2・23新宿反戦デモへ ウクライナ反戦闘争を闘い抜き中国侵略戦争・世界戦争阻止を

週刊『前進』04頁(3382号03面01)(2025/02/10)


2・23新宿反戦デモへ
 ウクライナ反戦闘争を闘い抜き中国侵略戦争・世界戦争阻止を

(写真 ウクライナ戦争開戦から2年の昨年2月24日、全学連のスクラム部隊を先頭に「戦争推進の岸田を倒せ」と新宿デモが闘われた)


 ウクライナ戦争開戦からまもなく3年。アメリカ帝国主義・トランプ政権は、自らの主導下でこの戦争にひとまずの「区切り」をつけることを画策している。トランプはウクライナにレアメタルなどの〝見返り〟を要求する一方、「ウクライナ戦争はヨーロッパの戦争だ」として、ロシア封じ込めの軍事負担を独仏など欧州帝国主義に押し付けた上で、米帝の総力を中国侵略戦争に注ぎ込むために「停戦」を画策しているのだ。ウクライナから始まった第3次世界大戦へのプロセスは米帝の大没落による戦後体制の最後的崩壊とその中での帝国主義の基本矛盾の爆発そのものであり、その歴史の歯車はトランプのもとで急回転しようとしている。中国侵略戦争・世界戦争を阻む闘いとして2・23ウクライナ開戦3年新宿反戦デモをかちとろう。

3年間で死傷者は百万人超

 ウクライナ戦争は、開戦から2年半を過ぎた時点で、ウクライナ軍の死者が8万人、負傷者が40万人に達し、ロシア軍も死者は20万人近く、負傷者は40万人を超え、双方合わせて100万人をはるかに超える死傷者が出ていると推測されている(昨年9月、米ウォールストリート・ジャーナル紙が報道)。さらにその後の半年間で戦闘は激化の一途をたどっており、とりわけウクライナ軍が占領したロシア西部・クルスク州の奪還に向けたロシア軍の攻撃は、北朝鮮兵も参戦して激しく展開されている。ウクライナ東部での侵攻作戦や首都キーウ(キエフ)など主要都市へのミサイル攻撃も激化している。
 ウクライナ軍のクルスク侵攻をめぐっては、昨年8月6日の奇襲作戦で一時占領下に置いた地域(約1300平方㌔メートル)の半分近くが、すでにロシア側に奪い返されたと見られており、米欧などの研究機関はおおむね「ウクライナ側の戦略的惨敗」と見なしている。米バイデン前政権は昨年11月、ウクライナの強い要請を受けて長射程ミサイルのロシア領内への発射を許可、英仏もこれに続き、ただちにウクライナ軍によるミサイル攻撃が始まったが、何ら戦況を打開することはできなかった。
 ウクライナ東部では、ロシア軍が昨年秋以降急速に支配地域を拡大した。米シンクタンク・戦争研究所(ISW)によると、ロシア軍は24年1~11月までに約2700平方㌔メートルを新たに占領、23年に占領した465平方㌔メートルの6倍近くになる。だが、ウクライナの軍事的苦境が深まる一方、ロシア軍の人的損害も加速度的に増大しており、昨年12月の1日あたりの死傷者数は半年前から1・5倍増の1570人に達したと見られる(英国防省発表)。昨年全体の死傷者数も43万人近くに上り、23年の約25万3千人から7割増となった。
 こうした中で、今やロシア・ウクライナ双方の国内で厭戦(えんせん)機運が高まり、兵力の確保が著しく困難化している。ウクライナでは、特に23年6月からのウクライナ軍の「反転攻勢」が無残な大失敗に終わって以降、徴兵逃れのための国外逃亡や兵士の脱走がこの1年あまりの間に急増しており、ウクライナ検察庁は昨年12月、「脱走法違反」で起訴された兵士が22年2月以来10万人を超えると発表した。実際の脱走兵は20万人以上とも言われる。徴兵官が街中で人さらい同然に若い男性を連行し、訓練もさせずに前線に送り込むといったことが日常化している。ロシアでも同じく徴兵と徴兵逃れのための国外逃亡が増加し、それによる労働力不足も深刻だ。
 ウクライナの経済と人民の生活もまた壊滅的状況に追い込まれている。世界銀行などの調査によると、23年12月時点でウクライナの戦争被害額は1520億㌦(約23兆円)、再建・復旧費用は4860億㌦(約73兆円)と推計され、経済規模は開戦前の3分の1にまで落ち込んだ。また国連によると、民間人の死傷者は開戦から昨年12月までに4万人を超え、特に昨年1年間の死傷者数は前の年よりも30%増加。国外に逃れたウクライナ難民は11月時点で約678万人となり、出生率は開戦前の約3分の1となった。
 ロシアでも戦費の増大、制裁による輸入制約、さらに通貨急落で物価高騰が深刻化しており、国内の矛盾が激化している。開戦3年を前に、ウクライナ・ロシア双方で労働者人民の忍耐は限界に達し、その憤激がいつ爆発するかわからない状況になっているのだ。

帝国主義の「対ロシア戦争」

 ウクライナを地獄の戦場に変え、ロシア・ウクライナ双方の兵士と人民におびただしい犠牲者を出しながら3年にわたり続けられてきた戦争は、これまで通りには継続できない状況となりつつある。こうした中で米帝トランプは、この戦争にひとまずのけりをつけようとしている。だがそれは、戦争勃発にまで至った米欧日帝国主義とロシア・プーチンとの対立・矛盾を何ら解決するものではなく、むしろ中国侵略戦争・世界戦争の爆発に向かって歴史の歯車をさらに急回転させるものでしかない。
 そもそもウクライナ戦争は、本質的にも実体的にも「米帝が主導する米帝の戦争」であり、ウクライナを前面に立たせた米帝・帝国主義による(中国侵略戦争を見据えた)対ロシア戦争にほかならない。ドイツのシンクタンク・キール世界経済研究所(IfW)によると、24年12月までに米欧など41カ国によるウクライナ軍事支援総額は1760億㌦(約27兆円)、財政支援は1110億㌦(約17兆円)で、その額は同じ3年間のウクライナの名目国内総生産(GDP)の55%以上に相当する。人工知能(AI)やドローンを駆使した最新兵器、弾薬、戦闘機、戦車、さらには衛星通信システムを用いた軍事情報など、ウクライナの軍事力の一切は米帝をはじめ帝国主義によって直接与えられたものであり、これらなくしてウクライナは一日も戦争を継続できない。ゼレンスキー政権は帝国主義の先兵として、帝国主義の利益のための戦争に自国の人民を動員しているのだ。
 そして重大なことは、米帝にとってウクライナ戦争が軍事的にも中国侵略戦争の「前哨戦」としてあるということだ。沖縄に駐留する米海兵隊第3海兵遠征軍司令官のビアマン中将は23年1月、英フィナンシャル・タイムズ紙上で「われわれはウクライナで大きな成功を収めた。それは2014年以来、ウクライナ人の訓練、物資の事前配置、支援活動や作戦を維持する拠点の特定などに取り組んだからだ。われわれはこれを『セッティング・ザ・シアター(戦域設定)』と呼んでいる」と述べ、「その成功事例を踏まえ、現在は中国との戦争に備えて日本と準備を進めている」とまであけすけに語った。実際、米帝は14年に「親ロシア派」と見られていたヤヌコビッチ政権をクーデターで転覆、これに対抗してプーチンがクリミア半島を併合すると、ウクライナへの軍事支援を本格的に開始し、21年までの7年間で総額25億㌦超の支援を与えてウクライナを「反ロシア軍事国家」へと造り変えた。また、それと並行してウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を推し進め、ロシア・プーチンをぎりぎりと追い詰めて戦争に引きずり込んだのである。
 そして今まさに、これと同様の戦争準備が台湾に対して行われ、沖縄を含む東アジアの広範な地域が「戦域」にされる形で、米帝の中国侵略戦争が引き起こされようとしているのだ。

反帝・反スタを貫き闘おう

 以上の通り、ウクライナ戦争は徹頭徹尾、米帝をはじめとした帝国主義が準備し、勃発させ、莫大(ばくだい)な金と武器を延々と送り続けて継続させている戦争である。帝国主義に支援された「民族解放」などありえず、この戦争に「ウクライナ解放戦争」としての性格など1ミリも含まれていない。ところが、日本政府やその意を受けたマスコミはもとより、日本共産党やカクマル、さらには革共同から脱落・逃亡した「EL5」に至るまで、左翼・リベラルを自称する一切の勢力が帝国主義と口をそろえて「ロシアの侵略を許すな」「これはウクライナ防衛(解放)戦争だ」などと叫び、ウクライナ国旗を振って帝国主義戦争を応援するという醜悪極まる姿をさらけ出している。
 レーニンは論文「マルクス主義の戯画と『帝国主義的経済主義』とについて」(全集第23巻所収、1916年)の中で、「戦争は政治の継続である。戦争以前の政治、すなわち戦争に導く政治、実際に戦争に導いた政治を、研究しなければならない。もし政治が帝国主義的なものであるならば......この政治から生じる戦争も、帝国主義戦争である」と述べ、「帝国主義的な大国のあいだの戦争、あるいはそれらの大国と同盟してする戦争は、帝国主義戦争である」と断じる。これに反して祖国防衛主義に屈服した勢力は、「戦争が『政治の継続である』ことを理解しない。だから、『敵が攻撃した』、『敵がわが領土に侵入した』などということばかりにこだわって、戦争がなにがもとで、どの階級によって、どんな政治目的のために行われているかを検討しない」のだと喝破している。
 ソ連崩壊からウクライナ戦争の勃発に至るまでの30年あまりの歴史は、一貫して米欧帝国主義による旧スターリン主義圏の東欧への進出と勢力圏化、NATO東方拡大の過程である。それがついにロシアののど元のウクライナ、欧州随一の穀倉地帯であり、レアメタルなどの鉱物資源を抱え先端技術など潜在的成長力を持つウクライナにまで手を延ばすに至った。これが14年のクーデターとロシアのクリミア併合、その後の内戦、そして22年からの本格的な戦争へと導いた「戦争以前の政治」だ。そして同時に米帝は、大没落からの巻き返しと延命をかけて中国スターリン主義に対する侵略戦争・世界戦争を決断し、実際に全体重をかけて動き出した。このことが、プーチンをしてウクライナへの軍事侵攻を決断させた。すなわちプーチンは、中国侵略戦争を前に米帝はウクライナに直接介入することまではできず、米帝との戦争を構えなければならない中国もロシアを見捨てることはできないと考え、戦争に踏み切ったのだ。
 米帝の大没落と中国侵略戦争への突入という世界史的事態の中で、ウクライナ戦争が引き起こされ、さらに米帝・イスラエルの中東・ガザへの侵略戦争を激化させている。ウクライナ反戦闘争、パレスチナ連帯闘争を、中国侵略戦争阻止の反戦闘争の決定的な一部をなすものとして、帝国主義打倒、スターリン主義打倒の闘いとして貫徹しなければならない。2・23新宿反戦デモに結集しよう。

このエントリーをはてなブックマークに追加