焦点 ドイツ総選挙 極右伸長が示す政治支配の崩壊
週刊『前進』04頁(3385号03面03)(2025/03/03)
焦点
ドイツ総選挙
極右伸長が示す政治支配の崩壊
昨年11月の連立崩壊を受け、ドイツの総選挙が2月23日に行われた。与党の社会民主党(SPD)が歴史的な惨敗を喫し、最大野党「キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)」が第1党となった。極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は、前回の2021年を倍する過去最高の得票率を得て第2党へと浮上した。
「わが国第一」を掲げるAfDを勢いづかせているのは、帝国主義としての利害をむき出しにした米トランプ政権の再登場だ。米副大統領バンスや政府効率化省トップのイーロン・マスクはAfDを公然と支持し投票を呼びかけた。
今回の選挙結果が示すのは、単なる「極右の台頭」でも、人民の右傾化でもない。戦後世界の基軸国であったアメリカ帝国主義が既存の秩序を自ら破壊しながら中国侵略戦争へと突進する中で、欧州帝国主義の柱をなすドイツにおいても既存の政治支配の崩壊が進んでいることこそが事態の核心だ。
戦争と生活苦への怒り
背景には、欧州連合(EU)最大の経済大国ドイツの経済的破綻がある。ウクライナ戦争とトランプ再登場を受けたEU独自の軍備増強方針のもとで軍需産業は急成長する一方、米帝によるガスパイプライン爆破とロシアへの経済制裁は電気などのエネルギー価格や物価の高騰をもたらし、労働者人民の生活を直撃している。基幹産業である自動車産業を筆頭に多くの雇用が奪われ、昨年12月時点の失業者数はこの10年間で最多の280万人を突破した。中でも、AfDが州議会で第1党を占める東部チューリンゲン州など、1990年の東西統一から35年を経ても旧西独地域との経済格差が埋まらない旧東独地域ではAfDが支持を拡大し、ほぼすべての地域で第1党となった。今回の投票率は統一以来最高の約83%を記録したが、初めて投票した有権者の多くが既成政党への抗議としてAfDに票を投じたのだ。
AfDは卑劣にも人々の怒りを利用し、「移民が治安を脅かし、社会福祉制度を略奪している」などと排外主義を扇動して票をかすめとった。さらに、移民をアフリカなどへ強制送還する「再移民」や国境封鎖を公然と掲げている。チューリンゲン州の党支部共同代表ビョルン・ヘッケは「すべてをドイツのために」というナチ突撃隊のスローガンを公然と用い、刑事罰を科されても姿勢を変えていない。
革命党の登場が鍵握る
一方、次期首相候補メルツは「ロシアの脅威から欧州を守る」としてウクライナ軍事支援を重視し、長射程巡航ミサイル「タウルス」供与にも積極的だ。軍事における「脱米国依存」と「欧州の強化」を最優先事項とし「ドイツが再び欧州と世界の舞台に立つべきだ」と主張する。しかしドイツ人民は今回の選挙で、こうしたあり方にこそノーを突きつけたのだ。そして、ウクライナへの兵器供与停止を掲げたのがAfDだった。また、CDU・CSUは「AfDとの連立は拒否する」とするが、1月の連邦議会ではAfDと共に、政府に移民政策の厳格化を求める決議案を可決した。両者の排外主義的本質に変わりがないことを労働者人民は見抜いている。
青年層をはじめとするドイツ労働者人民が求めているのは社会の根底的変革であり、階級闘争の構図はアメリカや日本と全く同じだ。帝国主義戦争に絶対反対を貫く革命党の登場こそが鍵を握る。
