分離され、民営化された。
 これは同時代のイギリス・サッチャーの政策の影響を受けたといわれている。サッチャーが英国での民営化政策の核心とした住宅改革を手本にして、中国での住宅改革が行われ、国有企業が有していた社員住宅は民間に払い下げられた。こうした住宅の民営化政策をひとつの突破口としながら、国営企業改革が行われていった。92年に、「所有と経営の分離」によって、従来の国営企業は国有企業となる。
▼労働者を特定工場から開放
 中国スターリン主義がサッチャーから学んだこの社員住宅の民営化は、実は「改革・開放」政策の展開にとって決定的な意味を持った。というのは、この民営化が意味するものは、〝特定の工場に帰属している存在だった労働者〟を〝特定の工場〟から開放し、〝流動的な労働力〟に変える意味を持ったからである。職業選択もできれば、同時に解雇される労働者となることを意味したからである。それはつまり、毛沢東時代の工場のあり方の根本的な解体を意味した。旧来の「工場」という〝単位〟のあり方を根底から解体させたのは、この住宅の民営化だったのである。それをサッチャーの改革を参考にして中国スターリン主義が行った。これは明らかに中国スターリン主義が、帝国主義の新自由主義政策を取り入れながら「改革・開放」政策を展開していったということを意味する。
▼労働契約制で解雇有りへ
 先立つ1986年に国営企業の労働者を対象にして、労働契約制度が導入された。それまで事実上の終身雇用であった労働者は、この労働契約制の導入によって「企業に解雇されることもある身分」となり、また企業も倒産する時代に入っていった。
 それまでの一生の生活を「保障」した工場のあり方は解体され、毛沢東時代の「事実上の終身雇用」的なあり方もなくなり、労働者は企業との間で労働契約を交わして労働年限を決める社会となった。この結果、先述の「有期雇用の正社員」が雇用形態として一般化したのである。

 ④ 農民工の発生 労働契約法の制定

▼人民公社も解体、「開放された農民」が都市に
 農村の人民公社も解体された。「改革・開放」政策はまず農村から始まったが、人民公社の解体とともに農地請負耕作責任制度が導入され、個々の農民が個別の土地の請負耕作を認められるようになった。農民は人民公社から「自由」な存在となったが、同時にこの結果、農村の潜在的な過剰人口が明らかになっていった。農村からの移動は事実上緩和され、農村部における潜在的な過剰労働力が、都市部における急速な工業化の進展とともに、農民工(出稼ぎ労働者)として都市部に大量に流れ込むようになった。その数は12年の段階で2億6300万人と言われている。膨大な農村からの労働者が生み出された。
 しかし都市と農村を分離した戸籍制度は、基本的に今もそのまま残っている。農村出身、もしくは農村出身者を両親に持つ者は、農村戸籍を持つ以上、事実上は都市で労働者として生活していても、身分はあくまで「農民」であり、都市の正式な住民にはなかなかなれないシステムである。このあり方が、農民工は非正規雇用にならざるを得ない現実を生み出している。
▼中国の労働法は94年から
 中国で労働法が初めて制定されるのは1994年であり、それまでは労働法は存在していなかった。この労働法制定は、1993年11月19日に深せん市の玩具工場で起きた火災で、出稼ぎ女性労働者87人が死亡し51人が負傷した事件がきっかけになっている。「労働者が製品を窃盗するのを防ぐ」という名目で、工場の窓や玄関が封鎖されており、彼女たちは逃げることができなかったのだ。
 また「労働合同法」(日本語に訳すと「労働契約法」)が中国で制定されるのは、なんと07年である。つまりそれまでは正式な労働契約の法的根拠はなかったのである。しかもこの現在の「労働合同法」は派遣労働を合法化し、しかも臨時工に対しては、書面のいらない口頭契約さえ認めている。
 こうした現実総体が生み出したものが、中国における膨大な非正規雇用労働者の存在にほかならない。したがってこの「改革・開放」政策下の約35年間というのは、毛沢東時代の旧社会が全面的に解体され、事実上の新自由主義的な政策が全面展開され、膨大な「流動的な労働者」が生み出されていった過程であり、非正規雇用が一般化していった過程そのものなのである。
 鄧小平が「改革・開放」政策を78年に開始してから94年までの16年間、中国には労働法はなかった。まるで資本主義初期のイギリスのように、まったくの無権利状態で中国の労働者は路頭に放り出され、働かされ、その奴隷のような労働の上に中国の経済成長はあったのである。
 また78年は、中曽根やレーガン、サッチャーが登場する直前である。帝国主義とスターリン主義の現代世界が本格的な崩壊過程に突入し、その一環として中国スターリン主義の毛沢東主義的な一国社会主義建設も破産していく中で、鄧小平は「改革・開放」政策を展開した。89年の天安門事件、および91年のソ連崩壊は中国スターリン主義にすさまじい衝撃を与えた。とりわけソ連崩壊の衝撃は、中国スターリン主義にも崩壊の現実性を突きつけた。。鄧小平は92年に南巡講話を行い、「改革・開放」政策を加速させる。そして帝国主義の新自由主義的な手法も取り入れた社会の大変革を行い、労働者と農民を犠牲にしながら、中国スターリン主義の延命を図ったのである。

 ⑤ 「労働合同法」改定が導いた外注化の横行

 こうして生み出された膨大な派遣労働者を先頭とする非正規労働者は、全労働者の先頭に立って今、中国全土で闘いに立ち上がりつつある。増加する労働争議は、資本と体制を揺るがす大問題となりつつある。
▼労働合同法改定
 この中で中国スターリン主義は、12年12月28日の第11回全人代常務委員会第30回会議で、「労働合同法」を改定した。それは、派遣労働者と正規職での「同一労働、同一報酬」を掲げ、派遣労働はあくまでも例外的労働であり、臨時性や補助性、代替性が必要なときにしか認められないとし、また一方で労働者派遣企業の設立条件を厳しくしている。
 これだけを見るなら、日本の現行の「派遣法」以上の中身のように一見なっているが、しかし、これは闇労働などが横行する今の中国の労働実態からはあまりにもかけ離れており、どこまで実現できるかは極めて疑問である。
 事実、今年7月1日に施行されて以降起きたことは何か? 一つは、やはり現実には何も変わらない派遣労働の現実である。二つに、派遣労働者の大量首切りである。派遣労働への規制強化に対して、企業は派遣労働者の首切りで応えている。
▼外注化の推進
 そしてもう一つは、外注化の推進である。
 それまでの労働者派遣企業は、「外注請負企業」となる。一方でそれまで派遣労働を受け入れていた企業は、その派遣労働者を雇っていた工場の部門を全面外注化し、「外注請負企業」に作業をゆだねる。従来の派遣労働者は、こんどは外注請負会社からの労働者と形だけは変わって、同じ工場で同じ仕事をすることになる。規制を逃れるために、派遣労働から外注請負労働に変わっただけである。現実は、なんら変わらない。こうした外注化が、この改定「労働合同法」の施行を契機にして、拡大しているのである。ここにも派遣労働と外注化の驚くべき関係がある。
 しかしこのような攻撃は、派遣労働者、非正規労働者の怒りをますます高めるだけである。

(写真 工会主席【右)に罷免要求をたたきつけ、抗議するオーム電子深せん工場の労働者)

 ⑥ 工会支配の崩壊と工会改革

 この労働合同法の改定と並んで行われているのが工会改革である。中国スターリン主義の労働者支配は、中華総工会、すなわち中国スターリン主義が組織している労働組合が大きな役割を果たしている。それらは中国スターリン主義の行政組織の一角であり、労働者を組織し統制し、労働者が本格的な労働運動を開始すること、反体制運動に決起することを圧殺する存在となっている。
 しかし「改革・開放」政策の進展は、この総工会の労働者支配をも揺るがす事態を生み出していた。外資系企業が増大し、一方で中国資本による民間企業も乱立していく中で、労働組合自身が存在しない企業が増え、総工会に属さない労働者が増大した。
▼総工会の衰退と自主労組
 2000年代前半ですでに、総工会の組織率は、全労働者数の50%を切っていた。農民工(事実上の非正規労働者)の増大も、組合に属さない労働者の数を増大させた。しかしそれでも総工会が労働者支配に影響力を及ぼすことができたのは、国有企業が中国スターリン主義の経済と体制維持のために根幹として存在しており、そこでの労働組合の支配を総工会が持ち続けることで労働者全体に影響を及ぼすことができたからである。
 だがここ数年間、総工会が労働者の闘いに敵対し、なんら労働者の利害を代表する存在ではないことが公然となる中で、自主労組結成の動きが始まってきた。中国政府は、一方でペテン的な労働者への懐柔策をとるとともに、農民工(非正規労働者)の総工会への加盟条件を緩和し、その一方で自主労組結成の動きは徹底的に弾圧した。
 昨年5月には、自主労組の結成を要求するオーム電子(松下資本傘下)での闘いがきっかけになって深せんの163の企業で当局も容認する形での「自由選挙」が行われた。だが新たに選ばれた工会執行部はただちに腐敗した。この事態は、中国スターリン主義の進める「工会改革」のペテン性を鋭く暴露しており、こうした労働運動の体制内的な囲い込みに対して、それを許さない労働者の闘いが今爆発している。労働者自らが、闘う労働組合を結成し、スターリン主義を打倒する以外にはないのである。

 スターリン主義下での新自由主義的政策の展開について

 新自由主義とは最末期帝国主義の絶望的延命形態である。しかしこのことは、スターリン主義が新自由主義的な政策を採らないことを意味しない。
 ここで強調したいことは、スターリン主義体制、その体制のあり方自身が、新自由主義的な政策を推進する上での決定的なテコとなっているということである。
 中国スターリン主義の独裁政治、そして土地の国有制度などのスターリン主義の制度や社会のあり方が、実は単に政治という領域だけではなく、経済という領域でも新自由主義的政策の展開に重要な役割を果たし、帝国主義に伍してその政策を推進する基盤になっているということだ。
 スターリン主義は、スターリン主義としてのその独自な政治体制、その独特の土地所有形態を徹底的に活用して、「スターリン主義体制下での新自由主義的な政策」ともいうべき政策を、延命のために積極的に展開しているのである。

 Ⅲ 国有企業・民営化政策の要――中国鉄道の分割・民営化攻撃

(図 中国高速鉄道【新幹線】路線図 2012年10月16日現在)

 ① 新たな新自由主義政策 中国・国鉄の分割・民営化

 こうした「改革・開放」政策の破産と労働者支配の危機、そして新たな国有企業民営化政策への踏み切りの中で、打ち出されてきたのが「中国鉄道の分割・民営化」である。
▼高速鉄道の戦略性
 12年12月26日に開通した北京と広州を結ぶ世界最長(2298㌔)の高速鉄道は、政治の中心である北京と経済の中心である広州を直通で結ぶ高速鉄道であるが、その経営は赤字必至で年間利子だけで数億元(1元は現在14円ほど)の赤字を生み出すという。
 最初から採算の取れるめどはないと、中国のマスコミも報じている。こうした赤字必至の高速鉄道は、しかし鉄道事業自身が巨大な経済効果を生み出すため、またその路線が中国経済全体に積極的な意味を持つことから、資本の要請、政治の要請で急スピードで建設されてきた。同時に鉄道事業は巨大な利権を生み出すものともなり、鉄道部(鉄道省)は「腐敗の温床」と言われ、汚職が常態化していた。
 さらに中国スターリン主義は、中国高速鉄道の輸出政策を国策として積極的に推進し、日帝をはじめ帝国主義諸国との激しい争闘戦を展開している。中国スターリン主義にとって鉄道は、内外の政治と経済双方にとって決定的な存在なのだ。

(写真 温州高速鉄道事故【2011年7月23日】)

▼11年7・23高速鉄道事故
 こうした中で、11年7月23日に浙江省温州市で高速鉄道事故が発生し、多数の死者を出す事態となった。中国政府の公式発表では死者は約40人とされているが、200人以上いるはずだといわれている。
 まさに中国スターリン主義にとって中国鉄道は基幹産業そのものであるが、その建設は経済的に破綻し、運営的にも危機を深め、腐敗していたのである。
▼「鉄路政企分開」
 こうして3月10日に、北京で開催中の第12期全国人民代表大会第1回会議で、鉄道省の解体が決定された。日本の「国鉄分割・民営化」にならったという「鉄道改革」が始まったのである。
 「鉄路政企分開」(「鉄道での行政と経営の分離」)のスローガンの下に、鉄道部を解体して、交通運輸省のもとに「国家鉄道局」を創設し、行政面での責任を取る。一方で「中国鉄道総会社」を立ち上げて経営責任をとらせ、それも地方ごとに分割して鉄道会社を設置するという構想だ。
 「中国鉄道総会社」は、形は国有企業であるが、外資も含む民間投資を前例のない規模で広く受け入れた「独立採算制」による鉄道経営をめざすもので、実質的には民営化(私有化)である。この会社は3月14日に発足した。
 3月17日には旧鉄道部の建物の看板は「中国鉄道総会社」に架け替えられ、営利部門を担う「中国鉄道総会社」が発足した。この会社には、各地に分割された18の鉄道会社、三つの運輸企業などが所属している。独自の裁判所まで持ち、「独立王国」といわれ、膨大な利権と腐敗に満ちた旧鉄道部はこうして解体された。
 これが発表されるや、中国のネットでは、「腐敗の温床」鉄道省解体を喜ぶ声も出る一方で、〝民営化されることによる運賃の値上げ、それが物価上昇に及ぼす影響〟〝鉄道労働者の解雇〟などの可能性を指摘する声が次々とあふれた。

 ② 新たな民営化政策の突破口

 8月9日、国務院は「鉄道投融資体制の改革による鉄道建設推進の加速に関する国務院の意見」(以下「国務院の意見」と略)を発表した。
▼「国務院の意見」
 「国務院の意見」は、以下の通りだ。
 「鉄道投融資体制の改革を推進し、多様な方式、多くのルートで建設資金を集める。『統一計画、多元な投資、市場の動き、政策との一体化』の基本思想に照らして、鉄道発展計画をしっかりと定め、鉄道建設市場を全面開放する。新鉄道建設には分類投資建設を実行する。地方政府と社会資本に対して、都市間鉄道、市内鉄道、資源開発のための鉄道と支線鉄道の所有権、経営権を開放し、社会資本の鉄道建設への投資を奨励する」
 「鉄道用地資源の活性化への力を強め、土地の総合開発利用を奨励する。駅舎と線路用地の総合開発を支持する。中国鉄道総会社は、国家が投資機構としての権利を授けた会社として、その本来の鉄道による生産経営を土地にまで拡大し、経営権を(第三者)に授ける方法で(経営者を)配置することができ、こうして中国総会社を通じて法に基づいて(土地を)活性利用することができる。土地利用全体の計画と都市計画を統一的に照合して、駅舎と線路周辺の土地を都合よく処理し、開発建設のレベルを適度に高めていく」
 「合理的な技術を生み出し、現有鉄道用地の地上、地下空間に対して総合的な開発を進める。用地目録で建設用地に割り当てられたところは、継続して使用権が割り当てられる。(土地の)開発利用により、土地を経営する権利や土地用途を改変することができる権利は、中国鉄路総会社以外の会社にも与えられ、個人に与えられることもあるが、法による売買手続きをすることが必要である。地方政府は、鉄道企業が駅舎や線路用地の一体的計画を進めることを支持し、市場化、集約化の原則にのっとって総合開発を実施し、開発による収益を得て鉄道が発展することを支持しなければならない」
 以上の「国務院の意見」は、「鉄道建設市場を全面開放する」「所有権、経営権を開放する」と、鉄道の全面民営化を推進することを表明している。
▼旧鉄道部の意見
 またこの文書に先立って、旧鉄道部が発表した「鉄道投資への民間資本の導入と奨励の実施に関する意見」(12年5月16日)には、「多様な形式の外国投資および(外国)経済との提携を展開し、国際市場を開拓する」と書かれており、ここでの民間投資には、外資も含まれていると考えることができる。これは従来の国有企業への民間投資、民営化を超える事態であり、民営化政策が新たな段階に現実に突入していることを示している。
 また「駅舎と線路用地の総合開発」について書いているところは、今、日本のJRで起きている事態そのものである。JRは民営化の中ですでに本来の鉄道業務よりも、土地や資産での経営の方が収入を上回り、それと一体で駅業務の外注化と非正規職化が進行している。それと同じことが今中国で起こっているのである。
▼旧来のレベル超える民営化
 すでに述べたように、92年から国有企業の民営化は進んできたが、実際には民間の投資には多くの制約があった。しかし中国スターリン主義はその危機の深さの中で、こうした旧来のレベルを超える国有企業の一層の民営化、新自由主義的な政策を展開しようとしている。それを全面的に明らかにしたのが、今回の第18期三中全会であった。
 第18期三中全会は、「混合所有制経済」という言葉を用い、国有企業の新たな民営化政策への踏み切りを宣言した。この政策の先取りとして強行されたのが実は「中国鉄道の分割・民営化」にほかならない。つまり「中国鉄道の分割・民営化」とは、今後中国スターリン主義が延命策として全面的に推進しようとしている新たな新自由主義的政策、民営化政策の先取りであり、その突破口なのである。
 この一点だけでも、中国鉄道分割・民営化が中国スターリン主義の政策にとって占める決定的な意義と反動性は明らかである。

(写真 リストラ攻撃と差別待遇に抗議する福建省泉州市泉州駅の派遣労働者たち)

 ③ 労働者の階級的魂の背骨を折る攻撃

 しかし鉄道分割・民営化の反動性は、これだけにとどまらない。それは今、中国全土で決起している労働者階級の新自由主義への怒りの闘い、派遣労働者など非正規職労働者の弾劾の闘いの爆発と発展を恐れ、その闘いの背骨を折るために強行されている。
 中国鉄道の職員は、およそ210万人といわれている。もっともこれは正社員の数であり、派遣労働や外注請負労働者など、膨大な非正規労働者がほかに存在している。その正確な数は不明であるが、正社員に匹敵する数、もしかしたらそれ以上の数の非正規職が存在している可能性がある(例えば、鉄道貨物労働者だけで100万人おり、そのほとんどは派遣や外注請負である)。
▼中国労働運動解体が狙い
 中国鉄道の分割・民営化が決定したとき、多くの鉄道労働者はリストラの危機を感じたし、実際に民間企業として「独立採算制」を掲げて経営していく以上、大量首切り攻撃は必至ともいえる。いやむしろ、こうした大量首切りをあえて政治的にも強行することで、中国の闘う労働者に敗北感を植え付け、戦闘化し団結を広げつつある現在の中国の労働運動を解体しようとしているのである。ここにある意味では、最大の目的がある。
 一切の抗議と反対の声を力ずくで押しつぶして、鉄道という基幹産業での大量解雇を何がなんでも強行し、決起しつつある中国の戦闘的な労働者の闘いの魂をつぶして、労働運動を解体しようとする攻撃が始まろうとしている。しかしこれに対する回答は、まさに闘争であり、労働者の団結の拡大である。今、中国の労働者は、この大反動攻撃に対して、怒りの決起で反撃に立っている。

(写真 ストライキを闘う南昌駅の貨物労働者)
(写真 分割・民営化が決定し、「さらば鉄道部」と報じる中国の新聞【3月10日】)

 ④ 鉄道労働者の決起が開始された!

 今年8月13日には北京で農薬による10人ほどの集団自殺事件が発生した。自殺者の中にはハルビン鉄道の腕章を巻いた人もおり、この集団自殺事件は、鉄道の分割・民営化に伴うリストラと失業の危機に追いつめられて、ハルビンから北京まで上訴に来た鉄道労働者が抗議自殺したものと見られている。
▼福建省泉州でストライキ
 また9月28日には、福建省泉州市の泉州駅で高速鉄道で働く派遣労働者207人が、彼らが乗務していた列車の便が廃止となることでリストラ攻撃がかけられ、ストライキに立ち上がった。
 さらに彼らは、「同一労働、同一賃金」を真っ向から要求し、幹部の特権を弾劾してストライキを闘った。「私たち207人の派遣労働者は、公平公正を要求する。幹部たちは特権をほしいままにし、こっそりと不正をしている」「同じ仕事でありながら、どうして私たちは差別されるのか!」などの横断幕を掲げて徹底的に訴えた。
 このように、中国鉄道の分割・民営化に伴う解雇攻撃は、すでに激しく始まっている。
▼南昌駅で貨物労働者がストライキ
 そしてさらに10月10日より、新たなストライキが爆発した。江西省南昌市の南昌駅の中国鉄道快速運輸で働く鉄道貨物労働者160人が、賃上げや社会保障制度の適用などの労働環境の改善を求めて12日間にわたるストライキを闘った。会社は譲歩を余儀なくされた。
 この中国鉄道快速運輸部門は外注化されており、彼らは外注請負会社から派遣された労働者である。
 このストライキの背景には、中国鉄道の分割・民営化がある。

(写真 鉄道部解体が決定し、記念写真を撮る人々【3月10日】)


▼早くも現れた分割・民営化の破綻
 3月の鉄道分割・民営化で鉄道行政・資産管理を担当する「鉄道管理総局」と経営を担当する「中国鉄道総会社」が発足した。
 その結果、6月の鉄道貨物組織改革で、それまで中国鉄道快速運輸に所属していた貨物列車、倉庫などは鉄道管理局の管轄となり、一方で貨物トラックなどは鉄道総会社(ここでは中国鉄道快速運輸)の管轄になった。鉄道管理局は経営には携わらないが、鉄道や貨物運輸の資産や業務を管理するというのである。
 分割・民営化しても移譲されるのはあくまでも経営権だから、土地や鉄道資産の管理は、国を代表する鉄道局の管轄となり、動産にあたるトラックなどが鉄道総会社の管轄になったものと思われる。
 貨物の資産を管理するのは鉄道管理局だが、経営しているのは鉄道総会社である。さらに彼らを直接雇用しているのは、形式的には外注請負会社である。
 この結果、7月に労働者が賃上げの要求書などを出しても、3者が3者とも責任をたらいまわしにして対応を拒否するという事態になった。挙げ句の果てに外注請負会社は、労働争議の責任を逃れるために、9月に入って今後は新たな外注請負契約を結ばないと南昌駅に通告してきた。これに激怒した労働者207人がストライキに立ったのである。
▼新自由主義のデタラメ
 ここには中国における鉄道分割・民営化の破綻がすでに現れている。「鉄道管理総局」と「中国鉄道総会社」という二つの体制による管理、さらに鉄道労働者における外注化や派遣労働の一般化が、労働現場をめちゃくちゃにし、ひいては鉄道管理や運営などにも致命的な影響を及ぼすという事態がすでに始まっているということである。逆に言えば、鉄道労働者の現場からの反乱は不可避だということだ。
 中国鉄道の分割・民営化が新たな新自由主義、新たな民営化攻撃の突破口となっており、労働者階級の反撃を圧殺し、その階級的魂を押しつぶす目的で強行されている。だが、こうした新自由主義的な攻撃とそのでたらめさは、労働者階級の不断の決起を逆にますます促進するのである。
▼2兆6千億元の借金
 さらに2兆6千億元(約36兆4千億円)に上る膨大な旧鉄道部の借金は、国の借金として中国の労働者人民に増税となって転嫁されるのも必至だ。また、新設される会社は、赤字必至の鉄道経営を維持するために、労働者のリストラとともに運賃値上げを進めていくことも明らかだ。これらのことも、労働者階級の怒りの火に油を注ぐだろう。
 鉄道分割・民営化は、中国スターリン主義の新自由主義政策を根底から粉砕する、新たな労働者階級の決起を引き起こし、中国スターリン主義打倒の革命の突破口に転化していくに違いない。

 ⑤ 中国労働者階級と連帯し国鉄決戦に勝利しよう!

▼上海自由貿易特区
 この中国鉄道分割・民営化とともに新自由主義攻撃の新たな突破口とされるのが上海浦東新区に設けられた上海自由貿易区設置(9月29日設置)である。
 そこでは大幅な金融緩和や外資をはじめ資本の投資への規制緩和がされようとしている。これは今回の三中全会で決定された金融緩和、投資の自由化、外資への規制の緩和を「試験」という意味も含めて先取り的に実行するものである。この会議で明らかになった中国スターリン主義体制下での新たな民営化攻撃、新自由主義的な政策の切り口になろうとしているのだ。実際に三中全会でも、重要政策としてこの上海貿易自由区の設置が確認されている。また労働規制の大幅な緩和が行われると想定され、中国の労働者階級への新たな新自由主義攻撃そのものである。まさに新たな特区攻撃である。
 中国スターリン主義は、この上海自由貿易区で新たな金融政策、投資政策などを実行し、その経験を総括しながら今後中国各地にこの新たな「特区」を設置して、中国経済の新自由主義化を一層推進しようとしているのである。また、またこの上海自由貿易区は、明らかに米TPP(環太平洋経済連携協定)への対抗策であり、米中対決のひとつの焦点になろうとしている。上海自由貿易区設置は、中国鉄道分割・民営化とともに新たな新自由主義政策の突破口であり、労働者階級への階級的攻撃そのものにほかならない。
▼原発大国化・核大国化
 さらに中国スターリン主義は、米中対峙対決構造のもとで、すさまじい核大国化への道を突き進んでおり、2030年までに原発を200基に増やそうとしている。原発大国、核大国化への道である。
 だがこれに対しても7月12日、広東省江門市で核燃料加工工場建設に反対する住民の1千人を超えるデモが起こり、中国での反原発闘争がついに始まった。この背景には、福島原発事故がある。

(写真 呉貴軍氏の釈放を求めて中国政府の駐香港特別行政区連絡事務所前で抗議行動を行う香港の職工盟【10月22日】)

▼呉貴軍氏釈放求める闘い
 中国スターリン主義と資本の新自由主義的な攻撃に対して、中国の労働者は非正規の青年労働者を先頭に、団結して新たな闘いに立ち上がっている。迪威信家具用品深せん有限会社のストライキを指導したとされる呉貴軍氏の160日を超える拘留に対して、これに抗議し即時釈放を求める行動が、国境を越えて全世界に広がっている。
 新自由主義に反対する闘い、動労千葉が掲げる「国鉄分割・民営化反対」「外注化阻止」「非正規職撤廃」のスローガン、フクシマを先頭にする「原発即時廃炉」のスローガンは、完全に中国の階級闘争と一体のスローガンである。今こそ、中国の労働者との階級的連帯をつくっていく決定的なチャンスである。
 国鉄決戦を爆発させ、その力で中国の労働者との国際連帯を実現しよう。そして反帝・反スターリン主義世界革命へ、中国の労働者とともに団結して進撃していこう! 日本帝国主義打倒! 中国スターリン主義打倒! この闘いを日中の労働者の共通の事業として実現しよう!
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(図 中華人民共和国行政区画図)