焦点 欧州議会選挙 崩れ落ちた帝国主義の戦後秩序
週刊『前進』04頁(3352号03面02)(2024/07/08)
焦点
欧州議会選挙
崩れ落ちた帝国主義の戦後秩序
6月6~9日に行われた欧州議会の総選挙で、フランスやドイツ、イタリア、オランダなど各国での「極右の躍進」が大きな注目を集めている。フランスでは、マリーヌ・ルペン率いる極右政党「国民連合(RN)」の得票率が31%に達し、マクロン大統領が率いる与党連合の2倍超に。「ドイツのための選択肢(AfD)」も旧東ドイツ5州でいずれも大差で得票率1位となり、全独で第2党となった。全欧州では、これまで議会の多数派を構成してきた中道右派の「欧州人民党(EPP)」が過半数を維持したものの、RNなどの極右党派が所属する「アイデンティティーと民主主義(ID)」が議席を49から58へと増やし、無所属を含めた極右勢力が過去最多の議席を得た。
大敗を喫したマクロンは「国民の信を問う」として下院を解散したが、6月30日の第1回投票でもRNが得票率で首位となった。
戦争推進する既成左派
これを受け、メディアは「人々の右傾化が進んでいる」「極右が普通の選択肢になった」などと報道しているが、これは極めて一面的な見方だ。今回の欧州議会選挙で示されたのは、欧州において「ナチス犯罪の反省」を虚偽の建前として作られた「中道右派と中道左派」の二大勢力を柱とする帝国主義の戦後秩序が完全に崩壊したということだ。その背景には、総がかりでウクライナへの軍事支援を行って戦争を泥沼化させるとともに「戦時経済に戻る」(マクロン)、「ドイツ軍を『戦争準備完了』の状態にする」(独国防相ピストリウス)などと主張して大軍拡を推進し、食料・エネルギー価格の高騰で自国の労働者人民の生活をも破壊してきた欧州帝国主義への人民の激しい怒りがある。象徴的なのは、2019年の前回選挙で20代の支持を集めて躍進した環境会派「欧州緑の党・自由連盟」が18議席も失ったことだ。ウクライナへの重火器供与を強固に主張したドイツの「緑の党」に象徴される既成左派は、帝国主義戦争を全力で推進して労働者階級から見放された。こうして「ロシアへの経済制裁は失敗だ」として「自国第一」主義を唱える極右に票が流れたのだ。
今や、欧州連合(EU)が掲げてきた「民主主義」や「人権」、「多様性」がことごとく偽りであったことが誰の目にも明らかになった。前回の選挙を受けて19年に始められた脱炭素化政策「欧州グリーンディール」のもとでEU内部の格差も顕在化し、帝国主義の世界支配が生み出した「移民・難民問題」を解決することもできない。EUでは5月、難民審査を厳格化して申請者の第三国移送も可能にする制度が成立した。イギリスではスナク政権がルワンダへの難民申請者送還を計画し、7月にも実行に移そうとしてきた。このような欧州帝の姿勢こそが極右を生み出し、支えてきたのだ。