労働法制の改悪を許すな 労働組合を解体して 戦時体制の構築狙う

週刊『前進』04頁(3373号02面03)(2024/12/02)


労働法制の改悪を許すな
 労働組合を解体して
 戦時体制の構築狙う

厚労省が改悪案

 中国侵略戦争のための戦時体制づくりの一環として労働法制改悪が進んでいる。今年1月に厚生労働省が立ち上げた「労働基準関係法制研究会」は、11月12日の第14回会合で「議論のたたき台」を示し、改悪案の大枠を打ち出した。同研究会が今年度中にまとめる報告書をもとに、2026年度に労働基準法などの改悪案を成立させることが、石破政権の狙いだ。
 研究会の「たたき台」を受けて、本業と副業の労働時間を通算して残業代を計算する現行制度を改め、副業を促進することが厚労省の方針になったと、マスコミは報じた。確かに労働時間を通算しないという改悪は、労働時間規制を解体し雇用を流動化する重大な攻撃だ。だが狙われていることは、労基法の個々の条文の改悪にとどまらない。
 攻撃の核心は、労働組合の存在と労働基本権(団結権、団体交渉権、争議権〔ストライキ権〕)を前提に作られてきた労働法制を抜本的に転換し、労基法を「生産性向上」のためのものに変えることにある。
 1月16日に経団連が出した「労使自治を軸とした労働法制に関する提言」で、攻撃は一気に加速した。同提言は「柔軟な働き方を求める労働者が増え……働き方のニーズが多様化しているにもかかわらず……画一的な規制がその実現を妨げている」と、労働規制の解体は労働者の要求であるかのようにうそぶく。そして、「柔軟な働き方を実現していくためには……生産性の改善・向上に資する労働法制に見直す必要がある」と結論付ける。
 同提言が具体的に求めたことは、労使協議により労働時間規制などを適用除外にできるようにすること、「労使協創協議制」なるものを設置しそこに個々の労働者を縛る労働契約の締結権を与えること、労働者代表の選出単位を事業所ごとから企業ごとに変更すること、などだ。
 労使が「合意」すれば労基法以下の条件で労働者を酷使できるのなら、労基法は労働条件の最低限を定めたものではなくなる。また経団連が労使協議の相手として想定しているのは、資本が指名する「労働者代表」だ。
 厚労省の研究会の立場も経団連と同じだ。同研究会の「たたき台」は、「(労働基準関係法制を)一定の範囲内で、個別の企業、事業場、労働者の実情に合わせて調整が可能なものとしていく」として、「労使合意で労基法は適用除外」という経団連の言い分を認めた。「たたき台」はまた、「労使の合意により、手続きを企業単位や複数事業場単位で行うことも選択肢になる」として、労働者代表の選出単位を企業ごとへと変えることも容認した。

JRが攻撃を主導

 総じてこれは「労組なき社会」化の攻撃だ。それを主導しているのはJR東日本だ。JR東日本は御用労組も解体し、「労組の組合員でないこと」を加入条件とする社友会を組織し、それを労働者支配の要に据える施策を進めてきた。2月には、各支社などに組織された22の社友会を集めて「JR東日本社友会連携協議会」を立ち上げた。
 経団連が狙う労働法制改悪が行われれば、社友会は「労使協創協議」で労基法の「適用除外」にお墨付きを与える存在として登場する。経団連労働法規委員会の委員長はJR東日本前会長の冨田哲郎だ。JRは「労組なき社会」のモデルを自らつくり、それを経団連提言にまとめ、全社会に広げようとしているのだ。

連合は攻撃の先兵

 これは戦時体制づくりと一体だ。経団連が「生産性向上」を叫ぶのは、中国侵略戦争にとって軍需生産の急拡大が不可欠だからだ。絶対的な人口減少下で戦時経済に移行するためには、徹底的な雇用流動化による産業構造の再編が避けられない。だから資本は副業も強制して労働者を強労働に駆り立てる。そのために労働法制も戦時総動員体制に応じたものへと転換する。
 連合はその先兵だ。連合が11月21日の中央執行委員会で決めた25春闘方針は、「揺れ動く国際社会の中でわが国経済社会を安定させ、人口減少のもとで社会や産業・企業を維持・発展させていくためには、中長期を見据えた『人への投資』が不可欠である」と言う。連合が言う「賃上げ」とは、労働者階級に渦巻く現体制への激しい怒りを抑え込み、労働者の決起を鎮圧して「企業を発展」させるためのものなのだ。
 連合を支持母体にし、石破政権の支柱として最悪の姿をさらす国民民主党は、総選挙で「手取りを増やす。自分の国は自分で守る」と叫んだ。これは石破や経団連との政労使会議にのめり込む連合の方針でもある。国民民主党が「103万円の壁の打破」を叫ぶのも、戦争と戦時経済への労働者の動員が目的だ。
 11・3労働者集会はこれと徹底的に対決して闘われた。大弾圧に反撃する全日建運輸連帯労組関西地区生コン支部、組織破壊と対決する全国金属機械労組港合同、JRの「労組なき社会」化攻撃と闘う動労千葉の闘いを守り抜き、労働法制改悪を粉砕して、中国侵略戦争を阻む階級的労働運動をよみがえらせよう。
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