新段階迎えた米階級闘争 大統領選中も反戦デモ・スト激発
週刊『前進』04頁(3371号02面03)(2024/11/18)
新段階迎えた米階級闘争
大統領選中も反戦デモ・スト激発
米大統領選でのトランプ「圧勝」は、アメリカ帝国主義の歴史的大没落と世界支配・国内階級支配の崩壊的危機を象徴する事態だ。米階級闘争の内乱的爆発と全世界の巨大な革命的激動への突入は不可避である。国際連帯闘争の飛躍をかけて中国侵略戦争阻止の反戦闘争、日帝・石破打倒の闘いの爆発をかちとろう。
超インフレと戦争への怒り
米大統領選はトランプの地滑り的圧勝となり、ハリス勝利を予想していたリベラル評論家やメディアは、トランプに投票した大衆に責任転嫁するのに躍起だ。だが2020年大統領選と比べトランプの得票は横ばいであり、ハリスはバイデンの前回の得票から激減した(前回、バイデンの8128万票に対し、トランプは7422万票。今回はハリスが7237万票、トランプは7551万票)。同時に行われた各地の州民投票では、ハリスが大敗した州でも中絶禁止の極右政策に反対する票が多数を占めた。トランプ・極右が勝ったのではなく、ハリスが負けたことは明白だ。
08年のリーマン・ショック以来の大恐慌による生活破壊は今も続く。大恐慌からの回復が報じられているが、国内総生産(GDP)の08年以来の実質成長率は4割弱にとどまる。「雇用の回復」とは、多くが非正規職・低賃金の雇用だ。
20年選挙では、トランプ政権下のコロナ危機による生活の再悪化によってバイデンが勝利した。だがバイデン政権下でインフレ=生活破壊が激化。公式のインフレ率は24%だが、労働者人民の生活レベルでは30~35%に上る。家賃が上昇して、正規職でさえ職場のある都市圏への居住が不可能になっている。住宅金利は114%も上がった。クレジットカードや学費ローンの金利も大幅増だ。
これが戦争と結びついている。米帝がウクライナ戦争を引き起こし、エスカレートさせ、対ロ経済制裁を科したことでエネルギー、食料などが世界的に値上がりし、巨大独占資本、投機資本が暴利を得る一方、生活破壊が進んだ。欧州でも反戦デモが拡大し、あらゆる国で政権与党が選挙で惨敗している。
大統領選の年には常に抑えられてきたストライキが爆発している。巨大軍需会社・航空機会社のボーイングで、9月13日から大統領選投票日前日の11月4日まで長期ストが行われた。アメリカ労働総同盟・産業別労働組合会議(AFL―CIO)の統制がついに巨大企業でも打ち破られた。
ジェノサイド反対闘争拡大
パレスチナ連帯の大学占拠闘争や街頭デモを闘ってきた諸団体は、ブルジョア2大政党への幻想を捨てて闘争を続けることを呼びかけ、投票日前日と5日当日に街頭デモを設定。ニューヨーク市立大学の学生たちは逮捕・起訴された学生・教員の公判に駆けつけ、法廷と裁判所前を埋め尽くすことを呼びかけた。戦後アメリカではこうした行動は「共和党=右派を利する利敵行為だ」と抑え込まれてきた。だが今回初めて大統領選中の巨大な大衆行動が実現した。11月4、5日に配られた「ジェノサイドのための投票をするな」という冊子で、WOL(われわれが生きているうちに)という団体は「大学での闘いで学生、職員、教員が大量に処分された。個人情報がさらされハラスメントが行われ解雇された。だが運動は恐れを振り切って前進した。弾圧は抵抗を生み出した。われわれはパレスチナ人の勇気と断固たる姿を見て新たな決意を得た」「民主党はシオニストに兵器を与え、ジェノサイド賛成の世論をつくろうとしている。だが21世紀最大の虐殺とシオニスト兵士の虐殺自慢を皆が画面で見ている」と語っている。
民主党は基盤だった都市部でも大幅に得票を減らした。ミシガン州では大学がある全都市で敗北した。パレスチナ連帯の拠点、左派の拠点でハリス票が激減したのだ。ハリスはイスラエル軍のガザからの撤退どころか、停戦という要求にも反対し続けた。投票日直前にも「ハマスの10月7日のレイプ」というデマを繰り返し、ジェノサイドを正当化した。こんなハリスが「人権」「トランプは差別主義」と言っても何の説得力もない。
中国侵略戦争許さぬ闘いを
トランプは次期国務長官にマルコ・ルビオを指名した。中国・イランに対する超強硬路線で有名な人物であり、中南米でもクーデターを推進してきた。安全保障担当の大統領補佐官も対中強硬派のマイケル・ウォルツだ。第1期トランプ政権も関税戦争、制裁を中国・イランに発動し中国への戦争姿勢を高めたが、今回は比較にならない重大情勢だ。すでに日本帝国主義が軍事費を2倍化し中国侵略戦争の最前線に立つ合意が岸田・バイデン会談でなされ、琉球弧で自衛隊のミサイル基地建設が急速に進んでいる。米大統領選の直後にドイツの3党連立政権は崩壊した。欧州連合(EU)諸国は緊急の首脳会談を開催し、北大西洋条約機構(NATO)軍としての行動以外に、EU独自の軍隊を持つことが議論された。
米帝支配の大動揺・凶暴化で、全世界に激震が走っている。今こそ中国侵略戦争を内乱に転化する闘いをとどろかせよう。