十亀弘史の革命コラム-28- ヨルダン川西岸での暴虐
十亀弘史の革命コラム-28-
ヨルダン川西岸での暴虐

それぞれが映画作家であり活動家でもある、パレスチナ人2人とイスラエル人2人の4人が共同監督したドキュメンタリー映画「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」は、イスラエルの暴虐を胸に突き刺さるリアルさで写しとっています。監督の一人であるパレスチナ人のバーセル・アドラーが語っています。この作品は「何年も前からコミュニティーと家族が残忍な占領によって消されていく、私たちの村を撮影した記録です」。ここでの「私たちの村」は、ヨルダン川西岸の農民コミュニティー、マサーフェル・ヤッタを指しています。イスラエル軍は「射撃訓練場をつくるため」として、村の住民の暴力的な排除を続けています。映画は10・7蜂起直前までの4年間の記録です。4人の目の前で、イスラエル軍と入植者が村を徹底的に破壊していきます。
例えば、村人たちが子どもたちのためにやっとつくり上げた学校をイスラエル軍の重機が切り裂いていきます。生活に欠かせない井戸には容赦なくセメントを流し込みます。そして銃を手にした入植者が一人のパレスチナ人を無造作に撃ち倒します。これらのシーンには、心臓が殴られるような衝撃を受けます。ヨルダン川西岸でも長期にわたってイスラエルによる極限的な暴力行使が続いています。
見ていると直ちに、強い緊迫感と共にこの間のガザの惨状が想起させられます。マサーフェル・ヤッタで行われてきた暴虐が、数千倍、数万倍の規模で、時間的にはずっと凝縮され、集中的に進められています。制限のない殺人、病院、学校、住まいなどの徹底した破壊、餓死や凍死の強制、全ての人間性の圧殺。ガザを思いながら映画館を出て来た時、外に広がる有楽町の日常の光景に強烈な違和感を覚えました。同じ地球の上で、いま現に、すさまじいジェノサイドが進められているのです。
映画は私にあらためて、ガザからの10・7蜂起の正当性、正義性を身体的な実感をもって納得させました。同時に、いま私たち日本の労働者人民が何をなすべきかを決定的に問いかけてきました。ただ答えは、やはり、まず何よりも自国の戦争を阻止することのほかにありません。イスラエルと一体でパレスチナを蹂躙(じゅうりん)しているアメリカ帝国主義、その米帝と共に中国侵略戦争を進めようとしている日本帝国主義。私たちはまず日帝を打ち倒すために全力を尽くさなければなりません。
(そがめ・ひろふみ)
2025.4.14
