焦点 教職調整額の増額 「過労死するまで働け」と強要

週刊『前進』04頁(3348号03面03)(2024/06/10)


焦点
 教職調整額の増額
 「過労死するまで働け」と強要


 長時間労働が深刻化し公立学校教員のなり手が不足する中、文部科学相の諮問機関・中央教育審議会が5月13日、教員確保策の提言をまとめた。提言は自民党案を踏襲し、残業代を支払わない代わりに支給する「教職調整額」を、現行の「基本給の4%」から「10%以上」に引き上げることが柱だ。長時間労働の抜本的「解決」策は示されなかった。文科省は来年の通常国会で教員給与特別措置法(給特法)改悪案を提出する。
 基本給が月30万円の場合、現行より1万8千円の増額となる。文科省はわずかな増額と引き換えに、「教師は我が国の未来を切り開く人材を育成する崇高な使命を自覚」(提言)し、〝文句を言わずに過労死するまで働け〟と言っているのだ。断じて許せない。さらに「主幹教諭」と「教諭」の間に若手をサポートする新ポストを創設し、賃金を優遇するという。新たな職階で職場を分断し、一層の管理強化をもたらすものだ。

現場の激しい怒り噴出

 教育労働者を愚弄(ぐろう)する提言に、現場から「0点だ。公教育が崩壊する」「給料を増やせと言っているのではない。長時間労働をなくせと言っているのだ」と、激しい怒りが噴出している。
 文科省は2019年に時間外勤務の上限を月45時間とする指針を出したが、22年の調査では上限を上回る勤務は小学校で64・5%、中学校で77・1%に上る。精神疾患による休職は6千人を超え過去最多。正規職を増やさず非正規職化が進められ、代替教員も集まらず欠員も常態化している。それが長時間・過重労働を加速させる。
 上限指針ができて3年、そして今提言ではっきりしたことは、政府・文科省は自ら生み出した学校崩壊の現実を食い止めることなどできないということだ。
 財務省は提言による公費増額に「反論」している。問題が財源確保をめぐる文科省と財務省の対立のように描かれているが、本質は、新自由主義が破綻し日本帝国主義が中国侵略戦争―世界戦争に突進していることにある。
 国鉄分割・民営化から始まる新自由主義攻撃は社会を総崩壊させた。国の借金は敗戦時を上回る1286兆円。〝限界国家〟化した日帝にとって戦争が唯一の延命策となっている。安保3文書改定のとおり、軍事費43兆円の戦費を賄うために、医療・福祉・教育などが崩壊し労働者が過労死しても構わないというのが岸田政権だ。岸田は全社会を戦時体制に突入させ産業報国会化を進めている。文科省によるデジタル化をテコにした「働き方改革」も、国家・資本のために「効率よく」働かせる生産性向上運動にほかならない。

今こそストで闘おう!

 今必要なのは、岸田政権を全労働者の団結で打倒し、過労死と戦争の時代を根底から覆す闘いだ。
 政府・文科省は提言で教職調整額を定めた給特法を固持した。1971年制定の給特法は、当時、超勤手当訴訟に連勝しベトナム反戦と春闘ストライキを闘う日教組の破壊を狙い、「教師=専門職」論で労働者性を否定し、他産別の労働者と分断する攻撃だった。政府・文科省は、教職員が労働者として闘うことを恐れており、特に戦時下の今日、「教職の特殊性」(提言)を強調し戦争を担う「聖職者」に位置づけているのだ。
 だが、今提言は現場の怒りに火を付けた。職場で倒れることも、戦争で殺し合わされることも拒否し、ストライキで闘う時だ。
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