正義と真実貫き政治弾圧と闘う 暴処法弾圧裁判/冨山小太郎被告の意見陳述

週刊『前進』04頁(3379号04面02)(2025/01/20)


正義と真実貫き政治弾圧と闘う
 暴処法弾圧裁判/冨山小太郎被告の意見陳述

(写真 5人の被告同志を先頭に、8・6暴処法弾圧裁判の初公判を前に、弾圧粉砕の決意を込めて元気にシュプレヒコール【1月10日 広島市】)


 1月10日に広島地裁で行われた8・6暴処法弾圧裁判の初公判(記事1面)での冨山小太郎被告の意見陳述(抜粋)を紹介します。(編集局)
(1)私は無実です
 私は、2023年8月6日に暴力行為等処罰に関する法律(暴処法)違反をしておらず無実です。
 起訴状を見ても、検察の主張を見ても、私のどの行為が違法なのかすら分からず、何一つ犯罪の要件を満たしていません。直ちに公訴を棄却してください。
 そもそも私が無実であることは取り調べの警察官は自覚していました。警察からすれば確定的な証拠がなければ、あとは「自白」をさせるしかありません。都合のよい「自白」をさせるために取り調べでは違法・不当な手段が使われました。典型的な拷問的手段だと思ったのは治療行為の妨害です。逮捕時、私は体調が悪く、逮捕された直後に現在服用している薬名を書いたメモを手渡しました。ところが取調官は医師の診察も薬の処方もしませんでした。これは私たちが受けた「自白」の強要のほんの一例に過ぎません。ですがこの一例だけでも権力の犯罪性は明らかです。
(2)弾圧の歴史的意味
 いまG7を始めとする全世界の帝国主義国は三たびの世界戦争に向けてかじを切っています。昨年1年間でイスラエルは毎日平均44人もの子どもたちをガザで虐殺しました。ウクライナは帝国主義国の最新兵器の実験場となり、昨年9月の段階で100万人もの兵士が死傷し、市民が徴兵され命を奪われています。一握りの資本家や政治家の利権のために何万人もの子どもや女性、市民が殺され、拷問され、戦争に駆り出されて行ったのです。私は震えるような怒りを感じます。
 本件弾圧において戦前の暴処法が使われたのは偶然ではありません。かつて治安維持法や暴処法が本格的に運用される中で、日本が2千万人ものアジア人民を虐殺する侵略戦争の道を進んだように、岸田政権や石破政権が本気で中国への侵略戦争を準備する中で起きていることです。こんな政治弾圧を裁判所は絶対に認めてはなりません。
(3)私とヒロシマ
 20歳を過ぎたころ、私は初めて8月6日にヒロシマを訪れました。様々な団体が早朝から原爆ドーム前で反戦・反核集会をやっていました。戦争を止めるのは黙って祈ることではなく闘うことだと言われている気がして、真剣に考えさせられました。
 「はだしのゲン」の作者である中沢啓治さんは、広島市の平和記念式典について「平和を祈るだけでは不十分じゃないか」「ぼくが考える式典は、あそこに、あの戦争を引き起こした一連の戦犯の人形を並べて、市民が石をぶつける式典です。そういう式典ならぼくも喜んで参加したいと思っていたのです」(『はだしのゲン わたしの遺書』朝日学生新聞社2012年)と語っています。被爆詩人で8・6ヒロシマ大行動に参加されていた栗原貞子さんは詩の中で「死者たちよ 安らかに眠らないでください/石棺を破って たちあがり 飽食の惰眠に忘却する生きている亡者を/はげしくゆすって 呼びさませて下さい」と訴えています。
 核抑止力を肯定しガザやウクライナに再び核兵器を使えと言っている政治家が集まる式典は被爆者の思いを裏切っています。こんな式典のために原爆ドーム前での反戦・反核が禁止されるならば、それは被爆者を2度「殺す」ことだと思います。被爆者の側に立ちたいという気持ちで、8月6日の早朝は原爆ドーム前で反戦・反核を訴え続けてきました。
(4)右翼の台頭
 この十数年間で原爆ドーム前には大きな変化がありました。それは過激な右翼の登場です。19年頃より現れた「静かな8月6日を願う市民の会」です。日本会議の広島支部が中心となって全国の右翼活動家を集めてそれまでと別次元の集会破壊が行われるようになりました。被爆した高齢女性をののしったり、ベビーカーを押した女性を取り囲んで反戦集会に参加させなかったり、参加者の個人情報を集めて職場に嫌がらせの電話をかけたり、無法の限りを尽くしています。日本会議の平岡優一広島市議が市議会で集会規制を訴え、原爆ドーム前での暴力的な集会破壊の先頭で活動し、松井一實広島市長が8月6日の集会規制を公表した時には右翼が市長を表敬訪問しています。戦前の経緯と酷似していることに寒気すら感じます。
(5)裁判長に訴えます
 この裁判は間違っています。証拠もないのに起訴した検察、けが人も被害届も一円の損害も「被害者」の証人申請すらないのに289日も勾留される司法制度は間違っています。治療も受けられず肉体的精神的苦痛によって「自白」を強制する取り調べは間違っています。何十年も続いている反戦・反核運動が破壊されるのは間違っています。
 8・6ヒロシマの原爆から80年が経とうとしているのに、世界中に核兵器があふれかえる、この現実はとてつもなく間違っています。この階級社会を本気で終わらせるべき時が来ていると感じます。社会を変革するために市民は命がけで声をあげ続けているのです。私は本件弾圧に対して正義と真実を貫き、胸を張って無実を主張したいと思います。裁判所は直ちに公訴を棄却せよ! 

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