本の紹介 沖縄戦 なぜ20万人が犠牲になったのか 林 博史 著 民衆の側から沖縄戦の全容を解明

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週刊『前進』04頁(3395号04面03)(2025/05/12)


本の紹介
 沖縄戦 なぜ20万人が犠牲になったのか 林 博史 著
 民衆の側から沖縄戦の全容を解明


定価1130円+税

 沖縄戦から80年、米日帝国主義が沖縄を中国侵略戦争のための最前線基地にする策動を強めている中で、改めて沖縄戦とは何だったのかを知ることが重要になっている。新刊の本書は、そのための格好の教材である。沖縄戦に至るまでと戦後の歴史も見据えた、沖縄戦の一部始終が見渡せる内容になっている。
 著者は、これまで民衆の側からの沖縄戦史を中心に研究を重ねてきた学者で、『BC級戦犯裁判』『日本軍「慰安婦」問題の核心』などの著書もある。
 日本軍は沖縄の住民に対して何をやったのか。住民虐殺、食糧強奪、壕(ごう)追い出し、強制疎開、「集団自決」強制など、日本軍がいなかったら起きないことが次々と沖縄の人民の上に襲いかかった。「天皇のために自ら命を捧げようとしない者、天皇の軍隊の命令に従わない者は天皇と国家への裏切者、すなわちスパイと見なされて殺されても当然と考えられ、そして実際に殺された」のだ。
 沖縄戦の教訓は「軍隊は住民を守らない」ことにあると言われるが、実際に、第32軍の長勇参謀長は「県民の生活を救うがために負けることは許されるべきことではない」と公言した。
 1945年4~6月の沖縄戦の激戦過程を見ると、沖縄戦が「国体」(天皇制を頂点とする日本帝国主義の体制)を守るための捨て石として位置づけられていたことがよく分かる。
 また、日本軍が中国、アジアで展開してきた侵略戦争の継続として沖縄戦があることも強調されている。捕虜になったら米軍に何をされるかと恐怖をあおって「集団自決」を強制したのも、中国人民に対して日本軍がやってきた暴虐があったからだということが分かる。
 著者は沖縄戦当時に行われたことが、今日形を変えて繰り返されていることにも注意を喚起しており、この点も重要だ。例えば沖縄戦に備えて行われた防空演習が今日の「Jアラート」と酷似している、など。沖縄戦は過ぎ去ったことではない。
 安保・沖縄闘争を闘う一助として本書の活用を薦めたい。

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