米軍・自衛隊が実動演習 延べ13万人動員過去最大 キーン・ソード25 沖縄・九州を戦場化
週刊『前進』04頁(3367号03面01)(2024/10/21)
米軍・自衛隊が実動演習
延べ13万人動員過去最大
キーン・ソード25
沖縄・九州を戦場化
総選挙では、中国侵略戦争への米日帝国主義の突進が争点化されず、ほとんどの政党が「国防」については一致し、排外主義・愛国主義を大宣伝している。この情勢と一体で、中国侵略戦争へ向けた日米共同統合大演習「キーン・ソード25」が10月23日~11月1日にかけて行われようとしている。
民間空港・港湾・公道使い
キーン・ソード25は、今年2月に初めて中国を名指しして行われた図上演習「キーン・エッジ24」をベースとした実動演習だ。日米による中国侵略戦争の「実動」を想定した演習にほかならない。自衛隊が約3万3千人、艦艇約30隻、航空機約250機が参加。米軍は在日米軍だけでなく、インド太平洋軍を構成する太平洋陸軍、太平洋艦隊、太平洋空軍、太平洋海兵隊、インド太平洋宇宙軍も含めて約1万2千人が参加し、艦艇約10隻、航空機約120機が展開する過去最大規模のものだ。さらにオーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、インド、イギリス、イタリア、スペイン、リトアニア、オランダ、ニュージーランド、フィリピン、韓国、北大西洋条約機構(NATO)からオブザーバーを招く。まさに中国侵略戦争・世界戦争における米帝側の陣営をそろえたような一大演習だ。
2022年に行われた前回のキーン・ソードでは、奄美大島(鹿児島県)の自衛隊基地で日米共同のミサイル訓練を行い、与那国島(沖縄県)では与那国空港を使って自衛隊の16式機動戦闘車を輸送、公道を初めて走行させるなど、中国侵略戦争による「南西諸島の戦場化」を明確に意識した演習として強行された。
今回のキーン・ソード25では、北海道から沖縄まで全国12カ所の民間空港と20カ所の港を使用する(図参照)。石垣島には米海兵隊の高機動ロケット砲システム「ハイマース」を初めて展開し、日米共同で対艦戦闘訓練を行う。
奄美群島では奄美大島と徳之島を中心に喜界島、沖永良部島の計4島で訓練を行う際、自衛隊の施設や演習場ではない山間部や海岸、畑、公園などを広く使用した「生地(せいち)訓練」が行われる。生地訓練は、日本では対馬など一部の場所以外ではできなかったが、自衛隊はこの10年ほどの間に奄美大島などで急速に可能にしてきた。そしてついに、自衛隊の枠すら超えて日米共同演習で広く生地訓練を行うことに踏み込んできたのだ。
キーン・ソード25は、「台湾有事」を想定した日米共同作戦の訓練と一体で、空港や港湾、公道の使用だけでなく山や森、日常生活の場すらも戦場の一部とする、まさしく「日本全土の戦場化」を見据えた演習として強行されようとしているのである。
10月14日に中国軍が台湾周辺で行った軍事演習が排外主義的に非難されているが、展開された軍用機は延べ125機とされ、数だけ見てもキーン・ソード25の3分の1にすぎない。動員された中国軍の空母「遼寧」も、1日あたりの航空機の運用数はせいぜい40機程度で、横須賀基地に常駐するニミッツ級空母(ジョージ・ワシントンやロナルド・レーガンなど)の160機には遠く及ばない。米日帝の側こそが「台湾有事」を起こさせようと中国を追いつめ、挑発していることはこれだけ見ても明らかだ。
中国侵略戦争へ「総稽古」
キーン・ソード25のもう一つの重大な点は、今年の陸上自衛隊演習と文字通り一体の演習であることだ。9月2日~11月下旬の長期にわたって行われている陸自演習の特色は、陸自が広報する通り、①「陸上自衛隊の全部隊(約10万人)を対象として取り組む実動演習」であること、②「全国規模で作戦準備段階から作戦段階までを一連の行動として演練」すること、そして③「機動展開後に日米共同統合実動演習(キーン・ソード25)に参加」することである。
実際、10月10日には奄美大島の名瀬港に北海道全域を担当する北部方面隊の部隊が民間船を借りて入港。22日までは陸自のみで訓練し、23日以降はキーン・ソード25に参加することが報道されている。
すでに陸自は沖縄県の第15旅団以外の全師団・旅団を「機動師団・旅団」に改編することを決定し、「有事」には全軍が南西諸島に集中する体制を固めてきた。陸自演習は実際に陸自全軍を動かし、そのうち約3万人がキーン・ソード25に参加して南西諸島で大規模演習を行うというもので、まさに中国侵略戦争突入時の動きを想定した許しがたい戦争訓練なのだ。
今夏に行われた日米共同演習「レゾリュート・ドラゴン24」は、主に九州・南西諸島において自衛隊約5700人、米軍約3200人を動員した、米海兵隊の「遠征前進基地作戦(EABO)」を主眼とした訓練だった。陸自演習とキーン・ソード25はそのような「局地的」演習ではなく、合わせて延べ13万人を動員する、中国侵略戦争を見据えた「総稽古」なのだ。
石破政権は野党の総屈服に助けられ、このような大演習を進めているのである。労働者階級人民の回答は11・3労働者集会への6千人結集だ。