トランプ打倒へ闘い始まる 米階級闘争は内乱的激突へ 連帯し中国侵略戦争阻止を
トランプ打倒へ闘い始まる
米階級闘争は内乱的激突へ
連帯し中国侵略戦争阻止を
第2次トランプ政権発足をもって世界は、革命と反革命が公然と激突する戦争と革命の時代に踏み込んだ。トランプは就任初日から26の大統領令に署名し、国家非常事態を宣言。国防長官ヘグセスをはじめ全閣僚を対中国強硬派で固め、「米国第一」を掲げて「中国による侵略を抑止する」と主張し、中国侵略戦争―世界戦争へと突進しようとしているのだ。トランプ打倒に決起するアメリカ労働者階級人民と連帯し、共に米日帝国主義の中国侵略戦争絶対阻止へ闘おう。
全米100カ所以上で集会・デモ
大統領就任式の1月20日を前後して、首都ワシントンをはじめとして全米100カ所以上でトランプ打倒の集会・デモが行われた。2017年の第1次トランプ政権発足時との最大の違いは、体制内的潮流が大後退し、反戦を真っ向から掲げて戦闘的内容で勝ち取られたことだ。
20日の就任式当日には、前夜からワシントン市内で警察と対峙(たいじ)して路上を守り抜いた勢力を含めて、「移民強制送還反対」「イスラエルに武器を送るな」「軍拡反対」を掲げて戦闘的な集会・デモが意気高く行われた。そこではトランプ・共和党への怒りだけでなく、「スムーズな政権移行」を掲げてトランプに協力する民主党に対する弾劾も叫ばれた。23年10・7パレスチナ蜂起以来の「ジェノサイド・ジョー」への怒りがあふれた。
サンフランシスコでは19日に、メインストリートの車線いっぱいに広がった大デモが行われ、移民労働者団体、港湾、都市交通、教組、ホテルなどの労組員、学生などが参加した。内陸部のシカゴでも厳寒の中、シカゴ教組、都市交労組などの諸労組と移民団体の共催で巨大なデモが行われた。同教組は、ストの力を土台に19年に締結した労働協約に「学校には移民関税執行局(ICE)を立ち入らせない」条項を加えることに成功している。
ロサンゼルスでは、大火災の最中にもかかわらず、火災被害の大きなハリウッド地区を職場とする舞台労働者組合やホテル労働者組合、ロサンゼルス統一教組(UTLA)組合員などが多数デモに参加した。
米帝の延命かけ国家大改造
トランプは、20日の就任演説の冒頭、署名する大統領令の「第一」が国家非常事態の宣言と南部国境への軍隊派遣、何百万の外国人の送還だと述べた。
「非常事態」だとして国内政治に軍を使うことは、事実上の戒厳令の発動だ。軍を「南部国境」に派遣すると言いながら、「内陸部の諸都市の外国ギャング」を取り締まるとも強調している。いつでも全土で軍隊を使うということだ。
アメリカ労働者にとって移民労働者は、職場の同僚であり、労組の仲間だ。移民強制送還をめぐる大激突は不可避だ。それは「軍服を着た労働者」である兵士の労働者本隊への獲得―反乱をはらみ、革命を眼前に引き寄せるものとなる。
次にトランプは、「国家エネルギー非常事態を宣言する。採掘を行う。採掘だ」、そして「米船舶は公平に扱われていない。これには米海軍も含まれる。中国がパナマ運河を運営している」「パナマ運河を取り戻す」と主張した。対中国問題としてパナマ運河奪取を語っているのだ。
さらにトランプは、就任初日に署名した26本(表参照)に続き、200本もの大統領令に署名しようとしている。主なものとしては、①米国籍取得の出生地主義の撤廃(米国憲法第14条違反)、②国際環境諸協定にアメリカファーストを貫く(環境諸協定の破棄・脱退)、③エネルギー採掘促進、④国家エネルギー非常事態の宣言、⑤対外援助の再編、⑥死刑復活と治安維持、⑦政府効率化省の設立などだ。
②③④⑤は、大没落したアメリカ帝国主義が石油を軸として世界支配を再建しようとする策動だ。そのために国際的な諸条約、合意を一方的に破棄し、強引な争闘戦に打って出る。「グリーンランド獲得」、「カナダ併合論」なども世界体制の枠組み、国際法などを破壊し、がむしゃらに争闘戦を貫くということだ。
だが問題は、すでに米帝が大没落し、世界制圧力が弱体化していることだ。だからこそ、怒りが噴出する国内階級闘争を制圧し、挙国一致体制をつくるために必死なのだ。その要石が「政府効率化」だ。公務員労働者の大量解雇と労働運動破壊、そして公共事業・福祉・教育などの破壊である。
世界一の超富豪であり、経営するテスラなどで悪辣(あくらつ)な労働者攻撃の実績をもつイーロン・マスクを効率化省のトップに据え、その他にも巨大資本家を直接に政府に参加させて、このような政策を推進しようというのだ。
政府は支配階級の政治委員会にすぎない。しかし、支配階級の特殊利害を「普遍的なものとして押し出す」必要があるため、通常は巨大企業経営者が直接に政府閣僚になることはまれだ。だがトランプ政権は、露骨に「巨大資本の政府」なのである。
トランプはファシストだが、1920~30年代のイタリア・ファシズム、ドイツ・ナチズムと違い、労働者階級の拠点を暴力的に破壊し、壊滅的敗北を強いて登場したわけではない。ナチスの突撃隊(SA)、親衛隊(SS)のような歴戦のテロ部隊を持っているわけでもない。現状はファシスト体制の確立とはほど遠い。労働者階級の革命性は健在であり、巨大な隊列が次々に登場しているのだ。
アメリカ革命の現実性示す
トランプを生み出したものは、戦後世界体制の基軸国・米帝の大没落だ。そして、その大没落のもとで、米国内の階級闘争が発展し、これまで通りの支配が不可能になった。支配階級は、「従来型の政治家とは違う」ものとしてトランプを押し立てざるをえなくなったのだ。だから、トランプは、MAGA(メイク・アメリカ・グレート・アゲイン、アメリカを再び強大に)をスローガンにしているのだ。「アメリカはもはや強大ではない」と認め、どんな手段を使ってでも巻き返すぞという宣言だ。アメリカ・ファーストは、敵国だけでなく同盟国にも容赦しないということだ。
2008年、国際港湾倉庫労組(ILWU)は、ローカル10(第10支部)の主導でイラク・アフガニスタン戦争反対を掲げ、米帝にとって最重要の戦略的インフラである西海岸の全港湾を封鎖した。米帝中枢と経営者団体は、「戦時下の祖国への裏切り」として事前にILWUを恫喝したが実力闘争を止められず、事後も処分できなかった。
没落する米帝の唯一の「強み」である軍事・戦争に対して、抽象的な「平和」運動ではなく、真正面から実力で戦争と国家権力に打撃を与える反戦運動を貫徹する労働運動が登場している。
ILWUローカル10をはじめとする戦闘的・階級的な労働組合に対し、支配階級は激しい攻撃をかけ、あるいは取り込みを策動したが、団結は崩れず、不屈の闘いが続いている。10・7パレスチナ蜂起に際しても、ローカル10は、数十年のパレスチナ連帯の蓄積の上にさらに闘いを倍加し、地域活動家と共に港湾からの武器輸送阻止に決起した。そして組合員大会でパレスチナ連帯・ジェノサイド阻止の決議を上げ、パレスチナ連帯と具体的行動を伴う反戦決起を全労働組合に呼びかけている。
全米自動車労組(UAW)は、現職・退職者を合わせて100万人の巨大組合であり、関連産業も多く、米労働運動内で絶大な影響力をもっている。そのUAWの戦闘的潮流は、学生運動と結合してキャンパス内の占拠キャンプ闘争に決起し、また全UAW組織内にパレスチナ連帯の闘いを押し広げた。「イスラエル反対=反ユダヤ主義=差別者」とするシオニズムの影響下に置かれてきたアメリカの既成労働運動のあり方を大転換するものだ。
シカゴ教組とUTLAは、地域の組織・未組織の労働者と結びつき、地域全体の労働運動の団結を組織しながらストを打ち抜き勝利してきた。それはオバマ、バイデンの教育民営化・学校閉鎖=地域破壊との闘いだった。
資本家階級と労働者階級の非和解性を隠蔽(いんぺい)し、民主党と共和党との対立にすべてを流し込んでいくのが、1930年代以来のアメリカの既成労働運動だった。戦闘的労働運動といえども、既成の枠組みと強烈な統制を突破することは非常に困難だった。だが2008~24年の過程で、この二大政党制の枠から独立した闘いが、大衆的な規模でつくられたのだ。
「ストは共和党票を増やす利敵行為」というかつての労組官僚の抑圧が通用せず、ボーイング社の長期ストが行われ、西海岸のILWUと比べて右派と言われてきた東海岸の国際港湾労働者協会(ILA)までもが47年ぶりのストに決起した。中小も含めるとインフレに怒る労働者のストの波は記録的になっている。
そして23年10・7蜂起に「あいまいさなく連帯する」大学決起が全体を牽引(けんいん)した。米帝の世界支配の要であり、イスラエルの民族絶滅的攻撃を受け続けてきたパレスチナ人民の蜂起に感動し、「血債の思想」の質をもって長期不屈に闘い続ける学生集団が全米に現れた。
このアメリカ革命の現実性に対し、かつてなく凶暴なトランプ反革命が登場したのだ。トランプは、国内の階級的矛盾を排外主義にそらし、階級闘争を「非国民」として圧殺するためにも中国侵略戦争に突進しているのである。
アメリカ労働者と連帯し、反帝・反スターリン主義世界革命へ共に闘おう。
〔村上和幸〕