イスラエル、西岸に大攻撃 「停戦合意」直後新たな戦争開始
週刊『前進』04頁(3380号03面02)(2025/01/27)
イスラエル、西岸に大攻撃
「停戦合意」直後新たな戦争開始
1月15日、米トランプ政権発足を前にしたガザ大虐殺・中東侵略戦争のエスカレーションの中で、ハマスとイスラエルが「19日から6週間の停戦で合意した」と発表された。だが、その後もイスラエルはガザへの空爆を続け、停戦発効からわずか2日後の21日にはヨルダン川西岸北部で新たな戦争を開始した。あくまでもパレスチナ人民の完全屈服、民族解放闘争の完全解体を狙うイスラエルは、トランプを後ろ盾としてますます凶暴化している。
ガザ空爆も継続百人以上を殺害
「停戦合意」の内容は、3段階からなる停戦の第1段階にあたる6週間で、ハマスの人質33人の解放と引き換えに、イスラエルも収監中のパレスチナ人数百人を釈放。この間、軍事行動を停止し、イスラエル軍はガザの人口密集地から撤退するというものだ。合意が発表された15日以降、イスラエルはガザ北部への空爆を続け、17日までに103人を虐殺した。ネタニヤフ首相は18日、「合意したのは一時的な停戦にとどまる。必要であれば米国の支援のもとで戦争を再開する」と公言。停戦発効当日の19日朝にも「ハマスが解放する人質のリストを明かさなかった」ことを口実に攻撃を強行し、19人を殺害した。さらに発効翌日の20日に至るもイスラエル軍は南部ラファで散発的な攻撃を続け、子どもを含む2人を殺害した。パレスチナ民族解放闘争を完全に圧殺する以外に存立できないイスラエルは、今も虐殺を継続している。
一方、極右政党「ユダヤの力」は18日、停戦合意に反発して連立政権からの離脱を表明した。スモトリッチ財務相も停戦に反対していたが、ネタニヤフは「停戦に合意すればトランプが西岸へのユダヤ人入植を後押ししてくれる」との「見返り」を示して説得した。スモトリッチは停戦後も「6週間以内に戦闘を再開しない限り連立を離脱する」と主張している。
そして21日、イスラエルは西岸北部ジェニンで「テロ撲滅」を掲げて大規模な軍事作戦を開始した。複数回の空爆と地上部隊の攻撃で10人が死亡し、40人が負傷した。ネタニヤフは声明で「イランが影響力を及ぼすところはどこであれ断固とした行動を取り続けている」と述べている。
2千世帯以上の家族を皆殺しに
ガザ地区の広報当局は21日、一昨年10月7日以降のイスラエルによる攻撃の被害をまとめた統計を発表した。4万7千人が死亡し、1万4千人が行方不明。停戦後の捜索により、20日にラファで137人が遺体で見つかるなど、死者はさらに増え続けている。犠牲者の7割は女性と子どもで、戦闘が始まってから生まれた子どものうち214人が死亡した。2092世帯は家族全員が殺害され、両親もしくは片親がいない子どもは3万8495人に上る。栄養失調では44人が死亡し、3500人の子どもが今後、死亡する恐れがある。さらに、子ども7人を含む8人が凍死。ガザ地区の実に88%が破壊され、被害額は380億㌦(約6兆円)以上と推定される。米帝・イスラエルは1年3カ月を超える大虐殺戦争で、これほどまでの破壊と殺りくを繰り広げ、パレスチナ人民を飢餓や病気のはびこる地獄にたたき込んできたのだ。その上、イランやシリア、レバノンといった中東各国にも侵略戦争を拡大させた。
しかし、パレスチナ人民の不屈の闘いは、米帝とイスラエルをじりじりと追い詰めてきた。米国を含む全世界でパレスチナ連帯闘争が巻き起こり、今も続いている。中東での戦火の拡大に対し、イスラエル国内からもネタニヤフ政権への不満が噴出し、イスラエルはこれ以上の長期戦に耐えられなくなっていた。
その中でトランプは、一方では、20日の大統領就任式までにハマスが人質を解放しなければ「米国史上、最も強力な打撃を与える」と核使用をちらつかせた最大限の恫喝を行い、他方では、ネタニヤフに対しても「停戦」に応じなければイスラエルとの関係もどうなるかわからないという強力な圧力をかけた。そして「自分だけが戦争を終わらせることができる」と示して求心力を高めると同時に、中国侵略戦争に全ての力を集中するために、「中東戦線」の一定の「整理」を図ったのだ。
だが、国防長官に指名されたヘグセスは14日、「イスラエルの防衛を断固支持する」「イスラエルがハマスのメンバーを一人残らず殺すことを支持する」と発言。駐イスラエル大使に指名されたハッカビーは西岸併合の支持者として知られる。トランプ政権がパレスチナ抹殺攻撃を全力で後押ししていくことは明白だ。
中国侵略戦争・世界戦争の進行の中で、米帝・イスラエルはガザ「停戦」をもてこに中東全域への侵略戦争を一層激化させている。ガザ虐殺と西岸での大攻撃を徹底弾劾し、パレスチナ連帯を貫く国際反戦闘争のさらなる爆発へ闘おう。