米、ロシア領攻撃を承認 ウクライナが長射程ミサイル使用へ
米、ロシア領攻撃を承認
ウクライナが長射程ミサイル使用へ
11月17日、米メディアは、米国製の長射程地対地ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」によってウクライナがロシア領内深くを攻撃することをバイデン大統領が許可したと報じた。19日にはバイデンが対人地雷の供与を容認したことに加え、実際にウクライナがATACMSでロシア領内を攻撃したことが報じられた。
アメリカ帝国主義は「ロシアを抑え、中国を打ち負かす」(2022年米国家安全保障戦略)という戦略目的に沿って、中国侵略戦争に向けてロシアを弱体化させるためにウクライナ戦争を引き起こし、ウクライナ・ゼレンスキー政権を支援してきた。23年のウクライナによる反転攻勢が失敗に終わると早々に「10年の長期支援計画」を策定、戦争の長期化を既定路線化し、ウクライナを血みどろの戦場としながら、中国侵略戦争に向けた最新鋭兵器の「実戦データ」の収集などを進めてきた。
しかし、ひとたび始まった戦争はコントロールできるものではない。戦況の悪化とウクライナ国内の矛盾の激化の中で、米帝は軍事支援をエスカレートさせてきた。今年5月には、バイデンはウクライナ北東部ハルキウ州周辺での反撃に限り、アメリカが提供した武器でロシア領内を攻撃する許可を出した。この時は、射程300㌔メートルのATACMSは除外され、ウクライナ領内やクリミア半島にいるロシア軍への攻撃しか許可されなかった。
プーチンは9月に、西側の長距離ミサイルをロシア領内に使用する決定は「北大西洋条約機構(NATO)が直接参戦するものとみなす」と述べたが、バイデンはこれを承知で今回の決定に踏み込んだのだ。すでに11月20日、ATACMSによるロシア領内深くへの攻撃許可は、英仏がウクライナに供与している空対地ミサイル「ストーム・シャドー」のロシア領内への使用へと波及した。戦争の拡大は必至である。
今回の決定は、直接には1万人規模の北朝鮮兵がロシア西部クルスク州に侵攻したウクライナ軍との戦闘に参加したことがきっかけとなっている。しかしそれは、中国侵略戦争へ向けた日米韓軍事同盟の構築と緊張激化が北朝鮮を追い詰め、すでに解消されていたロシア・北朝鮮の軍事協定が再締結されたことによって起きた事態だ。戦争を激化させている最大の原因は、米帝による中国侵略戦争への突進なのである。
世界戦争加速する米欧日帝国主義
米紙ウォールストリート・ジャーナルは9月17日、ウクライナ戦争による両国の死傷者が推定で100万人を超えたと報じた。特に戦場とされたウクライナの人口減、兵力不足はすさまじい。
戦争が始まってすぐ、ウクライナでは18歳から60歳の男性の出国は原則禁止となった。今年4月には動員の対象年齢が27歳から25歳へと引き下げられ、5月には動員対象年齢の全男性に電子データベースへの詳細な個人情報の登録を義務化した。それでも徴兵を避けて違法に出国する人は後を絶たない状況にある。ウクライナの独立系メディアが動員対象年齢の男性400人を対象に行った調査では、「動員される用意があるか」という問いに否定的な人は48・1%に上った。ゼレンスキーの支持率は22年5月の約90%から24年5月には約59%まで低下。「政府への信頼度」については23年12月時点で26%しかない。ゼレンスキーがクルスク侵攻に踏み切ったのは、この状況を打開することを狙ったものだ。
10月29日、ゼレンスキーはクルスクに投入する人員が足りないとして16万人の追加動員を行う方針を明らかにした。だが、すでに11月上旬には占領した領土の半分近くをロシア軍に奪還されており、ATACMSの使用制限の解除も戦況をただちに好転させる見込みはほとんどない。それにもかかわらず、米帝や欧州帝国主義各国は中国侵略戦争の前哨戦としてウクライナ戦争を継続し、世界戦争情勢をますます加速させようとしているのである。
戦争の元凶・帝国主義打倒へ、国境を越えた労働者人民の国際反戦闘争を爆発させ、何よりも米日帝の中国侵略戦争を阻む巨大な闘いを日本でつくり出そう。