自衛隊に「戦時輸送体制」 呉に海上輸送群発足 27年開戦を意識
週刊『前進』04頁(3391号02面03)(2025/04/14)
自衛隊に「戦時輸送体制」
呉に海上輸送群発足
27年開戦を意識
自衛隊の全部隊を運用する「統合作戦司令部」が発足した3月24日、海上自衛隊呉基地(広島県呉市)では「自衛隊海上輸送群」が発足した。4月6日の発足式で中谷元・防衛相が「まさに新しい時代の統合運用の象徴」だと述べたように、これは自衛隊に戦時輸送を担当する部隊が登場したという「新しい時代」――中国侵略戦争への突入を象徴するものだ。
海上輸送群は南西諸島(琉球弧)への輸送力強化を目的として100人体制・2隻の輸送艦を保有して発足した。もともとは、18年の「中期防衛力整備計画」でその新設が掲げられ、海自が自衛隊内でも特に多忙で人手不足が深刻であることから、陸上自衛隊員を主軸に新編が進められてきたものだ。19年から海自の術科学校で陸自隊員への教育が実施されるようになり、陸自隊員が海自輸送艦に実際に乗って訓練するとともに民間の輸送会社に出向いて乗船するなど官民挙げて準備が進められてきたのである。
今年度末までには海自阪神基地(兵庫県神戸市)にも部隊を増やし、160人体制・輸送艦4隻へと拡充される。さらに2027年度末までに、①本州から沖縄本島・奄美大島などへの輸送用に全長120㍍の中型級船舶2隻、②沖縄本島から宮古島や石垣島などの大きめの島への輸送用に、砂地の浜辺への着岸も可能な小型級船舶4隻、③小型級船舶でも着岸の難しい小島などにも輸送を可能とする機動舟艇4隻の計10隻体制へ増強される予定となっている。
海上輸送群は防衛相直轄だが、それはすなわち部隊運用を一元的に指揮する統合作戦司令部の直轄部隊でもあるということだ。全国から南西諸島に戦力を輸送・集中させることは前線の戦闘と一体の重要事であり、統合作戦司令部と海上輸送群の発足が同時だったのは偶然ではない。統合作戦司令部発足の議論に深くかかわった元防衛事務次官・島田和久は4月5日付産経新聞のインタビューで、「意識したのは、中国による台湾侵攻態勢の準備目標とされる2027年だ。27年までに統合作戦司令部をフルスペックで機能させる」と語った。海上輸送群は、中国本土へのミサイル攻撃を司令する統合作戦司令部の「フルスペック」化のために不可欠なのだ。
国家総動員で進む戦時輸送力の強化
しかしながら、戦時の輸送・補給体制にとって海上輸送群だけでは不十分であることも明白なため、自衛隊は総力を挙げて輸送体制を拡充しようとしている。航空自衛隊は今後10年かけて最新の大型輸送機C2(現在16機運用)を6機増やす。さらに最新鋭の空中給油機KC46A(2機運用、2機注文中)を13機追加で導入する。陸自も今後約10年で大型輸送ヘリコプターCH47JA(49機運用)を新しく34機、最新鋭の多用途ヘリUH2(9機運用)を77機導入する計画を立てている。
さらに民間資金等活用事業(PFI)の利用拡大が進められている。現在、自衛隊は2隻のフェリーを民間会社と契約し、訓練などに利用しているが、輸送に特化したフェリーを追加で6隻、計8隻利用することが計画されている。
そして、輸送には単に艦艇や航空機を準備すればいいわけではなく、そのための港湾や飛行場が整備されていなければならない。「特定利用空港・港湾」として九州・南西諸島の施設を中心に8空港・20港湾が指定され、拡大を続けているのは海上輸送群発足とも一体のものである。
また、海上保安庁を自衛隊と一体で運用することが進められている。「有事」の際に海保を防衛相の指揮下に置けることは自衛隊発足時から定められていたが、そのための手続き「統制要領」は戦後長きにわたり定められておらず、自衛隊が直接に海保を指揮することはできなかった。しかし23年4月に統制要領が策定され、以降、海保と自衛隊は「災害対応」などを口実に統制要領を用いた共同の訓練を南西諸島をはじめ各地で行っている。日帝・自衛隊は、戦時輸送だけにとどまらない海保の全面的な戦争動員を進めているのである。
軍官民を挙げての国家総動員と対決し、中国侵略戦争を阻止しよう。
