海兵隊トップグアム移転に「異議」 戦争準備急ぎ在沖部隊強化へ 06年米軍再編計画の転換狙う
週刊『前進』04頁(3382号02面01)(2025/02/10)
海兵隊トップグアム移転に「異議」
戦争準備急ぎ在沖部隊強化へ
06年米軍再編計画の転換狙う
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(写真 2018年のアイアン・フィスト【米カリフォルニア州】)
米海兵隊トップのエリック・スミス総司令官が、沖縄に駐留する海兵隊員の米領グアムへの移転について「われわれを誤った方向に導く」として異議を唱え、中国を名指しして「グアムは危機の現場からはほど遠い」などと発言していたことを、1月17日に米軍の準機関紙・星条旗新聞など複数の米メディアが報じた。15日に米国内で開かれた、国防記者協会の会合で言及したという。日米政府の「公式」の計画に米海兵隊トップが反対意見を述べるのは異例のことである。だが、これこそアメリカ帝国主義が沖縄を戦場化する中国侵略戦争を本気で構え、その実行のための準備を進めていることを示すものだ。
「沖縄の負担軽減」はペテン
2006年5月に米日両政府は「米軍再編のためのロードマップ」に合意し、V字型2本の滑走路を持つ辺野古新基地建設計画を決定、それと一体で在沖海兵隊のグアム移転を確認した。約1万9千人いる在沖海兵隊のうち約9千人とその家族を移転させることが決定されたのだ。米日政府はこの海兵隊移転計画を「沖縄の負担軽減のため」と称してきたが、実際は米軍のアジア重視戦略に基づく再編計画の一環にすぎず、移転も一向に進まなかった。ようやく昨年12月14日、グアムへ移転する計画となっている4千人のうち100人が初めて移動を開始したが、スミス司令官はこれを「誤った方向」だと述べたのだ。
米日帝国主義は実際には、「沖縄の負担軽減」をも口実としながら中国侵略戦争の準備を進めてきた。グアムに移転される予定の海兵隊部隊とは歩兵と後方支援部隊にすぎず、海兵沿岸連隊(MLR)のような「遠征前進基地作戦(EABO)」を中心で担う砲兵部隊は入っていない。司令部も移動する予定だが、中国からのミサイルなどによる反撃が容易に届く沖縄本島から司令部を後退させるということであり、戦争を実際に行うための準備の一環だ。他方、グアムでは移転を口実に86億㌦の資金を投じて訓練場など基地機能の強化・拡張が行われ(うち日本が現時点で27・5億㌦を拠出)、グアム島のアンダーセン地区やテニアン島にある訓練場は自衛隊との共同使用を前提に整備が進められている。つまり、実際に進められてきたことは中国侵略戦争をにらんだ米軍の再編と自衛隊との連携強化なのである。
また、「沖縄の負担軽減」を口実に沖縄県外での日米共同訓練は増加した。その一つとして17年から始まった「ノーザン・バイパー」は、自衛隊と米軍との「相互運用性の向上」を掲げ、オスプレイなども利用して北海道の演習場にある各拠点を島に見立てて行う、南西諸島での戦闘を想定した訓練だった。同訓練は21年には「EABOを踏まえた訓練」と位置づけられて名称を「レゾリュート・ドラゴン」へと変更、24年からは南西諸島を舞台とする最大級の日米共同訓練となった。つまり米軍・自衛隊は、新作戦EABOとそれに必要なオスプレイの長距離運用試験、米軍・自衛隊の連携強化を円滑に行うために「沖縄の負担軽減」を掲げて各地の自治体に演習の増加・激化をのませてきたのである。
今回の米海兵隊トップの発言は、中国侵略戦争にさらに加速して突進するために「海兵隊を移転するのはもはや『本当の目的』に沿わない」という米日帝の本音であり、「負担軽減」などという建前などもはや投げ捨てても構わないという居直りなのである。
九州・沖縄で強襲上陸訓練
2月19日から3月7日にかけて、日米共同訓練「アイアン・フィスト25」の強行が狙われている。陸上自衛隊から水陸機動団など約1300人、米軍から沖縄に駐留する第31海兵遠征部隊など約2700人が参加し、前回から倍増。過去最大規模の計約4千人が参加し、九州・沖縄の各地で訓練を行う。その内容は強襲上陸作戦に特化したものだ。米海兵隊の輸送機MV22オスプレイが今回初めて鹿児島県の沖永良部島に飛来し、より本格的な訓練になろうとしている。アイアン・フィストは2005年、米カリフォルニア州に自衛隊の部隊を招き、米海兵隊が水泳訓練などのまさしく「新隊員教育」を施すところから始まった。同訓練に参加してきた西部方面普通科連隊が18年に水陸機動団へと改編され、レゾリュート・ドラゴンなどの日米共同訓練における自衛隊側の中心となってきた。その意味で米軍・自衛隊の中国侵略戦争へ向けた象徴的訓練がアイアン・フィストなのだ。
また1月10日、米国外に展開する最大の海軍部隊であり、神奈川県横須賀基地を拠点とする米第7艦隊の司令官は、人工知能(AI)を搭載した無人機・無人艇が第7艦隊に導入される見通しを示した。これは米国防総省が23年8月に発表した、ドローンを数千規模で台湾海峡に展開し「地獄」(米インド太平洋軍司令官パパロ)をつくり出すという「レプリケーター1」構想の具体化である。
米軍は無人機・無人艇の導入・生産体制を急速に整え始めている。ウクライナ戦争で脚光を浴びた「新戦力」である無人機は、産業として参入しやすく、米国では30社が新たに軍需企業として台頭。ウクライナやパレスチナでおびただしい数の人民の血を吸いながら「成長」している。
沖縄―本土の戦場化を前提とする米軍・自衛隊の強化と軍事演習の激化を許してはならない。中国侵略戦争の「要」となる日本から反戦闘争を巻き起こそう。
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