バリアント・シールド 米軍大演習に自衛隊初参加 対中国想定、国内基地も使用
週刊『前進』04頁(3348号03面02)(2024/06/10)
バリアント・シールド
米軍大演習に自衛隊初参加
対中国想定、国内基地も使用
6月7日、米軍が主催する2年に1度の大規模演習「バリアント・シールド(勇敢な盾)」が始まった。同演習はこれまでハワイやグアムの米軍基地を中心に北マリアナ諸島・パラオ周辺を演習場としてきたが、今回は日本国内の米軍基地・自衛隊基地を初めて演習の一部に利用する(地図)。陸海空自衛隊から人員4千人、車両約130台、8隻の艦艇、航空機約60機が初めて参加し、さらに詳細は不明だが「複数の同志国」も参加して、初の多国間演習として行われている。
米軍はバリアント・シールドを「米海軍、陸軍、空軍、海兵隊の統合を促進する一連の軍事演習」と位置づけ、米軍の最大戦力・空母打撃群をはじめ毎回1万人以上が参加してきた。
これに自衛隊が参加するのは、4月日米首脳会談を画期として急ピッチで進められている「米軍と自衛隊の指揮統制の連携強化」の一環であることは明らかだ。中国侵略戦争をリアルに見据え、遠征前進基地作戦(EABO)などのような台湾~南西諸島での「前線」における戦闘だけでなく、「後方」を含め総力を動員する戦争態勢の構築が進められているのである。
北海道大演習場では横須賀基地(神奈川県)を出発した米軍部隊によるパラシュート降下訓練、奄美大島(鹿児島県)周辺では米軍・自衛隊共同の対艦戦闘訓練が行われる。だが今回、特に重大なのは、「在日米軍基地が(中国軍の)攻撃を受けて使えない」ことを想定して、日米の戦闘機が海自八戸航空基地(青森県)や空自松島基地(宮城県)で共同展開するとともに、硫黄島航空基地では米軍と海自の共同で滑走路の復旧訓練が行われることだ。これは米空軍の「迅速な戦力展開(ACE)」構想を背景としており、この訓練の先には民間空港の軍事利用が狙われている。
レイモンド米商務長官は5月初めの米下院歳出委員会で「中国が台湾に侵攻して半導体受託生産大手『台湾積体電路製造(TSMC)』を掌握すれば、米経済は壊滅的になる」とし、その際には「24時間以内に中国の軍艦と基地、千カ所を攻撃して破壊する」と発言。台湾をアメリカ帝国主義の勢力圏として確保するために、中国を徹底的に破壊する侵略戦争も辞さないことを公言したのだ。沖縄をはじめ日本全土をその出撃拠点として戦場化するための演習を、絶対に許すことはできない。