中国侵略戦争へ米日が計画策定 南西諸島にミサイル網構築狙う

週刊『前進』04頁(3373号03面01)(2024/12/02)


中国侵略戦争へ米日が計画策定
 南西諸島にミサイル網構築狙う


 自衛隊と米軍が、中国侵略戦争遂行のための共同作戦計画の策定を12月中に予定していることが、11月24日の共同通信の報道で明らかになった。トランプ次期政権のもとで中国侵略戦争への突進を加速させようとする米日帝国主義は、いよいよ一線を越えた決定的な段階まで戦争準備を進めてきている。

初の「台湾有事」作戦計画

 共同通信は日米関係筋の話として、「台湾有事における米軍と自衛隊の初の共同作戦計画」とされる計画の内容を明らかにした。「第1列島線(沖縄―台湾―フィリピン―マラッカ海峡)に沿ってミサイル網を設け、南西諸島とフィリピンの2方向から中国艦艇などの展開を阻止し、その後、戦闘機などを搭載した米軍空母を派遣して海域と空域で優勢を確保するという構想」であり、「共同統合演習『キーン・エッジ』で作戦の計画案に基づいた米軍の部隊展開を確認して課題を検証した」という。
 南西諸島(鹿児島県南部―沖縄県)に高機動ロケット砲システム「ハイマース」などを保有する米海兵隊の海兵沿岸連隊(MLR)が展開し、分散した小規模部隊が有人島に臨時の拠点を設けて中国軍とミサイルを撃ち合う「遠征前進基地作戦(EABO)」の実行を含む作戦計画だ。また、フィリピンには米陸軍の多領域任務部隊「マルチ・ドメイン・タスク・フォース(MDTF)」のミサイル部隊を展開する。
 日米共同作戦計画は、これまで「朝鮮半島有事」を想定した作戦計画「5055」、「尖閣有事」を想定した同「5051」が策定されてきたが、これらはいずれも自衛隊による米軍の後方支援を主として想定したものだった。台湾海峡での戦闘に自衛隊が介入・参戦し、そのために南西諸島をミサイル攻撃の出撃基地とし、前線での直接の戦闘任務をも担うような作戦計画は、これまでとは次元を異にするものだ。
 「台湾有事を想定した作戦計画」の策定は、2021年4月の日米首脳会談・共同声明で52年ぶりに「台湾」に言及(「台湾海峡の平和と安定の重要性」を明記)した直後から、米軍と自衛隊が協議を開始し、水面下で策定作業を進めていたもので、昨年の段階ですでに作業は大詰めに入っていた。中国を初めて「敵国」と名指しして行われた今年2月の図上演習「キーン・エッジ」と10~11月の実動演習「キーン・ソード」は、その総仕上げのための大演習だった。今回の作戦計画の策定をもって米日帝の中国侵略戦争は完全に新たな段階を迎えようとしている。
 共同通信の今回の暴露について、各メディアはそれを引用したうえで「自衛隊は弾薬や燃料の提供など後方支援を担うとみられる」などと付け加えているが、これは全くの大うそだ。レゾリュート・ドラゴンなど「島嶼(とうしょ)奪還作戦」をテーマとした日米共同演習の内容を見れば明らかなように、陸上自衛隊水陸機動団や沖縄に駐屯し2026年度に師団化される第15旅団をはじめとして、陸自の大部隊が南西諸島に集中して米海兵隊のEABOを、海上自衛隊は米海軍の「分散海上作戦(DMO)」を、そして航空自衛隊は米空軍の「迅速な戦闘展開(ACE)」を共に担うことは明白である。
 また今回、フィリピンへのミサイル部隊配備が明示されたことも重大だ。米比は昨年2月、米軍の駐留が可能なフィリピン内の基地を5カ所から9カ所に増やすことを決めている。米軍は今年4~5月の米比合同演習「バリカタン」の際に「訓練の一環」として中距離ミサイル発射装置をルソン島北部ラワグの空港に「一時設置」し、現在に至っている。米陸軍は25年度、最新鋭兵器・極超音速ミサイルの調達額として7億4400万㌦(約1136億円)という今年の4倍以上の予算を要求している。このミサイルの試作型はインド太平洋地域で展開するMDTFに、すなわちフィリピンに真っ先に配備されることになっているのだ。
 日比関係も深まっている。日本はフィリピンに防空レーダーを輸出し、共同演習への参加などを増加。今年7月には自衛隊とフィリピン軍との相互往来を容易にする「円滑化協定(RAA)」に署名し、「準同盟化」が進められている。

全住民の命と生活を破壊

 在沖縄米軍海兵隊の幹部を務めたブライアン・カーグ中佐が、23年12月に米海軍協会の月刊誌に寄稿した論文「第3海兵遠征軍を戦闘態勢に」で、「第1列島線に家族が同行すべきではない」「有事に家族の避難に力が割かれる」と述べ、沖縄から隊員の家族を米本国に撤収させる提言をしていたことがわかった。また、那覇基地に自衛隊員用のシェルターが建設されていたことが判明。11月21日の会見でこれに関連して「住民保護についてはどう考えているのか」と説明を求められた内倉浩昭航空幕僚長は、「所掌外」だと答えるのみだった。米軍と自衛隊は沖縄人民の命と生活を守る気など毛頭ない。
 さらに今年9月、在沖米海兵隊で運用計画担当を務めていたダニエル・ハフ中佐は、現行の日米地位協定では先島地域に米軍が展開するための手続きに「時間がかかる」として、日米安保条約の見直しを提言した。EABOは中国軍の態勢が整ってからでは臨時拠点の建設が間に合わないため、「有事の前」に空港や港湾などのインフラが存在する有人島で住人を追い出し、土地と生業を奪って米軍と自衛隊が展開しなければならないからである。
 このような暴挙を絶対に許すわけにはいかない。国会の総翼賛体制を打ち破り、沖縄の怒りと一つに、今こそ巨大な反戦闘争を巻き起こそう。
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