支配の破綻示す経労委報告 石破を支える連合倒し戦争阻止の反戦春闘を
週刊『前進』04頁(3381号02面04)(2025/02/03)
支配の破綻示す経労委報告
石破を支える連合倒し戦争阻止の反戦春闘を
トランプの再登板は労働者階級を試練のふるいにかけている。階級的労働運動をよみがえらせ、中国侵略戦争を必ず阻止しなければならない。石破政権と資本も今まで通りの支配を維持できない危機にある。25春闘は労働者が階級性と階級的団結を取り戻せるか、排外主義と戦争にのみ込まれるかを分かつ決戦だ。
さらなる雇用破壊に踏み込んだ資本
経団連が出した「2025年版経営労働政策特別委員会報告」は、破綻しきった支配の立て直しを図る資本のあがきの象徴だ。同報告は「序文」で、2023年が賃金引き上げの「起点」となり、24年でそれは「加速」し、25年を「賃金引き上げの力強いモメンタムを『定着』させる年としたい」と言う。そして、日経連と経団連が統合して最初に出された03年の経労委報告が「ベースアップは論外。定期昇給の凍結・見直しも労使交渉の対象」と叫んだことにあえて言及し、それが「賃金水準の低迷をもたらした可能性は残念ながら否めない」と「反省」してみせる。
石破も施政方針演説で、「経済政策にとって最重視すべきは賃上げだ」と表明した。資本と石破は、三十数年にわたって賃金が下がり、雇用が破壊されてきたことへの労働者の激しい怒りにおびえつつ、支配の再編に乗り出してきたのだ。
23年以来の「賃金引き上げ」も、対象は大企業の正社員に限られ、その水準も物価上昇率には及ばなかった。「失われた三十年」(労働者にとっては「奪われた三十年」だ!)を取り戻そうとすれば、賃上げ率は5~6%のレベルに収まるはずがない。非正規職労働者は全労働者の37・1%を占め、最低賃金の引き上げによって法的に賃上げが必要となる労働者、つまり最賃すれすれで働く労働者の割合も21・6%に達する。戦時インフレ下で、ほとんどの労働者には賃上げなど別世界の話だ。
経労委報告は「構造的な賃金引き上げ」とセットで「労働生産性の改善・向上」や「働き方改革フェーズⅡ」を押し出している。その中身は「労働時間をベースにしない処遇」であり、労働時間規制をなくすための労働法制の改悪だ。
攻撃の柱は雇用の徹底した流動化だ。労働者にリスキリング(技能や知識の学び直し)を強い、労働移動を「円滑化」させ、ジョブ型雇用を拡大する。ジョブ型雇用とは、労働者が従事する職種を限定し、企業内にその職種がなくなればいつでも解雇できる制度だ。
そのもとで産業と労働力配置の徹底的な再編が狙われている。労働者に襲いかかるのは解雇攻撃だ。深刻な労働力不足を逆手に取り、失業率が数値の上では大幅に上昇することはないと見込んで、資本は大量首切りに踏み込んできたのだ。24年に上場企業が行った「早期・希望退職」の募集人員は1万9千人で、前年の3倍以上になった。同年の企業倒産件数も11年ぶりに1万件を超えた。
同報告は「企業は、コスト圧縮という経営上の要請と雇用の維持・安定という社会的責務の狭間で、苦渋の選択として、1990年代後半以降、賃金引き上げを抑制した」とうそぶく。逆に言えば経団連は、賃上げを口実にもはや雇用は維持しないと断言したのだ。
戦争・大軍拡推進の連合と国民民主
この攻撃を支えているのは連合だ。連合が出した見解は、経労委報告を「2025春季生活闘争の歴史的な意味について基本的に共通している」と絶賛した。連合の春闘方針は、「20年以上にわたる賃金水準の低迷、その中で進行してきた不安定雇用の拡大と中間層の収縮、貧困や格差の拡大などの課題について中期的な分配構造の転換をはかる」と言う。だが、労働者に低賃金を強い、非正規雇用を拡大し、貧困と格差に労働者をたたき込んできた一方の主犯は連合だ。
連合は今や、賃金が上がるなら軍需生産にも協力するという産業報国会の道を走っている。連合を支持母体にする国民民主党は、「能動的サイバー防御法案」の今国会提出を一度は断念した石破政権を反動的に突き上げて、同法案の概要をまとめさせた。「年収の壁」問題で同党の主張が通れば、8兆7千億円の大軍拡予算にも賛成する方針だ。同党の基本政策は「手取りを増やす」「自分の国は自分で守る」というものだ。中国との戦争をあおり、原発再稼働・新増設を叫んでいる。昨年7月の都知事選では、少子化対策として一夫多妻制を叫ぶ極右の石丸伸二を応援した。
同党が言う「手取りを増やす」は、資本と闘って大幅賃上げを勝ち取るというものではもちろんない。課税最低限が103万円に据え置かれているのは、労働者に低賃金が強いられてきたからだ。それを全く問題にしない同党の政策はペテンだ。確かに税負担の重さは耐え難い。だが、同党は階級間対立の問題を現役世代と高齢者の対立にすり替え、資本に向けられるべき人民の怒りを差別と排外主義にねじ曲げている。
大軍拡を容認しつつ減税を求める同党の政策は、結局は社会保障の解体と後から襲いかかる破滅的大増税に行きつかざるを得ない。同党は実際には、社会保障の最後的解体に向けて極端な新自由主義攻撃をたくらむ、トランプ流の大資本家の代弁者だ。そもそも「年収の壁」打破の根本的な目的は、非正規職労働者をさらに長時間働かせて軍需生産に動員することにある。
中国侵略戦争阻む階級的労働運動を
少数与党に転落した石破政権は、国民民主党を引き込まなければ政権を維持できない。連合も、極右的に突出する同党を支持政党にしなければ、求心力を最後的に失う。これは支配の根本的な崩壊を示している。かつて経団連は「労使は社会の安定帯」と豪語した。だがそれは経団連自身が展開してきた新自由主義によって崩れ去った。だから経団連は、連合に支配力などないことを十分に承知しながらも、連合に依拠せざるを得ないのだ。石破政権にとってもそれは同じだ。経労委報告は末尾で、「『未来協創型』労使関係」を叫び、「労使は『闘争』関係ではなく……未来を『協創』する関係」だとうそぶく。他方で経団連は、連合が急速に組織力を失うことも想定して、「労働組合を介さない労使コミュニケーション」を模索せざるを得ない。「労組なき社会」化の攻撃だ。
連合支配の破れ目を突いて、階級的労働運動が台頭してくることに資本はおびえている。11月労働者集会勢力が力をもって登場するときは今だ。実力で大幅賃上げを勝ち取ろう。反戦春闘を貫徹し、中国侵略戦争阻止の大闘争に立とう。25春闘は階級的労働運動をよみがえらせる決戦だ。