世界戦争へ突き進むG7 プーリアサミット 中国に新たな制裁措置 ロシア資産使いウクライナ支援

週刊『前進』04頁(3350号03面01)(2024/06/24)


世界戦争へ突き進むG7
 プーリアサミット
 中国に新たな制裁措置
 ロシア資産使いウクライナ支援

(写真 「戦争反対、G7反対」の横断幕を掲げてデモ【6月15日 イタリア・ファサーノ】)

 6月13~15日、イタリアのプーリアで開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)は、泥沼化するウクライナ戦争をさらに絶望的に継続し、中東・パレスチナ人民の民族解放の闘いに敵対し、これらと一体で中国への圧力と経済制裁をますます強め、中国侵略戦争―世界戦争へ突き進むことを確認する帝国主義強盗どもの戦争会議となった。ロシアの凍結資産を活用した新たなウクライナ支援基金の創設のほか、ロシアへの軍事転用可能物資の提供が「疑われる」中国の企業・団体に新たな制裁を科すことが合意されるなど、対ロシアのみならず対中国でのG7の「結束」と新たな踏み込みを確認した。第3次世界大戦に向かって歴史の歯車を急回転させるG7=米欧日帝国主義に対し、今こそ巨大な反戦闘争を爆発させなければならない。

先端分野で対中追加関税

 今回のプーリアサミットでは、アメリカ帝国主義を筆頭とするG7による、対ロシア=対中国の歴史的に踏み込んだ新たな措置が合意された。
 その第一は、ウクライナ戦争開戦以来、米欧日などが凍結しているロシアの資産を活用した新たな「ウクライナ支援」に合意したことだ。ロシアの中央銀行などが各国に持つ資産のうち米欧日が凍結した資産は総額3千億㌦(約47兆円)ほどで、約2300億㌦(約36兆円)が欧州連合(EU)圏内にあり、その運用利益は年間30〜50億㌦(約4700〜7800億円)と見積もられている。
 米バイデンは、国家財政を投じたウクライナ支援に対して連邦議会内外で反発が強まる中、苦肉の策としてロシア資産の運用利益をウクライナ支援にあてることを主張してきた。だが戦争を理由に凍結した資産をもう一方の戦争当事国の支援に「活用」するなど前例がなく、国際法違反の可能性まで指摘されたため、今回のサミットではまず米英などの貸し付けで基金をつくり、そこからウクライナに無償贈与し、ロシアの凍結資産の運用利益を基金に回して米英などに返済するという「抜け道」をつくることで合意に至った。
 だが、どういう形にせよこれがロシアへの「戦争賠償の取り立て」であることに変わりはない。しかもこの方式では返済期間が10年以上に及ぶことが想定されており、仮にその前に「停戦」が合意されてロシア資産の凍結が解除されれば、基金に融資した国には返済ができなくなる。要するにG7は、向こう10年以上ウクライナ戦争を「停戦」させるつもりはなく、どれほどの被害が出ようとも、ウクライナを前面に立たせて戦争を継続しようとしているのだ。サミット開幕に先立つ13日にバイデンとゼレンスキーが10年期間の2国間安保協定に署名したことも、その証左である。
 第二には、「対ロシア」を名目として中国に対する新たな制裁措置を確認した。軍事転用可能な技術や部品のロシアとの取引に関与したことが「疑われる」場合には、対象国の金融機関をG7の金融ネットワークから締め出すというものだ。首脳宣言には、「中国によるロシアの防衛産業基盤への継続的な支援がウクライナでの違法な戦争の継続を可能にしている」などと、中国をロシアの「共犯者」とみなす文言を多数盛り込み、「中国を含む第三国の個人・団体に対して我々の金融システムへのアクセスを制限する措置をとる」と名指しで明記した。
 第三には、「中国による多額の補助金・税優遇を通じた電気自動車(EV)などの過剰生産」をやり玉に挙げ、これに対してG7が連携して輸入関税引き上げなどの対抗措置をとることを確認した。
 サミットに先立つ12日には、EUの執行機関である欧州委員会が中国製EVに7月から最大38・1%の追加関税を課すと決定。米バイデン政権も、8月から中国製EVの関税を現行の25%から100%へと4倍に引き上げ、半導体、太陽光パネル、鉄鋼、アルミニウムなどの関税も上げる案を公表している。
 先端重要分野の競争力・製造能力中国に追い上げられた米欧日は、中国を経済制裁で締め上げようと必死になっているが、すでに大国化した中国を制裁だけで抑え込むことは不可能である。米帝は中国侵略戦争の本格的突入への衝動をますます強めるほかないのだ。

「平和サミット」は大破産

 岸田は今回のサミットで「中国への懸念」を最も声高に主張し、「インド太平洋」についての討議を主要議題の一つにあげるよう前もって強く働きかけ、自らの演説で「インド太平洋と欧州の安全保障は不可分一体」と強調するなど、対中国の旗振り役となった。
 米帝を筆頭とするG7のこうした策動の背景には、米帝自身の大没落とそのもとでの帝国主義の世界支配の崩壊的危機、そしてそれを中国侵略戦争・世界戦争で乗り切ろうとする激しい衝動がある。
 G7サミットに続き15、16日にスイスで開かれた「世界平和サミット」は、帝国主義の危機を一層浮き彫りにさせた。この会議は「ウクライナが提唱する和平案を話し合う」という名目で呼びかけられたが、もとよりロシアとの「停戦」や「和平」を目的としたものではなく、いわゆるグローバルサウスと呼ばれるアジア、アフリカ、中東、中南米などの国々を米欧日とウクライナ側に取り込み、ロシア・中国を国際的孤立に追い込む策動の一環として準備されたものだ。
 だが結果は、160カ国を招待して100カ国以上の参加をめざしたにもかかわらず、参加は92カ国と8機関(うち4機関はEU関連)、共同声明への賛成は計78カ国・機関にとどまった。特にインド、南アフリカ、インドネシア、サウジアラビア、メキシコ、タイ、アラブ首長国連邦(UAE)などが「ロシアが参加しなければ意味がない」として支持を見送ったことで、逆にグローバルサウスに対する米欧日帝国主義の支配力・影響力の衰退を際立たせることになった。
 米帝はこうした状況からの巻き返しを中国侵略戦争―世界戦争にかける以外になくなっている。この世界戦争を絶対に阻む国際反戦闘争を爆発させ、今こそ反帝・反スターリン主義世界革命の突破口を開こう。
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