三里塚反対同盟の新年アピール 天神峰で農業を続ける 軍事空港阻む決戦の25年
三里塚反対同盟の新年アピール
天神峰で農業を続ける
軍事空港阻む決戦の25年
三里塚芝山連合空港反対同盟は、農地死守・軍事空港反対を掲げて59年間、反戦の砦(とりで)として闘い抜いている。2025年、切迫する中国侵略戦争と対決し、天神峰・市東孝雄さんの南台農地の強奪攻撃を許さず、守り抜く決戦を迎えている。不屈に闘う反対同盟と団結し、成田空港会社(NAA)の空港拡張=軍事空港完成攻撃を粉砕しよう。反対同盟の皆さんからの新年アピールです。(編集局)
耕作権判決を迎え撃つ
敷地内天神峰 市東孝雄さん
全国の皆さんの日頃のご支援に感謝しています。
2023年2月15日、NAAに天神峰農地を強制執行で奪われたことで、作物の品目や量などそれまで通りとはいかなくなり、農家として厳しい状況を強いられましたが、あれこれ工夫しながら今日まで完全無農薬の有機野菜をお届けできています。
2・15当日は若い人たち、学生さんを先頭に本当によく闘ってくれました。ああいう闘いをやりきったことで、表情も晴れ晴れしていたと感じました。
NAAは天神峰農地を高いフェンスで囲っただけで、そこを何に使うでもなく放置し、中で時々草刈りを行うだけです。その一方でNAAは、自らの所有地を農地として近隣農家に貸し出すなどという全くちぐはぐなことをやっています。結局彼らは、天神峰で農業をやっている私が目ざわりだから早くどかしたいということでしかないわけです。
24年はまた、天候不順、猛暑、気候変動に悩まされた1年でした。昨年ほど種をまき直した年は今までなかったですね。
しかしそうした農家の苦境を察するでもなく、政治家は相変わらず「食べ物がなくなったら外国から輸入すればなんとかなる」という姿勢です。千葉県の熊谷知事は、「成田空港を活用して、最初から輸出を前提とした作物づくりをしろ」などと言っています。
農家の現実は、自分の子どもに「継いでくれ」と言いづらい、農業だけでは食べていけないという現状です。そしてついには、有事になったら穀物や芋を栽培しろなどということを言い出した日本政府。口では第1次産業は大事などと言いつつ、やっていることは真逆です。
24年は耕作権裁判で多くの方々に証言してもらい、自分も本人尋問に立ちました。裁判傍聴・デモにも多くの方々に駆けつけていただきました。どのような判決が出るかわかりませんが、それで終わりではありません。私の気持ちはこれまで通り天神峰の地で農業を続けていくということで、変わりません。25年もどうぞよろしくお願いします。
耕す権利は市東さんに
敷地内東峰 萩原富夫さん
24年は能登半島地震、羽田空港での大事故から始まり、ウクライナ戦争、ガザ虐殺の継続、米大統領選でのトランプ勝利と国内外で激動が続きました。
反対同盟としては、18年も続いた耕作権裁判で証人尋問を1年かけてやりぬいて結審を迎え、判決は年度内の3月にも予想されるというところです。法廷ではNAAの違法・脱法を暴き尽くし彼らを決定的に追い詰めて、市東さんには確固として耕す権利があることを完全に証明しました。農地強奪の反動判決、ましてや「仮執行宣言」付きの判決など絶対に許しません。
天神峰農地強制執行からもうすぐ2年が経ちますが、NAAは「空港に今すぐ必要だから」と言って、市東さんの畑を取っておきながら、今もフェンスで囲い込んでほったらかしにしているだけ。機能強化、第3滑走路建設も、「新しい成田空港」構想などと仰々しく宣伝をしてますが、われわれが毎月フィールドワークの闘いを続けていることもあり、工事が目に見えて進捗(しんちょく)しているというわけでもない。こんな空港は廃港に追い込むしかない。
そして今日、軍事空港粉砕の闘い、反戦闘争を、沖縄と三里塚を結んで盛り上げなくてはなりません。
中国への侵略戦争へ向けて沖縄・南西諸島の軍事要塞(ようさい)化、ミサイル基地化が進められている中で、成田機能強化も、軍事空港化に向けて行われていることは明白です。
この1年、われわれの戦争反対の闘いの重要さが増していることを実感してきました。私自身も5月沖縄闘争に立ち、辺野古の座り込みに参加しました。2時間ほどの限られた時間でしたが、実際の工事車両を止めることができたのは大きな勝利だったと思います。
政府は、「有事における食料確保」などと言って農民を動員しようとしているが、食料確保したいなら戦争やってる場合か、と言ってやりたい。われわれは、何があろうとこの地で営農し生活し続けることが三里塚の勝利になると確信し、これまで通り闘い続けます。
3月30日の三里塚現地闘争に、全国からの参加をお待ちしています。
中国侵略戦争許さない
芝山町白桝 伊藤信晴さん
25年は米トランプ政権の登場に始まり、一層の激動情勢に入ることは間違いありません。まさに一人ひとりに生き方が問われる時代です。
耕作権裁判の判決が年度内に予想されています。市東さんの南台農地をめぐる決戦が不可避に到来することに、われわれは身構えておく必要があります。1971年の第1次強制代執行時に掲げた「日本農民の名において収用を拒む」のスローガンを今再び打ち出すべき時だと思います。
「空港との共存共栄」とのうたい文句と裏腹に、芝山町をはじめ周辺地域の農村つぶし、空港機能強化、拡張工事、騒音に対する怒りは広がっています。芝山町では「町の基幹産業だ」とか言って農業を奨励するようなそぶりを見せておきながら、口だけで実際にはやる気がないと皆見抜いています。そもそも市東さんの農地を奪うことそれ自体が、国の農民蔑視、農業切り捨てという政策の一環であると言えます。
農業の危機は地方存続の危機として現れています。日本全体の4割にあたる744の地方自治体が消滅の危機と言われ、千葉県においても芝山町を含む22市町が「消滅可能性自治体」に分類されています。
いま日本政府は「中国の脅威」をあおりながら戦争の準備を進めていますが、これは日本帝国主義が直面している経済や地方の崩壊的現実を戦争によって突破していくしかないという姿勢です。この戦争にいかなる立場をとるのかが、私たちに問われていると言えるでしょう。市東孝雄さんの父、東市さんも常々強調していたように、自国政府の敗北を求めて闘う「革命的祖国敗北主義」こそがわれわれの取るべき立場です。
空港拡張差し止め裁判においては、国は私に「原告適格がない」などと難癖をつけてきていますが、徹底的に争ってこれを打ち破ります。
市東さんの南台農地を守り、空港廃港へ向けてともに闘いましょう。
女性こそ反戦の先頭に
婦人行動隊 宮本麻子さん
耕作権裁判においてNAAは、市東東市さんの署名・押印がある文書を偽造して「証拠だ」と主張し、その一方で、あるはずの重要文書を「ない」と言い張って隠し続けました。反対同盟顧問弁護団の追及に対し、NAAの代理人は噴飯物のけち付けやあら探しに終始しました。18年もの裁判を通して市東さんが耕し続ける権利は揺るぎないことが明らかになりました。
それでも判決は全く油断できません。これまでの三里塚裁判で千葉地裁は、NAAや国の肩を持つ判決を出し続けてきたからです。
「空港建設は公共の利益だ」というのが空港建設を正当化する時の向こうのお決まりの主張ですが、実際にはどの大資本、企業がどれだけもうけるのかという問題です。市東さんも言っていますが農業は人間が生きていく上での基本であり、農業をつぶして空港を造ることは許せません。
南西諸島では住民の暮しを脅かして、ミサイル基地や弾薬庫が造られようとしています。成田空港拡張、機能強化も軍事空港建設です。反対同盟結成当初の1966年、北原鉱治事務局長がベトナム戦争最中の羽田空港を視察しました。そこで米軍のチャーター機があふれ、米軍兵士の遺体袋が積み下ろされている現実を確認しました。以来、反対同盟は一貫して軍事空港阻止のスローガンを掲げ続けてきました。
反戦闘争の先頭に女性が立つ機運が高まっています。2・15強制執行との闘いでは、全学連の女子学生が真っ先に重装備の機動隊に素手で立ち向かい、力を合わせて闘えば権力を負かすこともできると実証してくれました。今後も大いに期待しています。共に立ち上がってこの社会を変えましょう。
反対同盟は市東さんの農地を守り、反戦反核の闘いの先頭に立ちます。
学生と共に全力で闘う
婦人行動隊 木内敦子さん
昨年の三里塚裁判の傍聴を通じて感じたのは、まず国やNAAの空港づくりのひどさ、でたらめぶりです。それと対照的に弁護団の主張、証人の証言を通じて、三里塚闘争のさまざまな面に光を当て浮き彫りにし、正義がこちらにあることが明らかになりました。人権、公共性、騒音被害、農地法の解釈、すべてのことが市東さんの耕作権を証明していて、これで土地明け渡しの不当判決を下したら法をつかさどる者としての裁判長の矜持(きょうじ)はどこにあるんだと感じます。
23年2・15の激突は、民衆が権力に対してこうやって闘えるんだということを、次の世代に向かって指し示したものでした。特に今の学生さんにとっては、酷寒の中で暖房も十分でなく、今時けっして心地よいものだったとは言えません。そんな資本主義社会では体験できない不便で不自由な環境に身を置いてがんばってくれたことが、若い人たちの今後の財産になってくれたらなと感じます。
日本は文明国だ、先進国だと言われていますが、女性の地位は低いし環境は悪いし、みんなが幸せに暮らせるあり方は、空港の拡張の中には全く見いだせないと思います。
反対同盟の戦争経験者の人たち、北原鉱治事務局長、市東東市さん、鈴木幸司さんなどが常に発していた「二度と戦争を許さない」というメッセージを今、しっかりと受けとめていきたい。
戦争をやりたがる国の壁をどんどんたたき続けることです。たたけばそれが壊れる日が来ます、ベルリンの壁のように。
全学連の闘いにはすごく期待しています。今この時に学生運動を全力で闘うことで、その後の自分の未来をも切り開けることを確信してほしい。私も若い人から学びつつ、希望をもって闘います。