焦点 ドイツで連立が崩壊 崩れた欧州帝国主義の戦後体制
週刊『前進』04頁(3373号03面03)(2024/12/02)
焦点
ドイツで連立が崩壊
崩れた欧州帝国主義の戦後体制
ドイツで11月6日、財務政策をめぐる対立を理由にリントナー財務大臣(自由民主党=FDP)が解任され、これを受けてFDPが連立政権を離脱。ショルツ首相が所属する社会民主党(SPD)・緑の党・FDPからなる連立が崩壊した。米大統領選でのトランプ当選が判明してから数時間だ。ショルツ政権は下院(連邦議会)で過半数割れとなり、少数派政権へと転落した。労働者人民の生活破壊の中でSPDの支持率は低迷し、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」に次ぐ3位にとどまる。12月16日に首相信任投票、来年2月23日には議会選挙が行われることが決定した。
アメリカ帝国主義の大没落が生み出したトランプ再選情勢が直ちに欧州帝国主義へと波及し、「欧州の盟主」とされてきたドイツ帝国主義の政治支配の構造が音を立てて崩壊を開始したのだ。独シュピーゲル誌(11月9日号)は「西側世界の終焉(しゅうえん)」と題した特集を組み、「一つの時代が終わりを告げた」と宣言した。
直接の対立点となったのは、来年度予算をめぐってショルツが打ち出した財政規律緩和だ。自動車業界の支援やウクライナへの追加支援のために、国の新規借り入れを制限する「債務ブレーキ」の一時棚上げを指示し、これを拒否したリントナーが解任された。
背後には米帝の争闘戦
戦時下でドイツの経済、社会は崩壊的危機にある。エネルギー価格の高騰は労働者人民の生活費暴騰と生産コスト上昇をもたらした。フォルクスワーゲンの工場閉鎖・大量解雇計画にみられるように基幹産業である自動車産業の衰退は著しく、2023年の成長率は主要7カ国(G7)諸国で最低のマイナス0・3%を記録した。背後にあるのは米帝の争闘戦だ。第1次トランプ政権による中国への関税戦争と対中国・イラン経済制裁は、中ロと深い経済的結びつきをもつ独帝に対する争闘戦でもあった。ウクライナ戦争開戦後も、米帝の対ロ経済制裁とガスパイプライン爆破は欧州帝、とりわけ独帝に大打撃を与えた。この状況下で、第2次トランプ政権発足と関税戦争を前にショルツは危機突破の道を財政規律の緩和と経済の軍事化に求めたのだ。
労働者の反戦闘争が鍵
独帝の財政規律は、単に国内の予算問題にとどまらない。「第1次大戦後のハイパーインフレがナチの台頭を招いた歴史への反省」という建前のもと、「盟主」独帝が欧州連合(EU)を支配する道具として厳格に運用されてきたからだ。米帝基軸の戦後世界体制が崩壊する中、日本帝国主義に代わって世界3位の経済大国となった敗戦帝国主義・独帝が根本的な矛盾を爆発させ始めているのだ。重要なのは、10・7蜂起に応える労働者階級の反戦闘争がドイツにおける戦後体制の崩壊を決定的に促進したことだ。独労働者はこの間、政府による激しい弾圧と「反ユダヤ主義」キャンペーンを打ち破り、数千、数万人規模のパレスチナ連帯闘争に繰り返し決起してきた。この闘いこそが、パレスチナ人民に血と土地を差し出させた「ナチの犯罪への反省」の虚構を暴き出したのだ。
連立与党である緑の党が主導したウクライナ・イスラエルへの軍事支援も労働者人民の怒りの的となり、既成政党を大敗に導いた。日本と同様にドイツにおいても、自国帝国主義を打倒する労働者階級の反戦闘争が求められている。