書評 階級的労働運動とは何か? 続・動労千葉が歩んできた道 田中康宏著 『共産党宣言』の実践編として学ぶ

週刊『前進』04頁(3365号03面04)(2024/10/07)


書評
 階級的労働運動とは何か?
 続・動労千葉が歩んできた道 田中康宏著
 『共産党宣言』の実践編として学ぶ

定価/本体800円+税
発行・注文先/全国労働組合交流センター

 ある労働者が、「党学校」で初めてマルクスの文献を学習して「中野洋さん(動労千葉元委員長・故人)の言っていたことって、みんなマルクスが書いていることだったんだ!」と述べていました。動労千葉前委員長の田中康宏さんが著した本書には「続・動労千葉が歩んできた道」という副題がついており、中野さんの著書『新版 甦(よみがえ)る労働組合』(2008年刊)を、現情勢に引き付けてどう読むかが書かれています。
 これら両著作は『共産党宣言』(マニフェスト)の〈実践編〉と言えるのではないかと思いつつ読みました。あまたの学者が研究の対象にしてきたマルクスですが、ではマニフェストに基づいて具体的・実践的には、何をするのか?----学者では出せない答えが、動労千葉の闘いの中にあるということだと思います。冒頭の労働者の発言が、その象徴ではないでしょうか。
 今、社会変革を求めている人には、たとえ労働運動に身を置いていなくとも、本書をぜひ読んでほしいと思います。
 その理由のひとつは、日本の現代史を労働者階級の立場から見て描く「歴史観」について共有したいからです。「戦後史全体を、労働者と労働組合を(ブルジョア階級と労働者階級の)どちらの側が握るのかをめぐる『壮烈な攻防の歴史』として見る」(第3章)----これは、労働者を、歴史を動かす主体としてとらえているということにほかなりません。歴史が、自然現象や必然ではなく「攻防(闘い)」だとするなら、まさに自分たちが今、どう闘うかが問われているのだと、力が湧いてきます。
 もうひとつは、動労千葉という組合が、どういう「人間観」に基づいてつくられた労働組合なのかを認識してほしいからです。『新版 甦る労働組合』の発刊直後に、中野さんは、「(動労千葉の組合員は)カネなんかには換えられない、非常に貴重なものをみんな獲得した」「労働運動を闘うことをとおして初めて、資本主義の中でつくられた悪い傾向を克服して、仲間との本当の連帯や団結を獲得していく」と語っています(動労千葉結成30周年記念座談会、09年刊『動労千葉』29号所収)。国鉄分割・民営化反対のストライキを闘い、40人もの解雇者を出しながら、なぜ動労千葉は団結を守ることができたのか。その核心がここにあると思うのです。
 また、『新版 甦る労働組合』でたびたび出てきた「時代認識」という言葉について、本書では第2章から第4章まで、徹底的に深く掘り下げられています。第2章では、時代認識とは正しい情勢分析からおのずと方針が出るというような形式的なものではなく、リーダーの思想性、労働組合観などに合わせた認識しか持つことはできないと述べられています。国鉄分割・民営化攻撃に対して闘うことができなかった国労などとの対比が、階級的労働組合の本質論としての「時代認識」の問題として鮮やかに提示されました。
 『新版 甦る労働組合』と合わせて本書を読むことで、動労千葉の闘いを追体験してマルクス主義の実践を学び、歴史の岐路にあるこの時代に、闘いの道を切り拓(ひら)いていきましょう。ぜひ周りの人にも薦めてください。11・3労働者集会6千人結集の大きな力になるものと確信します。
(自治体労働者・大谷京子)

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