三里塚耕作権裁判 農地奪う判決に怒り 「仮執行宣言」付かず

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週刊『前進』04頁(3390号04面02)(2025/04/07)


三里塚耕作権裁判
 農地奪う判決に怒り
 「仮執行宣言」付かず

(写真 デモ出発前に「不当判決弾劾!南台農地を守ろう」とシュプレヒコールを上げる三里塚反対同盟【3月30日 千葉県成田市】)

 三里塚芝山連合空港反対同盟・市東孝雄さんの南台農地をめぐる耕作権裁判で千葉地裁民事第2部・齊藤顕裁判長は3月24日、成田空港会社(NAA)の請求通り、市東さんに農地明け渡しを命ずる極悪の不当判決を出した。しかし判決の確定を待たずに強制執行を行える「仮執行宣言」を付けることはできなかった。市東さんと顧問弁護団は直ちに控訴し不当判決を打ち砕く意志を明らかにした。
 この日、全国から180人の労働者・農民・学生・市民が集まり、共に闘った。開廷前に千葉市中央公園で決起集会が開かれ、市内デモで農地強奪判決を許さぬアピールを一帯に響かせた。デモ後、入廷して席を埋める中、裁判長は判決主文を読み上げた。「被告は原告に対し、別紙記載の土地の部分を明け渡せ。訴訟費用は被告の負担とする」----。傍聴席から激しい弾劾の声が相次いだ。判決理由の要旨を読み上げ、「なお被告らが長年にわたり南台の土地等において農業を営んできたことなどを考慮して、仮執行宣言は付さない」と言い終えて逃げていく齊藤ら3人の裁判官に、怒りのシュプレヒコールがたたきつけられた。
 判決後、千葉県弁護士会館で判決弾劾集会が開かれ、市東さんが怒りを込めてあいさつに立った。「あまりにもひどい判決。19年にわたって私たちはあれだけ証拠を集め説明したのに、全てを否定された。これが国策裁判のやり方だ。しかし逆にファイトが湧いてくる。やられたらやり返す。今日を区切りに、これからも農地死守、戦争絶対反対を闘っていきます」。この揺るぎない闘争心に全員が熱い拍手を送った。
 弁護団が判決文のデタラメな内容を徹底批判した。齊藤判決は、NAAが「同意書」「境界確認書」という偽造文書をもとに賃借地の位置特定を主張して破産したことを踏まえて、位置なんかどうでもいいと開き直り、「土地の賃借権は認められない」「時効取得は認められない」と決めつけた。さらに成田は「開港から今まで空港として機能し続けている」と屈服を迫り、1994年に国・空港公団(NAAの前身)が「強制的手段を用いず、話し合いにより空港問題を解決する」と約束したにもかかわらず、今明け渡しを暴力的に迫っている問題についても、「民事訴訟手続きは別。北原派は成田空港の建設自体を許容していない。話し合う余地はない。だから権利濫用(らんよう)とか信義則違反はあたらない」とNAAを全面擁護し居直った。
 だが裁判長は仮執行宣言を付けられなかった。その理由を「被告が長年南台で農業を続けてきたから」などと温情をかけたかのように言うが、実際には「農地死守・実力闘争」の原則を貫き闘ってきた三里塚闘争の力が、判決確定前の強制執行という非道を阻んだのだ。これは重大な勝利だ。
 飛行差し止め訴訟の原告や全学連の連帯発言が続き、会場は、新たな闘いの決意を込めた大きな拍手に包まれた。
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反対同盟の弾劾声明(抜粋)

 千葉地方裁判所民事第2部・齊藤顕裁判長は3月24日、成田市天神峰で祖父の代から100年以上営農を続ける反対同盟員・市東孝雄さんに南台農地の明け渡しを求める不当判決を下した。最初から農地強奪の結論ありきの反動判決を満身の怒りを込め徹底弾劾する。
 19年に及ぶ裁判で明らかになったのはNAAの側こそが違法・脱法を繰り返してきたということだ。「あらゆる意味において強制的な手段を用いない」との社会的公約違反、耕作者に秘密裏での底地買収、15年にわたる地代のだまし取り、畑の位置特定に関する文書(NAAが明け渡しを求める根拠として提出した唯一の「証拠」だ)のねつ造、孝雄さんの父・東市さんの署名と印鑑の偽造......。これらすべてを合法としてお墨付きを与えた裁判所は万死に値する。
 判決は「賃貸借契約は面積の記載にとどまり、具体的な場所、範囲を定めるものではない。合意が成立した客観的証拠はない」と言う。だが「耕してよい面積はあるが、具体的な場所がない」などということがあるのか。市東さんは他ならぬ南台農地で有機無農薬野菜を育て、地代を支払ってきたのだ。位置が特定できないから、すべてを奪ってよいなどという理屈があるか! 恥を知れ!
 成田拡張の真の目的は中国に対する戦争準備であり、そのための軍事拠点づくりだ。政府は28日、追加で8施設を「特定利用空港・港湾」に指定し、滑走路の拡張・護岸整備をすると発表している。今回の判決は軍事空港建設のための反戦運動つぶしだ。成田を侵略のための出撃拠点にするわけにはいかない。
 「農地は命」だ。市東さんただ一人の問題ではない。人は空港がなくても生きられるが、農地なくして生きられる人はいない。われわれは空港周辺住民・全国の闘う仲間と共に、控訴審勝利、軍事空港絶対反対、農地死守・空港廃港へ向けて、より一層断固たる闘いに立ち上がることをここに宣言する。
2025年3月30日
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「農地は命」を否定する判決許さない
 3・30現地闘争での市東孝雄さんの発言

 耕作権裁判の19年間は何だったんだ! 裁判所が「事実を出せ」というので、こっちは一生懸命調べて出したんです。しかし判決には、そのことがまるっきりない。
 裁判所の作文は、2013年の農地法裁判の判決もひどかったが、今回の齊藤判決も怒りというか、あきれましたね。
 私たちは「農地は命」と訴え、一生懸命やってきたつもりです。それを何もなかったかのように否定され、「ABCDの土地の位置関係はどうでもいい」「南台41の1を耕しても、お前には権利がないんだ」と。そんな判決を絶対に許すわけにはいかない。
 高裁に行っても、もっとひどい判決が出るかもわからない。ですが皆さんとの絆というか、これからもこの畑でおいしい安全な野菜を作り続けて頑張ります。

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