沖縄を戦場にするな 本土―沖縄貫く安保・沖縄決戦へ
沖縄を戦場にするな
本土ー沖縄貫く安保・沖縄決戦へ
急ピッチで進む基地建設・基地機能強化、大規模軍事演習の激増、空港・港湾・公道などの軍事利用の拡大、米兵の性暴力をはじめとした凶悪犯罪の激発----米第2次トランプ政権の登場をもって米日帝国主義の中国侵略戦争突入が急加速しようとする中、その全矛盾の集中点となっている沖縄で住民の怒りが噴出している。この怒りに肉薄し、本土―沖縄を貫く安保・沖縄闘争の巨大な爆発をかちとることは、2025年の最重要の決戦課題だ。
石破政権は通常国会で防衛費約8兆7千億円を含む大軍拡予算の強行を狙っている。防衛省の沖縄関係費用には契約ベースで2148億円を計上し、陸上自衛隊駐屯地がある宮古島市、石垣市、与那国町へのシェルター整備の助成費を初めて盛り込んだ。県内の自衛隊施設整備費には約1030億円を計上し、自衛隊那覇病院の建て替え、那覇駐屯地への対空電子戦部隊配備、沖縄訓練場への補給拠点整備、宮古島駐屯地への電子戦部隊配備、与那国駐屯地へのミサイル部隊配備、石垣駐屯地の共同訓練場のための施設拡大など各種費用が盛り込まれた。こうした自衛隊設備の大幅増強を経て、那覇駐屯地に司令部を置く陸自第15旅団を26年に師団化する計画だ。
これら一切は、米軍・自衛隊が一体化して南西諸島全域を地獄の戦場に変える日米共同作戦計画の発動に向けた準備にほかならない。沖縄戦から80年、帝国主義の延命のために再び沖縄を「捨て石」として戦争を遂行しようとするトランプ・石破に今こそ怒りの大反撃をたたきつけ、中国侵略戦争を阻む新たな安保・沖縄闘争の巨万の爆発をかちとろう。
激増する米軍の性暴力・凶悪犯罪
基地と戦争こそ元凶だ
米日帝国主義が「かつてなく強固」と自画自賛する日米安保体制の正体とそのもとで存続する米軍基地が住民にもたらす現実を最も象徴しているのが、米兵による度重なる女性暴行などの凶悪犯罪だ。米軍犯罪は、米日による中国侵略戦争への本格的突入を背景に増加の一途をたどり、米軍や日本政府による事件の隠蔽(いんぺい)がそれに拍車をかけている。
今年に入って早くも1月8日、在沖米海兵隊所属の30代の男が昨年11月に沖縄本島内で面識のない成人女性に性的暴行を加え、けがを負わせていたことが発覚した。米兵の少女誘拐暴行事件に抗議する昨年12月22日の県民大会から約2週間で新たな米軍性犯罪が発覚したことに、全島で激しい怒りが噴出している。被害女性は地元紙の取材に「自分は生き地獄にいるようなもの」と訴え、今も事件の恐怖を思い出して激しい頭痛や吐き気に悩まされると語った。米軍当局が事件のたびに「綱紀粛正に務める」「性犯罪防止へ教育を徹底する」などと繰り返すのは、どれほど多くの女性が被害を訴え出ようと米軍はあくまで沖縄に居座り続けるという傲岸(ごうがん)不遜な居直り宣言にほかならない。全基地撤去以外に何一つ「解決」の道などないことは明白だ。
沖縄県内では昨年、米兵による性犯罪が4件摘発され過去10年で最多、米軍関係者による凶悪犯(殺人、強盗、放火、性的暴行)の摘発件数も1992年以降で最多となった。米軍関係者による凶悪犯罪は、1945~72年の米軍占領下の27年間に旧琉球政府が記録しただけで900件以上、本土「復帰」から2022年までの50年間で摘発された刑法犯罪6163件のうち584件が凶悪犯罪とされるが、これらは実際に起きた米軍犯罪の「氷山の一角」にすぎない。事件化されず闇に葬られた数は計り知れない。とりわけ米兵による残忍極まる性暴力は、本土「復帰」以降も占領時代と変わらず、「基地の島」であることを強いられた沖縄で繰り返されてきたのだ(年表)。
空軍幹部「性犯罪は小さな一側面」
米国防総省の直近の報告書では、米軍内の性暴力は申告されただけで1年間に8千件以上に達し、3千件台だった十数年前から激増している。それも申告率は25%程度と推定され、実際は3万件以上の性暴力が米軍内部で発生しているという。これこそ「世界最強」をうたう帝国主義侵略軍隊の正体だ。「米軍は、組織内ですら性的な犯罪を抑えきれない組織だ、という前提に立つ必要がある。民間人への犯罪の再発を防止できるわけがない」(1月9日付琉球新報)。そのことは米帝・米軍当局こそが実は最も熟知しているのであり、だからこそ米軍嘉手納基地第18航空団司令官のニコラス・エバンス准将は、米軍の準機関紙「星条旗新聞」のインタビューで、米軍関係者の性暴力事件について「(米軍と)地域との関係の小さな一側面」にすぎないと言い放ち、地元自治体と米軍との関係は「極めて良好」などと平然と居直ったのである。
この米軍基地の存続を容認することは、戦時下でますます激発する性暴力・性犯罪の容認以外の何ものでもないということを徹底的にはっきりさせ、相次ぐ事件への怒りを中国侵略戦争阻止・全基地撤去=安保粉砕・日帝打倒の闘いの爆発へと転化しなければならない。
沖縄では性犯罪など凶悪犯罪のほかに、中国侵略戦争に向けた訓練や演習の激化に伴う米軍関連の事故が多発している。米政府監査院がまとめた12~22会計年度(11年10月~22年9月)の米軍特殊作戦部隊の事故に関する報告書では、事故全体3624件のうちパラシュート降下訓練での事故が972件に上り、最多となった。報告書が「最も危険度が高い訓練」と認めるパラシュート降下訓練を、在沖米軍は昨年1年間に嘉手納基地で10回実施、県や周辺自治体による中止要求を無視して住民の生活圏での危険極まる訓練を今後も増加させる動きを見せているのだ。
「沖縄での米軍犯罪は、中国侵略戦争に向かって、米軍が素手で殺害を平然とこなせるような、人間性を破壊する訓練を行う中で起こっています。沖縄・女性の怒りを共にし、今こそ全基地撤去へ闘いを巻き起こす時です。荒々しい安保・沖縄闘争の爆発をつくり出しましょう」(昨年12・1女性反戦集会での矢嶋尋全学連委員長の基調報告)――このような確固たる決意で中国侵略戦争阻止の反戦闘争、とりわけ本土における反戦反基地闘争を闘うことが求められている。
牛島司令官「辞世の句」を再掲載
「皇軍」の復活を許すな
1月1日、陸上自衛隊那覇駐屯地(沖縄県)の第15旅団の公式ホームページに、沖縄戦を指揮した旧日本軍第32軍の司令官・牛島満の「辞世の句」が再び掲載された。
牛島は米軍に追い詰められて自殺する直前、残存部隊に戦闘終結を命じるのではなく、「最後まで敢闘し悠久の大義に生くべし」と全員死ぬまで戦うことを命令し、降伏して捕虜になることすら禁じて全住民を巻き込みながら悲惨な戦闘を続けさせた。「本土決戦」までの時間稼ぎのために沖縄を「捨て石」とする作戦を命じた張本人だ。その辞世の句は「秋を待たで 枯れ行く島の青草は 皇国の春に 甦(よみがえ)らなむ」であり、12万を優に超える沖縄県民を犠牲にした(当時の沖縄県民の4人に1人!)沖縄戦を皇国史観に基づき美化するものだ。昨年6月、第15旅団がこれを堂々と公式ホームページに掲載していたことが暴露され、沖縄人民の怒りを受けて一時削除していたが、戦後80年=沖縄戦80年の節目の年頭に再掲載したのである。自衛隊が再び沖縄を戦場にすると宣言したに等しい。「県民への挑戦だ」「沖縄戦の苦しみは顧みない、住民の犠牲はためらわないと宣言しているようなもので、到底許されない」と、怒りが噴出しているのは全く当然のことだ。
沖縄戦は当初、沖縄本島北部が主要な戦場となり、南部には約10万人の住民が避難していた。しかし「戦略持久戦」のために司令部が南部に移ったことで南部住民も避難民も戦火にのまれた。日本軍は住民を巻き込み、食料強奪や避難壕(ごう)からの追い出しを行い、牛島が自殺し組織的戦闘が終了した6月23日以降も、9月7日に降伏文書に調印するまで住民を死に追いやりながら戦闘を続けた。八重山諸島や宮古島など先島地域でも、多くの住民を飢餓とマラリア感染に追い込んだ。「軍隊は住民を守らない」はおびただしい血で書かれた沖縄戦の教訓である。
第15旅団は那覇駐屯地に司令部を構え、先島地域の各部隊を隷下に持つ中国侵略戦争における最前線の自衛隊部隊である。2026年に師団化されることになっており、増強される予定だ。そして師団化される最大の理由は、在沖米軍トップである米海兵隊第3海兵遠征軍の司令官(中将)と階級を同格(陸将)としてより密接な連携を図るためだ。つまり、米軍とともに南西諸島(琉球弧)を戦場にして中国侵略戦争を遂行する重要な部隊として位置づけられた部隊なのである。
第15旅団の師団化に向けた思想攻撃
第15旅団は、牛島の辞世の句の再掲載について「第32軍や牛島を礼賛する意図はない」と説明しているが、大うそだ。むしろ中国侵略戦争が急切迫する中で、再び住民の命と生活を踏みにじりながら血みどろの戦争をやり抜くために、自衛隊を「皇軍の論理」で武装させ、住民にもそれを共有させるイデオロギー攻撃として再掲載したのだ。
自衛隊は、実際には旧大日本帝国の軍人を軸に再編された組織にほかならない。第15旅団の前身である第1混成群の初代群長・桑江良蓬も「沖縄出身」を売りにしただけの生粋の帝国軍人だった。米日帝国主義が中国侵略戦争に突進する中で、ついに本性をむき出しにし始めたのである。
しかしそれは、戦後的制約下で積み上げた自衛隊のあり方にも断絶を迫る。中国侵略戦争阻止の大反戦闘争=新たな安保・沖縄闘争は、自衛隊内での動揺をもたらさずにはおかない。改憲・戦争阻止!大行進運動を軸に闘おう。
辺野古地盤改良工事を強行
反基地闘争潰しが狙い
米軍辺野古新基地の設計変更申請を政府が県に代わって承認した代執行から1年となる昨年12月28日、沖縄防衛局は大浦湾の海底に砂をまく「敷砂」を開始した。年末、ほとんどの職場が仕事納めに入った中で、地盤改良工事の「年内着手」を政治的に演出するために作業員を動員して着工を強行したのだ。辺野古新基地を既成事実化し、反戦反基地闘争をたたきつぶすための暴挙に、沖縄の怒りは爆発している。
工程は大幅に遅れ建設計画は大破綻
大浦湾では、マヨネーズ状と言われる軟弱地盤の改良のため、海面下70㍍まで7万1千本もの砂杭を打ち込む前代未聞の工事が計画されている。敷砂前日の27日、林芳正官房長官は「普天間飛行場の全面返還の実現に向けた大きな前進」とその「成果」を強調したが、地盤改良だけで4年1カ月、それを含む埋め立て工事全体に8年と見込まれる工期が、計画通りに進むことなど不可能だ。
そもそも軟弱地盤は最深部で90㍍に達するとされており、この「B27」と呼ばれる地点の付近には将来大きな沈下が予測される地点もある。ところが防衛局はB27地点を調査せず、そこから150~750㍍も離れた周辺3地点の調査をもとに「地盤改良は不要」と断定したのだ。沖縄県が求める再調査も拒否している。
すでに辺野古新基地建設の工程は全体的に大きく遅れている。2017年2月に海上工事が着工、18年12月に土砂の投入が開始されたが、昨年11月までの約6年間に投入された土砂の総量は321万立方㍍で、必要とされる全体量の16%にとどまる。大浦湾側では昨年8月、「A護岸」造成のための鋼管杭打設に着手した。3年10カ月で約1千本を打ち込む計画だが、11月までに打ち込まれた杭はわずか29本で、工期が2倍以上に延びるペースだ。辺野古新基地はすでに大破綻しているのだ。それでも米日帝が辺野古にこだわるのは、中国侵略戦争の最大の出撃拠点となる沖縄で反戦反基地闘争を圧殺するためにほかならない。
沖縄の怒りと結び巨大な反戦闘争を
米兵3人による少女暴行事件を機に県民大会8万5千人―全島10万人が決起し、日米安保を揺るがした1995年から今年で30年。辺野古では2014年以来、3700日を超えて不屈に座り込み闘争が闘われている。
その中で、政府は卑劣にも「年末に大きなヤマを越えて新年を迎えれば反発は沈静化できる」(2024年12月29日付沖縄タイムス)ともくろんだ。同様の手法は1997年12月24日の比嘉鉄也名護市長(当時)の海上ヘリ基地受け入れ表明以来、何度もとられてきた。政府の狙いは直ちに見透かされ、ますます怒りを呼び起こしている。
米軍普天間飛行場のある宜野湾市の住民も、「普天間返還のため」と称して強行される新基地建設に断固として反対し、「県民を諦めさせたいのかもしれないが、諦めてはいけない。今が踏ん張り時だ」と語る。本土「復帰」から53年を目前にしても変わらない「基地の島」の現実に対する怒りを圧殺することなどできない。
問われているのは本土における安保・沖縄闘争だ。中国侵略戦争のための軍事要塞(ようさい)化が進められる沖縄で、1996年の日米合意から29年にわたり不屈に「新基地反対」を貫いてきた闘いを何としても圧殺しようと、日帝・石破は必死になっている。土砂投入を実力阻止した昨年5・15闘争に続き、さらに巨大な闘いの爆発で辺野古新基地建設を粉砕しよう。
「復帰」後に沖縄県内で発生した米軍関係者による性暴力事件(一部) | |
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1972年8月 | 米陸軍所属の19歳一等兵が30代女性に暴行を加えた後に殺害 |
73年9月 | 米兵がバスを待っていた女性を暴行 |
75年4月 | 金武村(現金武町)で米兵が海水浴に来ていた中学生2人を暴行 |
76年5月 | 5歳の少女が米兵に暴行される |
82年7月 | 30代女性が米兵に暴行されそうになり、抵抗したところ殺害される |
84年10月 | 米兵3人が学校帰りの高校生を暴行 |
85年10月 | 女性を車で拉致し暴行を加えた米兵2人を現行犯逮捕 |
90年8月 | 沖縄市で女性が車を走行後に、後部座席に潜んでいた米兵から暴行 |
95年9月 | 沖縄本島北部で米兵3人が少女を暴行 |
98年6月 | 民家に侵入した米軍属の男が20代女性の財布を盗み、その後暴行 |
2001年6月 | 北谷町で米空軍軍曹が女性を暴行 |
03年5月 | 海兵隊上等兵が女性を殴りけが |
04年10月 | 民家で女性を乱暴し、暴行と住居侵入の疑いで米軍属の男を逮捕 |
08年2月 | 海兵隊員が女子中学生を暴行 |
12年10月 | 沖縄市で海軍兵2人が女性を暴行 |
16年4月 | 本島中部をウォーキング中だった女性が米軍属の男によって殺害される |
21年10月 | 米兵が女性を車外に引きずり出して乱暴しようとしてけがを負わせた |
23年10月 | 不同意性交等容疑で元海兵隊で米軍属の男を逮捕 |
24年1月 | 本島内の路上で女性への不同意性交容疑で米兵逮捕 |
5月 | 米兵が女性を暴行、不同意性交致傷容疑で逮捕 |
6月下旬 | 本島内で米海兵隊員が20代女性を暴行した疑い |
25日 | 23年12月に16歳未満の少女に対するわいせつ誘拐、不同意性交の罪で米空軍兵長を那覇地検が起訴していたことが判明 |
11月 | 米海兵隊員が本島の建物内で成人女性に性的暴行を加えてけがを負わせた疑い |