台湾海峡「地獄絵図に」 米軍司令官が対中新戦略公表

週刊『前進』04頁(3351号03面04)(2024/07/01)


台湾海峡「地獄絵図に」
 米軍司令官が対中新戦略公表


 5月に新たに米インド太平洋軍司令官に就任したサミュエル・パパロ海軍大将は、5月31日~6月2日にシンガポールで行われたアジア安全保障会議に出席した際、米紙ワシントン・ポストのインタビューに答え、「地獄絵図(ヘルスケープ)」戦略と称する新たな対中国軍事戦略を明らかにした。「台湾有事」に際し、台湾海峡を渡ろうとする中国軍に対して、米軍の数千もの無人潜水艦、無人水上艦、空中ドローンを使って壊滅的打撃を与え「地獄絵図」をつくり出すというものだ。
 パパロによると、この作戦が成功すれば1カ月間は米軍、台湾軍および同盟国軍が「他のあらゆることのための時間を稼ぐことができる」という(6月10日付ワシントン・ポスト)。この「地獄絵図」戦略の準備はすでに始まっており、今年3月、「国防総省は、まさにこの任務のために無人水上艦と空中ドローンの大群を建造する『レプリケーター』と呼ばれるプログラムに10億㌦支出すると発表した」(同)。ヒックス米国防副長官がこの「レプリケーター」構想を昨年8月に公表した際には、中国軍を物量で圧倒するために小型・精密かつ安価な自律型無人兵器の大量生産システムを構築し、速やかにその実戦配備を進める考えを示した。
 そして重要なことは、この数千もの自律型無人兵器を投じた「地獄絵図」戦略は、米帝の中国侵略戦争の「最初の戦闘」にすぎないということだ。この戦略の主な目的はパパロ自身が語るように時間稼ぎであり、その間に米本土などから大量の兵器や兵站(へいたん)物資を輸送し、そこからさらに本格的な中国への攻撃作戦を展開することを想定しているのだ。そうなれば「地獄絵図」が台湾海峡洋上にとどまらず、南西諸島をはじめとした日本全土、朝鮮半島やフィリピンなど周辺国、そして中国本土にまで広がることは不可避だ。
 パパロはインタビューの中で「この地域〔アジア〕には二つの選択肢がある。〔中国に〕服従し自由の一部を放棄するか、それとも歯まで武装するかだ」と語り、米軍の進める対中国の戦争準備の一切を受け入れることをアジア諸国に迫った。このように、相手方のみを一方的に〈野心に燃える侵略者〉と決めつけ、これに対して自分たちの側があたかも〈自由と平和の守り手〉であるかのように押し出すことで、自らの侵略戦争を正当化するのが帝国主義の常套(じょうとう)手段なのだ。
 だが、今われわれの目の前で現実に進行しているのは、「米帝の大没落と世界支配の危機からの巻き返しをかけた中国スターリン主義体制転覆のための侵略戦争であり、中国、台湾、アジア全体を再支配し再分割していくための帝国主義的侵略戦争」(革共同9回大会第2報告、本紙3336号)にほかならない。
 この戦争を阻む鍵は日本の労働者階級こそが握っている。反戦の実力闘争、自国政府=帝国主義打倒の内乱的決起を拡大しよう。
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