焦点 米政府効率化省 巨大資本によるむき出しの独裁

週刊『前進』04頁(3384号03面02)(2025/02/24)


焦点
 米政府効率化省
 巨大資本によるむき出しの独裁


 トランプは、世界最大の富豪、イーロン・マスクをトップに据えた政府効率化省(DOGE)を新設し、連邦政府のすべての省庁の予算・人員削減の権限を与えた。議会の審議と決議を経るべきことを、大統領令で決定したのだ。
 あらゆるブルジョア国家は資本家階級の独裁だが、通常はあたかも全国民の利害代表者であるかのように自己を押し出す。しかし大没落したアメリカ帝国主義は、その装いさえとれず、巨大資本トップが政府中枢を直接担い、「巨大資本の巨大資本による巨大資本のための政府」というむき出しの統治形態を取る以外になくなった。
 マスクには「効率化」の名で、全省庁に配下を派遣して監督する権限も、各省庁が保有する膨大な情報へのアクセス権も与えられた。例えば財務省の納税者情報には、財産・収入源・銀行口座・ID番号などのほか、連邦政府職員の給与、年金データ、諸団体への寄付による税控除の履歴も含まれる。つまり、個々人の政治思想も把握できる。現在、いくつかの連邦地裁でデータ閲覧が差し止められているが、トランプ、マスクは裁判を無視して強行する構えだ。

超大量解雇で労組破壊

 1月20日の政権発足直後、マスクは配下を連邦政府人事管理局(OPM)に送り込み、OPMをも支配下に置いた。1月28日にはOPMが約230万人の連邦政府職員全員に、希望退職を募るメールを発送した。それに応じたのは7万5千人だったが、トランプ政権はマスメディアとマスク所有のX(旧ツイッター)などのSNSを使って「公務員の腐敗一掃」を大宣伝し、2月13日には勤務歴1~2年の連邦政府職員約20万人の解雇を各省庁に通達した。
 またトランプは、教育省廃止の大統領令を出す意向を示した。同省職員4400人の全員解雇であるとともに、諸州の関係省庁の解雇にも連動する。消費者金融保護局も事実上の閉鎖に追い込んだ。
 また、1月28日に全米労働関係委員会(NLRB、日本の労働委員会に相当)の理事を解任した上、空席となった理事の任命を拒否。その機能を停止させ、廃止を狙っている。NLRBは数十年、形骸化・右傾化が進んでいたとはいえ、1930年代以来労働者が勝ち取ってきた機関だった。その最後の残影まで消し去ろうとしている。

対中戦争に一切を集中

 他方、軍事については年間100億㌦以上かかる新たなミサイル防衛システム計画を1月27日に発表、8950億㌦の史上空前の軍事予算に上積みする。トランプが中国・ロシアに提案した「軍事予算半減」など、煙幕でしかない。
 こうした中で2月3日、マスクは米国際開発局(USAID)の廃止を発表し、ウェブサイトの停止、メールの管理などに手を付けた。USAIDは「対外援助」を看板にして、米帝の対外介入・クーデター、侵略戦争を推進してきた機関だ。USAIDの機密情報をも手中にし、超独裁体制をつくるということだ。中国侵略戦争―世界戦争に集中するために、すべてをかなぐり捨てて既存の枠組みを自ら破壊している。
 だが、米連邦政府職員連合(AFGE)などの労働者は、民主党依存の既成幹部を乗り越え、実力行動を始めた。パレスチナ連帯闘争を不屈に闘ってきた労働者・学生がともに決起している。アメリカ労働者階級とともに中国侵略戦争阻止・世界革命に突き進もう。
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