キーン・ソード25 日本全土「戦場化」の大演習 中国侵略戦争突入を想定
週刊『前進』04頁(3369号03面01)(2024/11/04)
キーン・ソード25
日本全土「戦場化」の大演習
中国侵略戦争突入を想定
日米共同統合実動演習「キーン・ソード25」は、「台湾有事」を想定して、陸上自衛隊全部隊10万人を動員した陸自演習とも完全に一体化して強行された(3367号既報)。10月24日付琉球新報は「自衛隊や米軍の航空機・艦艇が、民間空港・港湾を含む県内各地に姿を現し、沖縄は『訓練列島』の様相を呈した」と、その実態を報じた。それは、米日帝国主義による中国侵略戦争準備の「現段階」が姿を現したものでもあった。「2027年開戦」に向かって進められる米日帝の中国侵略戦争策動を絶対に許してはならない。
全国の民間空港や港湾、施設を利用
10月23日から11月1日まで行われたキーン・ソード25には日米で計約4万5千人が参加、航空機約370機、艦艇約40隻、在日米軍だけでなく米インド太平洋軍も参加した。米軍と自衛隊の基地だけでなく、日本全土で12の民間空港と20の民間港湾が軍事利用された。自衛隊の演習場ではない山や森、施設を利用する「生地(せいち)訓練」も奄美群島(鹿児島県)を中心に広く行われた。沖縄では、那覇・新石垣・与那国の3カ所の民間空港と、中城湾・那覇・平良・石垣・久部良の5カ所の港湾が使用対象となった。直接の使用対象には含まれていないが、民間航空便による人員移動で宮古空港が使われ、防衛省が民間資金活用(PFI)事業契約を通じて借り上げた民間船舶で人員や装備を輸送することも大々的に行われた。10月29日には、軍事施設のない伊是名島で沖縄に駐屯する陸自第15旅団が無人機を飛ばし、米軍と共同の情報収集訓練が初めて実施された。
軍民の垣根もなく、軍事施設の有無にかかわらず、まさしく沖縄全体を「戦場」とする訓練だったのだ。
オスプレイ飛来を強行し事故が続発
許しがたい踏み込みは他にも行われた。15日には、横田基地(東京都)所属の米空軍のオスプレイ2機が、岩国基地(山口県)を経由して米軍嘉手納基地に飛来した。23年11月に屋久島沖で発生したオスプレイ墜落事故後、初の沖縄飛来で、県側の自粛要請を無視して強行したのだ。21日には陸自のオスプレイが沖縄本島では初めて那覇空港に飛来した。そして台湾に最も近い与那国島の陸自与那国駐屯地に22日、陸自のオスプレイが初飛来し、翌23日には米海兵隊のオスプレイが初飛来した。
キーン・ソード25ではこうして飛来したオスプレイが広く使われているが、オスプレイに構造的欠陥があることは有名だ。キーン・ソード25の最中だけでも、23日に海上自衛隊鹿屋航空基地(鹿児島県)に陸自のオスプレイ1機がエンジンの不具合で緊急着陸。27日には与那国島で、陸自のオスプレイが離陸しようとした際にバランスを崩して地面と接触する事故を起こした。1週間ほどの訓練の間に2機も事故を起こす欠陥機が南西諸島の上空を飛び回る。これが中国侵略戦争情勢下の沖縄の日常になろうとしているのだ。絶対に許せない。
事故が頻発しても米軍・自衛隊がオスプレイの運用にこだわるのは、陸路でつながっていない南西諸島を戦場とする場合、ヘリコプターと固定翼機の特性を併せ持つオスプレイの機動性が欠かせないからだ。それは米海兵隊の中国侵略戦争のための作戦「遠征前進基地作戦(EABO)」の要なのである。防衛省はキーン・ソード25において、沖縄本島を拠点に負傷者を「後方」へ送る一連の日米共同訓練を「目玉」と位置付け、オスプレイを多く動員している。実際には負傷者救護の訓練を通じて、オスプレイを南西諸島全域で利用できるようにすることが狙いなのだ。
また、米軍と自衛隊の連携強化と一体で、米軍による民間施設の軍事利用にも踏み込んできている。石垣島では、ウクライナ戦争で注目を集めた米軍の高機動ロケット砲システム「ハイマース」が、新石垣空港を利用して陸自石垣駐屯地に持ち込まれ、日米共同の対艦戦闘訓練が実施された。また23日、米太平洋海兵隊司令官と、在沖米軍トップでもある第3海兵遠征軍司令官が石垣島を訪れ、石垣駐屯地を視察した。米太平洋海兵隊司令官の先島地域訪問は初だ。
重要なことは、沖縄人民が怒りに燃えて立ち上がっていることだ。宮古島や石垣島の住民を先頭に、総選挙情勢下で既成政党が無視する中でも沖縄各地で果敢に抗議の闘争がたたきつけられた。改憲・戦争阻止!大行進沖縄も参加した19日の中城湾港前での闘争では、朝の自衛隊車両搬入を止めて訓練スケジュールを変更に追い込んだ。28日には全港湾沖縄地方本部が、那覇港新港と石垣港で抗議集会を行った。
「地獄絵図」構想し無人機配備進める
また、キーン・ソード25と並行して別の点でも重大な踏み込みが行われている。10月10日、米海兵隊が「自律型低視認性小型艇(ALPV)」を那覇軍港に持ち込んだことがわかった。来年8月まで「一時展開」するという。ALPVは甲板が平らで船体が海面にほとんど出ない無人艇で、「隠密輸送」を目的に開発されたものだ。海兵隊が開発した無人地対艦ミサイルシステム「NMESIS」に使われるミサイルの輸送ができるように設計されているが、米軍全体でも本格運用はされていない。展開はウクライナ戦争での無人機の活用を踏まえた、米軍の「レプリケーター構想」のためであることは間違いない。米インド太平洋軍司令官パパロはこの構想について、「無人機の大量展開によって台湾海峡を『地獄絵図』にする」と語った。米軍はすでに、嘉手納基地に「一時展開」としながらMQ9「リーパー(死神)」など無人機を配備している。また米政府は6月、台湾にも武装無人機を1千機以上売却すると決定した。「地獄絵図」をつくり出す準備が進んでいるのである。
一線を越えて本格化する米日帝の戦争策動を許さず、反戦闘争の爆発で中国侵略戦争を阻止しよう。